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第10話 キャンプ生活へ

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 こうしてせっかく直した城館を去ることになった俺だ。レンジャーたちの死体を城館の裏に埋めて、さっさと村を立ち去ることになる。そうしないと、次の部隊が送り込まれてくるかもしれないからだ。
 夜明けとともにピーターに開けてもらった穴に死体を放り込み、俺はせっせと土をかけた。
 あと何度、こんなことがあるのだろう。
 その度に俺は国王に仕える軍の連中を殺し続けるのだろうか。
 色々と不安になってくる。
「荷物、まとまったよ」
「こっちもオッケーよ」
 と、そこに出立の準備を終えたアンドレとマリナがやって来た。
 外での生活に慣れている二人に俺の分の荷物の準備も託していたから、呼びに来てくれたのだ。
「おう。村のみんなに挨拶はしたのか」
 俺が訊くと
「他の村のみんなも逃げるからいいのよ。国王軍が、それも精鋭のレンジャー部隊がここまで来たんだもの。安心できないでしょ」
 マリナは馬鹿ねと肩を竦めた。
「ま、マジで」
「マジよ。みんな国の目を逃れて生きている連中だもの。まあ、ここは快適だったけど、もともと十年以上定住している人もいないし、解散! って感じ」
「はあ」
 逞しいな、異能力者。俺は十年以上の定住者がいないという事実にびっくりしてしまう。
「王子様も自分を殺そうとした奴らを丁寧に葬っている場合じゃないよ」
 アンドレは適当でいいんだよと、半分以上埋もれた死体を見て言う。
「まあ、うん。そうだけど」
 俺が死んでいれば、こんな任務を受けることもなく、こんな場所で無駄死にすることもなかった連中だ。出来ることはしてやりたいと思ってしまう。
「優しすぎだよ。これからドンパチやるのに」
「いや、ドンパチはしないだろう」
「ふうん」
 俺は逃げるだけだよという態度だが、アンドレは何を言っているのという感じで見てくる。横にいるマリナも、大丈夫かという目で見てくるが、廃嫡されて居場所のない俺は逃げる以外にすることはない。
「さあ、行こう。ともかく山の中に逃げて落ち着ける場所を探そう」
 シャルルに対して反撃するべきじゃないか。そんな二人の視線から逃れるように、俺は先にその場を離れたのだった。



「今日はこの辺でいいんじゃないか」
「そうね。天気も安定してるし、川原でも大丈夫じゃない」
「お前ら、慣れているね」
 半日後、一先ず村から離れてキャンプ地を定めた頃、俺はみんなの外での生活の慣れっぷりに驚かされる連続だった。
 流浪の民として生きているとは言っていたが、ついさっきまで定住していたのだ。それがすぐにキャンプ地を見つけ、テントを張る姿に感心させられてしまう。ついでにコンパクトにまとまっていたリュックから、色んなものが出てくるのにも驚く。すぐに焚き火が出来て、あっという間に泊まる準備が完成していた。
「そういうところは王子様だよねえ。ほら、これに水汲んで」
 アンドレも騎士の訓練で野営をしたことがあるそうで、慣れていた。テキパキと俺の分まで用意してくれつつ、折りたたみ式のバケツを俺に渡し、水を汲めと指示を出してくる。
「凄えなあ」
「感心してる場合じゃねえぞ。水を汲んだら釣りだ。飯はその場で調達。保存食は持ってきているが、次いつ村に寄れるか解らないからな。今日みたいに晴れている日はしっかり飯を確保」
「はい」
 シモンの言葉に素直に頷き、キャンプ生活ってこんな感じなのかあと、新たな生活に沈んだ気持ちもなくなっていたのだった。
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