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ショピング Ⅱ(有栖視点)
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遊紗の服を黒から脱却させるということで、俺はパステルカラーの服を探していた。けばけばしい色は似合わないというのもあるが、今からだと早めに春物を買ってしまってもいいかと思ったのだ。
そんなわけで、とりあえずトップスから探してみる。薄い水色か薄緑のものをメインに、白も視野に入れて吟味する。
薄い生地のシャツが良いだろうか。まだしばらく肌寒いし、タートルネックのセーターでもいいかもしれない。
結局手に取ったのは、いつか彼が見せてくれた蛾に似た薄緑色の春物シャツと、白いタートルネックセーター、青系のグラデーションがかかったTシャツ。今年流行りのコーデュロイ生地のシャツもいくつか選んだ。試着してもらって絞ればいいので多めに選ぶ。
続いてボトムスだ。パステルに合わせるので伸縮性のある生地の白いズボンを1本選ぶ。ボトムスは別色がいくつかあれば色んなものに合わせられるし、この白1本か、遊紗が気に入ったものがあればプラス1本くらいで良いだろう。多様性の時代だし、袴みたいなズボンスカートやガウチョパンツなどを着せてみてもいいのだが、そういうのは俺が勧めるものでもないだろう。着たい人が着たいものを着ればいいのだから。
今の服選びに関しては頼まれたことだから俺が決めているが、遊紗が着たくなければ無理矢理買ったりしないつもりだ。
選んだ服を遊紗に渡して試着をしてもらう。服というのは、見た目が気に入っても着心地が良くないとか、体の形に合わないといったことがよくある。買ってから気付いても遅いので、ここでちゃんと見極めておかなければならない。
遊紗の試着を待っている間、俺は他の服を見てみることにした。
ふと目に留まったのは、他とは少し毛色の違う、上品な服。シンプルな黒いシャツなのだが、袖がフリルのようになっている。貴族が着てそうな感じだ。着る人を選ぶだろうが、遊紗が着たらどうなるか非常に気になる。
遊紗は黒髪に黒目だから、確かに黒が良く似合う。黒い服でもちょっと飾り気のある服なら印象も変わるのではないだろうか。
遊紗が1枚目のシャツを着て見せてくれた。薄緑が良く似合うし、服が明るい色なので、自然と顔も明るく見える。見た目はバッチリだ。着心地も悪くないとのことなので、これは購入決定。他のも着てもらう。
その間に、俺はまたさっきの服の辺りを物色していた。ここにあるのはゴシック調のもののようだ。黒をベースに、レースやらフリルやらが使われた服が置かれている。女性も着られるようだが、一応男性向けなのでデザインはシンプルだ。肩のあたりが編み込みになっている服が遊紗に似合いそうだったので、さっきの袖がヒラヒラしたやつと一緒に着てもらうことにした。遊紗の好みとは違うかもしれないが、単純に俺が見たい。
先に渡した服たちはどれも似合ったが、いくつか本人の好みじゃなかったり着心地があんまり良くなかったりしたようなので、それを売り場に返して、買う分は5着くらいになった。ボトムスは白のズボンと茶色の7分丈ズボンの2本。
それらをカゴに入れて、俺の我が儘のために2着着てもらう。そしてまた着てもらっている間に遊紗が選んだ5着に似合うアウターを2着ほど選んでおいた。
「有栖、着たけど。どう?」
シャっとカーテンを開けた遊紗を見て、俺は思わず顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
あまりに似合いすぎる。色的には悪魔に近いが、まるで天使のようだった。
「やっぱ似合ってない?」
突然しゃがみこんだ俺に戸惑いながら、そんなことを言う遊紗。
「…………とても似合っている。お前が嫌じゃなければ買って着て欲しいくらいだ」
「そう、良かった。…………着心地は悪くないし、デザインも嫌いじゃないよ。あんまり着ないタイプだからちょっと落ち着かないけど」
「そうか」
もう1着の方もびっくりするくらい似合って、俺の心臓の辺りがキュッとなる感覚を覚えた。
なんだろう、このゲーム風に言うとHPが削られていく感じは。何かがドカンとダイレクトに心に来る。
可愛いという感情に近い気がする。
結局その2着も買って、アウターの着心地も問題なかったようなのでそれも買って、合計11着を買うことになった。
それなりの金額にはなったが、高いものはいいものなのでその分長く着られる。
服屋を出た後はフードコートで昼食を食べ、珍しい店を見つけては中に入ってみるということを繰り返した。冴木用にお土産もいくつか買って、帰路に着く。
遊紗からは服代を払うと何度も言われたが、それは許可しなかった。元々俺が彼の服を買うつもりだったしな。
――――――――――――✝︎
(端書き)
作者はファッションに詳しくないので、コーデュロイ生地の名前が分からず「なんか流行りの生地」でGoogle検索しました。出てきてくれて助かりました。
ちなみに「なんかザラザラした生地」と「たてじまの生地」では出てきませんでした。
そんなわけで、とりあえずトップスから探してみる。薄い水色か薄緑のものをメインに、白も視野に入れて吟味する。
薄い生地のシャツが良いだろうか。まだしばらく肌寒いし、タートルネックのセーターでもいいかもしれない。
結局手に取ったのは、いつか彼が見せてくれた蛾に似た薄緑色の春物シャツと、白いタートルネックセーター、青系のグラデーションがかかったTシャツ。今年流行りのコーデュロイ生地のシャツもいくつか選んだ。試着してもらって絞ればいいので多めに選ぶ。
続いてボトムスだ。パステルに合わせるので伸縮性のある生地の白いズボンを1本選ぶ。ボトムスは別色がいくつかあれば色んなものに合わせられるし、この白1本か、遊紗が気に入ったものがあればプラス1本くらいで良いだろう。多様性の時代だし、袴みたいなズボンスカートやガウチョパンツなどを着せてみてもいいのだが、そういうのは俺が勧めるものでもないだろう。着たい人が着たいものを着ればいいのだから。
今の服選びに関しては頼まれたことだから俺が決めているが、遊紗が着たくなければ無理矢理買ったりしないつもりだ。
選んだ服を遊紗に渡して試着をしてもらう。服というのは、見た目が気に入っても着心地が良くないとか、体の形に合わないといったことがよくある。買ってから気付いても遅いので、ここでちゃんと見極めておかなければならない。
遊紗の試着を待っている間、俺は他の服を見てみることにした。
ふと目に留まったのは、他とは少し毛色の違う、上品な服。シンプルな黒いシャツなのだが、袖がフリルのようになっている。貴族が着てそうな感じだ。着る人を選ぶだろうが、遊紗が着たらどうなるか非常に気になる。
遊紗は黒髪に黒目だから、確かに黒が良く似合う。黒い服でもちょっと飾り気のある服なら印象も変わるのではないだろうか。
遊紗が1枚目のシャツを着て見せてくれた。薄緑が良く似合うし、服が明るい色なので、自然と顔も明るく見える。見た目はバッチリだ。着心地も悪くないとのことなので、これは購入決定。他のも着てもらう。
その間に、俺はまたさっきの服の辺りを物色していた。ここにあるのはゴシック調のもののようだ。黒をベースに、レースやらフリルやらが使われた服が置かれている。女性も着られるようだが、一応男性向けなのでデザインはシンプルだ。肩のあたりが編み込みになっている服が遊紗に似合いそうだったので、さっきの袖がヒラヒラしたやつと一緒に着てもらうことにした。遊紗の好みとは違うかもしれないが、単純に俺が見たい。
先に渡した服たちはどれも似合ったが、いくつか本人の好みじゃなかったり着心地があんまり良くなかったりしたようなので、それを売り場に返して、買う分は5着くらいになった。ボトムスは白のズボンと茶色の7分丈ズボンの2本。
それらをカゴに入れて、俺の我が儘のために2着着てもらう。そしてまた着てもらっている間に遊紗が選んだ5着に似合うアウターを2着ほど選んでおいた。
「有栖、着たけど。どう?」
シャっとカーテンを開けた遊紗を見て、俺は思わず顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
あまりに似合いすぎる。色的には悪魔に近いが、まるで天使のようだった。
「やっぱ似合ってない?」
突然しゃがみこんだ俺に戸惑いながら、そんなことを言う遊紗。
「…………とても似合っている。お前が嫌じゃなければ買って着て欲しいくらいだ」
「そう、良かった。…………着心地は悪くないし、デザインも嫌いじゃないよ。あんまり着ないタイプだからちょっと落ち着かないけど」
「そうか」
もう1着の方もびっくりするくらい似合って、俺の心臓の辺りがキュッとなる感覚を覚えた。
なんだろう、このゲーム風に言うとHPが削られていく感じは。何かがドカンとダイレクトに心に来る。
可愛いという感情に近い気がする。
結局その2着も買って、アウターの着心地も問題なかったようなのでそれも買って、合計11着を買うことになった。
それなりの金額にはなったが、高いものはいいものなのでその分長く着られる。
服屋を出た後はフードコートで昼食を食べ、珍しい店を見つけては中に入ってみるということを繰り返した。冴木用にお土産もいくつか買って、帰路に着く。
遊紗からは服代を払うと何度も言われたが、それは許可しなかった。元々俺が彼の服を買うつもりだったしな。
――――――――――――✝︎
(端書き)
作者はファッションに詳しくないので、コーデュロイ生地の名前が分からず「なんか流行りの生地」でGoogle検索しました。出てきてくれて助かりました。
ちなみに「なんかザラザラした生地」と「たてじまの生地」では出てきませんでした。
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