27 / 51
第27話 もうプラズマに絞りましょう
しおりを挟む
「もういいですか?先生」
見ていた莉音が飛び跳ねる林田に冷たい視線を送る。
「ああ。ごめんごめん。何やら楽しい実験を計画しているんだったな。何をするんだい?」
林田は内股になりつつ桜太を見た。変人でもそこが急所であるのは変わらないのだ。
「いや、実験を計画しているのではないんですよ。一昨年の実験中に起きたという謎の光の原因が知りたいんです。どうして実験中に光が起きたか解りませんか?」
桜太は僅かに林田から離れつつ訊く。また抱き付かれたら股間以外を狙わないとなと密かに計画する。
「一昨年の実験中?あれは俺の人生の中で最高にクレイジーかつ知的刺激に満ちた実験の数々があったな。言ってみれば実験の狂想曲。知の集大成だ。そんな時に光っていたとは、面白い実験を逃したものだ」
林田の言い分はまったく役に立たないと明言しているようなものだ。そもそも最高にクレイジーとはどういう意味なのか。亜塔が指摘したように実験をしていたのはマッドサイエンティスト集団か。
「あの。どういう実験か全く思い出せないんで、先生に来てもらったんですけど」
呼び出した莉音は引きつつ言った。まさか監督していた林田が覚えていないとはどういうことか。しかも無駄なハイテンションのせいで時間をすでにロスしている。
「ううん。ここは推理しよう。光の色は覚えてないの?」
ここで初めて林田が真っ当なことを言った。自然と内股も治る。
「色、ですか?」
いきなりの質問に目撃者の芳樹と莉音は首を捻った。たしかに光は目撃しているが、色まで覚えていない。
「発光現象を色から特定するっていうのはいいアイデアだと思ったんだけどな。色に特徴があるものって多いだろ?それこそ炎色反応が起こって何かが燃えていた可能性も出てくる。しかし印象にないということは、炎色反応のようなものではないな。その光はフラッシュのようなものだったのか?一瞬だけ光った?」
林田がどんどん推理する要素を集め始める。これはこれで即戦力だ。誰も覚えていない実験を思い出そうとするよりかは生産的である。
「一瞬でしたね。あの時は何かが光ったぞって程度の驚きでしたし。誰もその光を特定しようとはしていませんでしたね」
芳樹が当時の状況を思い浮かべた。誰もが寝不足でどういう実験をしているのかもう解らない極限状態だったのだ。そんな中で謎の発光が起ころうと誰も取り合わない。
「ううん。すると放電か化学物質が一瞬で発火して終わるものだったかかな。電気も化学物質もどちらも扱っていたしね」
林田の推理で少し方向性が絞られた。これで何とか謎を解決するという体裁は保てる。
「放電ですか。すると放電管の可能性も?」
優我が桜太の背中に隠れながら質問する。それは絶対に抱きしめるなというアピールなのだ。
「そうだな。プラズマに関して調べていたから放電管もあったよ。蛍光灯もあったけど、体育館からかっぱらってきた高圧水銀ランプもあったぞ」
林田は隠れる優我を残念そうに見つつ答えた。そんなに男子たちには抱きしめてのスキンシップをしたいとはどういう性癖だ。もうアイドルだけを追い駆けていてもらいたい。
しかも体育館から高圧水銀ランプをかっぱらっていいのだろうか。そもそも高い天井に設置されているランプをどうやって外したのか。それを実験に使うとは大掛かりもいいところだ。まったく突っ込みどころがなくならない。
「一瞬で燃える化学物質なんて扱っていたんですか?」
千晴が冷ややかな目で林田を見つつ訊いた。もう近寄ってくるなとその目が訴えている。
「そうだな。俺が丁度王水を調合していたから、硝酸もあったし。色々と揃っていたよ」
胸を張って答える林田だが、全員が頭痛に見舞われた。この男は完全に化学教室を私物化していたのだ。大体にして高校で王水が必要になるはずない。王水とは金を融解することが可能な溶液だ。
「もうプラズマに絞りましょう。下手に化学物質を扱って化学教室を爆破しては意味がありません」
桜太は部長としてきっぱりと言った。このままでは新入生獲得前に廃部になってしまう。それにプラズマの実験を新入生の前でやってみるのも手かなと思える。
「そうだな。それで光を発生させてみよう。ちゃんと俺が監督するから任せておけ。松崎先生にも実験の許可は取っておくよ」
胸を叩く林田だが、その林田が監督するという部分が一番の不安要素だ。しかも完全に怪談から逸れている。
「もういいよな。結果として新入生が来れば。ここは宇宙空間と変わらないんだ。気づいたら加速膨張しているんだよ、きっと」
桜太がぶつぶつと実験の正当化を始める。これには科学部員たちも黙って頷く以外に何も出来なかった。
見ていた莉音が飛び跳ねる林田に冷たい視線を送る。
「ああ。ごめんごめん。何やら楽しい実験を計画しているんだったな。何をするんだい?」
林田は内股になりつつ桜太を見た。変人でもそこが急所であるのは変わらないのだ。
「いや、実験を計画しているのではないんですよ。一昨年の実験中に起きたという謎の光の原因が知りたいんです。どうして実験中に光が起きたか解りませんか?」
桜太は僅かに林田から離れつつ訊く。また抱き付かれたら股間以外を狙わないとなと密かに計画する。
「一昨年の実験中?あれは俺の人生の中で最高にクレイジーかつ知的刺激に満ちた実験の数々があったな。言ってみれば実験の狂想曲。知の集大成だ。そんな時に光っていたとは、面白い実験を逃したものだ」
林田の言い分はまったく役に立たないと明言しているようなものだ。そもそも最高にクレイジーとはどういう意味なのか。亜塔が指摘したように実験をしていたのはマッドサイエンティスト集団か。
「あの。どういう実験か全く思い出せないんで、先生に来てもらったんですけど」
呼び出した莉音は引きつつ言った。まさか監督していた林田が覚えていないとはどういうことか。しかも無駄なハイテンションのせいで時間をすでにロスしている。
「ううん。ここは推理しよう。光の色は覚えてないの?」
ここで初めて林田が真っ当なことを言った。自然と内股も治る。
「色、ですか?」
いきなりの質問に目撃者の芳樹と莉音は首を捻った。たしかに光は目撃しているが、色まで覚えていない。
「発光現象を色から特定するっていうのはいいアイデアだと思ったんだけどな。色に特徴があるものって多いだろ?それこそ炎色反応が起こって何かが燃えていた可能性も出てくる。しかし印象にないということは、炎色反応のようなものではないな。その光はフラッシュのようなものだったのか?一瞬だけ光った?」
林田がどんどん推理する要素を集め始める。これはこれで即戦力だ。誰も覚えていない実験を思い出そうとするよりかは生産的である。
「一瞬でしたね。あの時は何かが光ったぞって程度の驚きでしたし。誰もその光を特定しようとはしていませんでしたね」
芳樹が当時の状況を思い浮かべた。誰もが寝不足でどういう実験をしているのかもう解らない極限状態だったのだ。そんな中で謎の発光が起ころうと誰も取り合わない。
「ううん。すると放電か化学物質が一瞬で発火して終わるものだったかかな。電気も化学物質もどちらも扱っていたしね」
林田の推理で少し方向性が絞られた。これで何とか謎を解決するという体裁は保てる。
「放電ですか。すると放電管の可能性も?」
優我が桜太の背中に隠れながら質問する。それは絶対に抱きしめるなというアピールなのだ。
「そうだな。プラズマに関して調べていたから放電管もあったよ。蛍光灯もあったけど、体育館からかっぱらってきた高圧水銀ランプもあったぞ」
林田は隠れる優我を残念そうに見つつ答えた。そんなに男子たちには抱きしめてのスキンシップをしたいとはどういう性癖だ。もうアイドルだけを追い駆けていてもらいたい。
しかも体育館から高圧水銀ランプをかっぱらっていいのだろうか。そもそも高い天井に設置されているランプをどうやって外したのか。それを実験に使うとは大掛かりもいいところだ。まったく突っ込みどころがなくならない。
「一瞬で燃える化学物質なんて扱っていたんですか?」
千晴が冷ややかな目で林田を見つつ訊いた。もう近寄ってくるなとその目が訴えている。
「そうだな。俺が丁度王水を調合していたから、硝酸もあったし。色々と揃っていたよ」
胸を張って答える林田だが、全員が頭痛に見舞われた。この男は完全に化学教室を私物化していたのだ。大体にして高校で王水が必要になるはずない。王水とは金を融解することが可能な溶液だ。
「もうプラズマに絞りましょう。下手に化学物質を扱って化学教室を爆破しては意味がありません」
桜太は部長としてきっぱりと言った。このままでは新入生獲得前に廃部になってしまう。それにプラズマの実験を新入生の前でやってみるのも手かなと思える。
「そうだな。それで光を発生させてみよう。ちゃんと俺が監督するから任せておけ。松崎先生にも実験の許可は取っておくよ」
胸を叩く林田だが、その林田が監督するという部分が一番の不安要素だ。しかも完全に怪談から逸れている。
「もういいよな。結果として新入生が来れば。ここは宇宙空間と変わらないんだ。気づいたら加速膨張しているんだよ、きっと」
桜太がぶつぶつと実験の正当化を始める。これには科学部員たちも黙って頷く以外に何も出来なかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
おさかなの髪飾り
北川 悠
ミステリー
ある夫婦が殺された。妻は刺殺、夫の死因は不明
物語は10年前、ある殺人事件の目撃から始まる
なぜその夫婦は殺されなければならなかったのか?
夫婦には合計4億の生命保険が掛けられていた
保険金殺人なのか? それとも怨恨か?
果たしてその真実とは……
県警本部の巡査部長と新人キャリアが事件を解明していく物語です
三位一体
空川億里
ミステリー
ミステリ作家の重城三昧(おもしろざんまい)は、重石(おもいし)、城間(しろま)、三界(みかい)の男3名で結成されたグループだ。
そのうち執筆を担当する城間は沖縄県の離島で生活しており、久々にその離島で他の2人と会う事になっていた。
が、東京での用事を済ませて離島に戻ると先に来ていた重石が殺されていた。
その後から三界が来て、小心者の城間の代わりに1人で死体を確認しに行った。
防犯上の理由で島の周囲はビデオカメラで撮影していたが、重石が来てから城間が来るまで誰も来てないので、城間が疑われて沖縄県警に逮捕される。
しかし城間と重石は大の親友で、城間に重石を殺す動機がない。
都道府県の管轄を超えて捜査する日本版FBIの全国警察の日置(ひおき)警部補は、沖縄県警に代わって再捜査を開始する。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ヨハネの傲慢(上) 神の処刑
真波馨
ミステリー
K県立浜市で市議会議員の連続失踪事件が発生し、県警察本部は市議会から極秘依頼を受けて議員たちの護衛を任される。公安課に所属する新宮時也もその一端を担うことになった。謎めいた失踪が、やがて汚職事件や殺人へ発展するとは知る由もなく——。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
幽子さんの謎解きレポート
しんいち
ミステリー
オカルトに魅了された主人公、しんいち君は、ある日、霊感を持つ少女「幽子」と出会う。彼女は不思議な力を持ち、様々な霊的な現象を感じ取ることができる。しんいち君は、幽子から依頼を受け、彼女の力を借りて数々のミステリアスな事件に挑むことになる。
彼らは、失われた魂の行方を追い、過去の悲劇に隠された真実を解き明かす旅に出る。幽子の霊感としんいち君の好奇心が交錯する中、彼らは次第に深い絆を築いていく。しかし、彼らの前には、恐ろしい霊や謎めいた存在が立ちはだかり、真実を知ることがどれほど危険であるかを思い知らされる。
果たして、しんいち君と幽子は、数々の試練を乗り越え、真実に辿り着くことができるのか?彼らの冒険は、オカルトの世界の奥深さと人間の心の闇を描き出す、ミステリアスな物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる