憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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有栖と御園の話(LINE形式)

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『こんにちは、有栖さん』
『この間お世話になった、遊紗の親友です』
『遊紗から連絡先を教えてもらったので、連絡してみました』
『厚かましくてすみません』


『あ、はい』
『何の御用ですか』


『いえ、ファンですから』
『連絡したくなってしまって』


『そういうのもういいです』
『どうせファンじゃないんでしょうし』
『無理に演技しなくていいですよ』


『ああ、さすがにバレましたか』


『バレバレです』
『なんなら敬語もいりません』
『遊紗もいないことですし』
『で、何か用ですか?』


『じゃあ遠慮なく』
『遊紗と付き合うことになったらしいな』


『ああ』
『それがどうかしたか?』


『オレは遊紗のことをずっと好きだった』
『相手が男だったら譲らない気だった』
『だけど、遊紗はアンタのことを少なからず気に入ってた』
『だから譲ったわけだが』
『遊紗のことを諦めたわけじゃない』
『それを忘れるなよって言いに来た』


『ふーん』
『あの子の気持ちが揺らいだら、俺から奪おうってことか?』


『違う』
『責任もって幸せにしろってことだ』
『泣かせたらぶん殴る』


『物騒だな』
『言われなくてもそうするつもりだ』


『ふん』
『どうだか』
『生まれつき男好きだった訳でもないのにちゃんと出来るか心配だな』


『ご心配どうも』
『そういうお前は生まれつきか?』


『そうだ』
『悩みながら生きてきて、やっと見つけた相手だったんだ』
『ぽっと出に取られたがな』


『そのぽっと出に取られたのはお前だろ』
『俺より先に告白すれば良かっただけの話だ』
『勝手に俺のせいにするな』


『ああそうだな』
『遊紗と親友じゃないアンタにはわかんねえだろうな』
『告白して関係崩れたらどうなるか、危惧しなくていいもんな』


『そうだな』
『俺は』
『お前が俺の知らないあの子の過去を知っていることに腹が立つが』


『は?』
[みそのがメッセージの送信を取り消しました]
[みそのがメッセージの送信を取り消しました]
『贅沢な奴だな』


『お前』
『取り消せば何を言ってもいいわけじゃねえんだぞ』


『予測変換を間違えて送っただけだ』


『随分物騒な予測変換だな』


『アンタと違って育ちが悪いんでね』


『そうか』
『そんなに気に触ったか?』


『アンタ、』
『性格に難アリだとか、天然無神経だとか言われたことはないか?』


『あまり記憶にはない』
『俺の性格が良くないのは俺が1番知っているが、さっきはそんな意図はなかった』
『純粋に思ったことを言っただけだ』


『あ、そう』
『オレが説明するのは癪だが、』
『つまりはオレの好きな奴と付き合ったくせにオレの親友としての立場まで羨むなって話だ』


『なるほど』
『確かに、俺がお前の立場だったらムカつくだろうな』
『悪かった』
『一応謝っておく』


『ふん』
『遊紗がアンタと付き合ったらどういうことをしたらいいかとかチョコはどんなのがいいかとか、相談しに来てくれたことは知らないんだろ?』
『別に付き合ってなくったって信頼されてるからな、』
『謝罪してくれなくてもいいんだぜ』


『あ?』
[Aがメッセージの送信を取り消しました]
[Aがメッセージの送信を取り消しました]
[Aがメッセージの送信を取り消しました]
『せでかく謝罪したのになんだよ』
『遊紗もなんでよ(ちによってお前に』


『おい』
『打ち間違い多すぎだろアンタ』
『3回書き直したのにまだ間違うか』


『別に』
『動揺しただけだ』


『はいはい』
『オレのとこに聞きに来たのは親友だからで深い意味はねえよ』
『癪だがな』
『遊紗は鈍感だからオレの気持ちにこれっぽっちも気付いちゃいねえし、アンタのためにオレに聞きに来ることがアンタの嫉妬を煽ることも分かっちゃいねえ』
『あいつはそういうやつだ』
『それが分かっていて、それでもアンタは本当にあいつを愛せるか?』


『あの子がそういう子だということはちゃんと分かっている』
『その上で好きになった』
『だから愛せる』


『ああそう』
『遊紗の両親はとっくに亡くなっていて、今まで辛い思いをしてきたことも知っているか?』


『ああ、知っている』
『学費も服代も払ってあげているし、苦労をかけないように努力している』


『そうか』
『認めたくはないが、アンタの方がオレより色々優れているのは事実だ』
『だからアンタが遊紗のことを大事にしてくれる限り、オレはなるべく邪魔はしない』
『が、もし何かあったらすぐ引き離すからな』
『肝に銘じておけ』


『言われなくてもそのつもりだ』
『文句があれば何時でも連絡してこい』
『できる限り答えてやる』


『アンタもな』

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