5 / 13
クリスマスまで待てないから餅つきやろう(黒シリーズスピンオフ)
しおりを挟む
「クリスマスまで待てません!餅つきやりましょう!!」
「ほぼタイトル通りの台詞?!」
突然の高橋怜央の宣言に、本を読んでいた金谷文隆は驚いた。これ、いつものパターンだ。今後色々と更新される予定だが、こういう前説があるので気楽に読んで頂きたい。しかもどういうわけか、文隆が寛いでいると、どういうわけか(お決まりとして)怜央が何か企む。
「長いんですよ、間が。こちらではまだ載せてないから解らないでしょうけど、ポッキーの日から一か月以上もイベントが空くなんて」
どんどんと、テーブルを叩いて怜央が吼える。日本人は何かとイベントをやっている。それに便乗した企画だが、月一の登場なんて嫌だと怜央が騒ぐ。
「お前なあ。ちゃんと本編の黒シリーズが存在するだろ?まだこっちに来てないけど、続きも控えているんだ。別にいいだろ?」
「あれとこれは別物ですよ。あんな深刻なストーリーとギャグBLを一緒にしないでください!」
登場人物が言うことかと、文隆は呆れる。たしかにあれ、暗く深刻なストーリーだ。おかげで閲覧数が伸びないと、作者も嘆いている。そのための宣伝用ギャグストーリーがこれだ。
「ということで、歳末餅つき大会をやりましょう」
「餅つきねえ」
そんなもん、やったことないぞと文隆は思う。どうやってやるのだろう。
「もち米と蒸し器だけ用意しておいてください。後は俺が段取りしておくんで」
すでにやる気の怜央はそう宣言すると、足早に文隆の部屋から去って行くのだった。
「へえ。これでお餅が出来るの?」
ということで、唐突に始まった歳末餅つき大会。二人のお目当ての相手、可愛い系男子である佐々木直人は目をキラキラとさせていた。好奇心旺盛な人物だけに、目新しいものには食いつく。ついでに、怜央が用意した物が良かったのだろう。
「そうですよ。ここに蒸し上がったもち米を入れると、お餅が搗きあがるというわけです」
「へえ」
そんな感心している直人の目の前にあるのは、餅つき機だ。家庭用の小さなやつ。それを怜央は通販で買っていた。文隆はもち米を蒸しながら、それでいいのかなと思わなくもない。餅つき大会じゃなかったのか。
「不満そうですね、文隆」
「ああ。まあね。餅つき大会っていうより、餅丸め大会になっていると思うんだが」
文隆がありのままの感想を述べると、怜央はそのとおりと頷いた。
「当たり前でしょう。理系に体力を求めてはいけません。特に俺たちのような理論系の人間は、日々パソコンの前から動かないんですよ。杵と臼で餅を作ろうものなら、翌日筋肉痛は避けられません」
「言っちゃったよ」
そこ、ギャグなんだから筋肉痛もオチとしていいんじゃないかと、文隆は思う。でも、そういうのは怜央の美学に反するらしい。
「ともかく、綺麗な白い餅を作る。これ、別サイトでやってる妄想コンテスト(2018年の話)のお題を拝借しているんで、白い餅、これが重要です」
「そこも言っちゃうんだ」
「ええ。白ってテーマならば他でもよかったのに、ねえ」
そこで怜央が意味ありげに笑う。その顔だけで何を言いたいか解った文隆は、ちょっと悲しい気分だ。だって、二人はこれでも恋人同士なのだ。複雑な三角関係なのだ。はあ。
「餅が不味くなる」
「何も言ってませんよ」
文隆の吐き出した言葉に、怜央はにやにやだ。何を想像したのか、しっかり伝わってしまっている。その間、問題の直人はといえば、餅つき機をしげしげと眺めていた。早く動かないかなと、それを待ちわびる子どもと変わらない。
「直人さん、もうすぐ蒸し上がりますからね」
「むう」
どう動くんだろうと悩みながら直人は頷いた。一応、餅つきの風景は見たことがある。一生懸命、杵を振り上げて作るのだ。ところが、目の前にある機械は、中心に何やら回転させる部品のついた、大きな鍋のような感じ。これがどう動くのだろう。楽しみだ。
「では、入れますよ」
あまりに熱心に機械を見る直人に苦笑しつつ、文隆は蒸し上がったもち米を持って直人の傍に行った。そして、そっと機械の中に入れる。炊き上がりのお米の匂いが、ダイニングに広がった。
「美味しそう」
「まだですよ」
すでに食べれそうという直人に、怜央はここからが本番と、透明な蓋をして餅つき機のスイッチを入れた。すると、もち米がぶるぶると震えだす。
「おおっ」
「意外と面白い」
感嘆の声を上げる直人と、初めて餅つき機を見た文隆は驚いた。
「でしょ?俺の祖父の家にこれの旧型があったんでね。意外と面白いのは知ってました」
にやにやと得意げな怜央だ。「餅つきなんて機械にやらせればいいじゃない」というのは、祖父からなんだなと文隆は思った。が、そんなことを言っているうちに、もち米はどんどん餅っぽくなっていく。大きな雪見だいふくを見ている気分だ。
「凄い。勝手につるつるになっていく」
直人はもう齧り付いて見ていた。いやあ、これだけ楽しんでくれるならば、歳末餅つき大会大成功だと怜央はご満悦である。
やがて機会が停止し、大きなお餅が登場した。それを、怜央と文隆でダイニングテーブルに用意しておいた、粉を打ってある台へと運ぶ。
「鏡餅、作りますか?」
「そうだな。直人さん、小さい方をお願いしますね」
これ全部を食うのは無理だなと、鏡餅もついでに作ることとなる。文隆は大きさの違う塊を作ると、直人に小さい方を渡した。
「えっと」
「こうやって丸めてください」
搗きたての餅を人生初めて触った直人は、どうするのと戸惑っている。それに怜央が嬉しそうに実践してみせた。綺麗な丸い餅が出来上がる。
「ほう」
直人は感心した声を上げると、せっせと丸め始める。が、不器用な直人がやると、上手く丸くならない。
「むう」
「そんなに真剣に丸くしなくても大丈夫ですよ」
文隆が大きな餅を作ったところで、直人の手から餅を取る。並べてみると出来栄えの差が見えるが、重ねてしまうから大丈夫。上に色々と飾りつけもするので、見栄えの悪さは気にならなくなるだろう。
「へえ。鏡餅ってそういうものなんだ」
文隆の説明に、直人は感心。この人、大人になってからもイベントに興味がないままだったんだなと、文隆も怜央も溜め息だ。
その後、残りを正月に食べる用の餅に丸めていく。
「じゃあ、搗き立てのお餅を食べてみますか」
怜央の発案で、きな粉と餡子が用意される。それを掛けて、三人は搗き立ての餅を堪能だ。
「美味しい」
「ふふっ。ああ、あれがあれだったらなあ」
もちをみょ~んと伸ばして食べる直人を見て、怜央がそんな不穏な発言をする。
「怜央。やっぱりお前」
「考えちゃうでしょ。せっかく白ってテーマなのに」
やらしいことしたいよと、怜央が真剣に訴えてくる。だとしても、食品で発想するんじゃない。
「餅を食え。この変態!」
こうして、クリスマス前に企画された餅つき大会は無事に終了するのだった。
「ほぼタイトル通りの台詞?!」
突然の高橋怜央の宣言に、本を読んでいた金谷文隆は驚いた。これ、いつものパターンだ。今後色々と更新される予定だが、こういう前説があるので気楽に読んで頂きたい。しかもどういうわけか、文隆が寛いでいると、どういうわけか(お決まりとして)怜央が何か企む。
「長いんですよ、間が。こちらではまだ載せてないから解らないでしょうけど、ポッキーの日から一か月以上もイベントが空くなんて」
どんどんと、テーブルを叩いて怜央が吼える。日本人は何かとイベントをやっている。それに便乗した企画だが、月一の登場なんて嫌だと怜央が騒ぐ。
「お前なあ。ちゃんと本編の黒シリーズが存在するだろ?まだこっちに来てないけど、続きも控えているんだ。別にいいだろ?」
「あれとこれは別物ですよ。あんな深刻なストーリーとギャグBLを一緒にしないでください!」
登場人物が言うことかと、文隆は呆れる。たしかにあれ、暗く深刻なストーリーだ。おかげで閲覧数が伸びないと、作者も嘆いている。そのための宣伝用ギャグストーリーがこれだ。
「ということで、歳末餅つき大会をやりましょう」
「餅つきねえ」
そんなもん、やったことないぞと文隆は思う。どうやってやるのだろう。
「もち米と蒸し器だけ用意しておいてください。後は俺が段取りしておくんで」
すでにやる気の怜央はそう宣言すると、足早に文隆の部屋から去って行くのだった。
「へえ。これでお餅が出来るの?」
ということで、唐突に始まった歳末餅つき大会。二人のお目当ての相手、可愛い系男子である佐々木直人は目をキラキラとさせていた。好奇心旺盛な人物だけに、目新しいものには食いつく。ついでに、怜央が用意した物が良かったのだろう。
「そうですよ。ここに蒸し上がったもち米を入れると、お餅が搗きあがるというわけです」
「へえ」
そんな感心している直人の目の前にあるのは、餅つき機だ。家庭用の小さなやつ。それを怜央は通販で買っていた。文隆はもち米を蒸しながら、それでいいのかなと思わなくもない。餅つき大会じゃなかったのか。
「不満そうですね、文隆」
「ああ。まあね。餅つき大会っていうより、餅丸め大会になっていると思うんだが」
文隆がありのままの感想を述べると、怜央はそのとおりと頷いた。
「当たり前でしょう。理系に体力を求めてはいけません。特に俺たちのような理論系の人間は、日々パソコンの前から動かないんですよ。杵と臼で餅を作ろうものなら、翌日筋肉痛は避けられません」
「言っちゃったよ」
そこ、ギャグなんだから筋肉痛もオチとしていいんじゃないかと、文隆は思う。でも、そういうのは怜央の美学に反するらしい。
「ともかく、綺麗な白い餅を作る。これ、別サイトでやってる妄想コンテスト(2018年の話)のお題を拝借しているんで、白い餅、これが重要です」
「そこも言っちゃうんだ」
「ええ。白ってテーマならば他でもよかったのに、ねえ」
そこで怜央が意味ありげに笑う。その顔だけで何を言いたいか解った文隆は、ちょっと悲しい気分だ。だって、二人はこれでも恋人同士なのだ。複雑な三角関係なのだ。はあ。
「餅が不味くなる」
「何も言ってませんよ」
文隆の吐き出した言葉に、怜央はにやにやだ。何を想像したのか、しっかり伝わってしまっている。その間、問題の直人はといえば、餅つき機をしげしげと眺めていた。早く動かないかなと、それを待ちわびる子どもと変わらない。
「直人さん、もうすぐ蒸し上がりますからね」
「むう」
どう動くんだろうと悩みながら直人は頷いた。一応、餅つきの風景は見たことがある。一生懸命、杵を振り上げて作るのだ。ところが、目の前にある機械は、中心に何やら回転させる部品のついた、大きな鍋のような感じ。これがどう動くのだろう。楽しみだ。
「では、入れますよ」
あまりに熱心に機械を見る直人に苦笑しつつ、文隆は蒸し上がったもち米を持って直人の傍に行った。そして、そっと機械の中に入れる。炊き上がりのお米の匂いが、ダイニングに広がった。
「美味しそう」
「まだですよ」
すでに食べれそうという直人に、怜央はここからが本番と、透明な蓋をして餅つき機のスイッチを入れた。すると、もち米がぶるぶると震えだす。
「おおっ」
「意外と面白い」
感嘆の声を上げる直人と、初めて餅つき機を見た文隆は驚いた。
「でしょ?俺の祖父の家にこれの旧型があったんでね。意外と面白いのは知ってました」
にやにやと得意げな怜央だ。「餅つきなんて機械にやらせればいいじゃない」というのは、祖父からなんだなと文隆は思った。が、そんなことを言っているうちに、もち米はどんどん餅っぽくなっていく。大きな雪見だいふくを見ている気分だ。
「凄い。勝手につるつるになっていく」
直人はもう齧り付いて見ていた。いやあ、これだけ楽しんでくれるならば、歳末餅つき大会大成功だと怜央はご満悦である。
やがて機会が停止し、大きなお餅が登場した。それを、怜央と文隆でダイニングテーブルに用意しておいた、粉を打ってある台へと運ぶ。
「鏡餅、作りますか?」
「そうだな。直人さん、小さい方をお願いしますね」
これ全部を食うのは無理だなと、鏡餅もついでに作ることとなる。文隆は大きさの違う塊を作ると、直人に小さい方を渡した。
「えっと」
「こうやって丸めてください」
搗きたての餅を人生初めて触った直人は、どうするのと戸惑っている。それに怜央が嬉しそうに実践してみせた。綺麗な丸い餅が出来上がる。
「ほう」
直人は感心した声を上げると、せっせと丸め始める。が、不器用な直人がやると、上手く丸くならない。
「むう」
「そんなに真剣に丸くしなくても大丈夫ですよ」
文隆が大きな餅を作ったところで、直人の手から餅を取る。並べてみると出来栄えの差が見えるが、重ねてしまうから大丈夫。上に色々と飾りつけもするので、見栄えの悪さは気にならなくなるだろう。
「へえ。鏡餅ってそういうものなんだ」
文隆の説明に、直人は感心。この人、大人になってからもイベントに興味がないままだったんだなと、文隆も怜央も溜め息だ。
その後、残りを正月に食べる用の餅に丸めていく。
「じゃあ、搗き立てのお餅を食べてみますか」
怜央の発案で、きな粉と餡子が用意される。それを掛けて、三人は搗き立ての餅を堪能だ。
「美味しい」
「ふふっ。ああ、あれがあれだったらなあ」
もちをみょ~んと伸ばして食べる直人を見て、怜央がそんな不穏な発言をする。
「怜央。やっぱりお前」
「考えちゃうでしょ。せっかく白ってテーマなのに」
やらしいことしたいよと、怜央が真剣に訴えてくる。だとしても、食品で発想するんじゃない。
「餅を食え。この変態!」
こうして、クリスマス前に企画された餅つき大会は無事に終了するのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる