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第45話 奏汰専用実験室を作ろう

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 奏汰が要求したのはドラフトという大きな機械だ。これはガスが発生する実験で使用する大型の機械で、当然ながらお値段高め。設置場所も必要だし、排気できるようにしなければいけないしと、付随して様々なところでお金の掛かる機械である。
「ふん。買ってやると言ったんだ。こうなったら実験室を作ってやる」
 その値段を知った時はさすがに目を剥いたルシファーだったが、そこはお貴族様。お金に関しては問題ないし、ちゃんとやるというのならばと、総てを整えてやると言い出した。
「いやあ、すげえな」
「奏汰。お前は十分に悪魔の素養があるな」
 こうして急ピッチに作られる実験室を前に、サタンがにやにやと笑ってそう指摘してくる。
「誰が悪魔だよ。これってまあ、慰謝料?」
 奏汰もちょっとは悪いかなあと思っているが、サタンから直々に悪魔認定されたくない。というわけで、慰謝料だと言い張ってみる。
「慰謝料はおかしいだろう。あれだな、結納金だな」
 しかし、サタンはにやにや笑ってそう言い換えてくれる。くう、なんで結納金だ。
「だってお前、結婚する覚悟が出来たから、ルシファーに実験室を用意しろって言ったんだろ?」
 そう聞いたぞとサタンはにやにや。一方、奏汰は話が飛躍していると頭を抱える。
「た、確かにルシファーの関係の始まりが実験の失敗だから、それは何とかしたいって言ったよ。言ったけど」
「それってつまり、ルシファーとちゃんと向き合うってことだろ」
「ぐうっ」
 ああ言えばこう言う。奏汰は言葉に詰まった。
「奏汰、これは何の機械なんだ?」
 現場監督をしていたルシファーが、ふよふよと浮かせていたのは何故か百葉箱。それは要らないんだけどと思いつつ、
「それを設置するのは外だよ」
 返品するとなると面倒かと思い、屋敷の北側の、あまり日の当たらない場所に置いておいてと指示。まあ、たまに観測すればいいだろう。小学校の頃、あの中を覗きたくて仕方なかったしと、奏汰はそう納得。
「ふむ。人間界は色々とあって面白いな。魔界だとそれって魔法で出来るしって思うことを、ああいう電子機器で総てまかなっている。人間の欲望とは素晴らしいよ」
 サタン、独特な見解を述べてくれる。
「サタン王、何をしているんですか?」
 と、ここでようやくサタンが混ざっていることに気づいたルシファーだ。実験室を作るのに気合いが入りすぎて見えていなかった。
「何って、俺も奏汰の実験室とやれが気になってきたんだ。ああ、そうそう、ダウンタウンにネカフェを設置したところ、悪さをする奴が減ったらしいぞ」
「あ、報告ありがとうございます」
「ベルゼビュートが後で詳しい報告書を持ってくる。金は悪魔崇拝の奴らに出させるから問題ないだろう」
「はい」
 結果、ネットカフェが作られたんだ。ネトゲ問題の解決が意外な着地点を見せたことに、奏汰は呆れつつも、出来上がっていく実験室にワクワクしていたのだった。
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