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第7話 何を話せと!?

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「寺本」
「何だい? 君だって、熱心な読書家であるこの子が気になってたんだよね」
「そ、そうだが」
 静嵐は答えつつ、苦虫を噛み潰したような顔をした。これはひょっとして、叔父さんにお節介を焼かれたくなかったのではないか。
「それに、この子は大丈夫だよ」
「なぜ、言い切れる」
「まあまあ。そうだ、奥山君を家まで送ろう。その間に、ちょっと話すというのはどうだい? 車で送ろう」
「え、ええっ」
 静嵐に遠慮すべきではと思う愛佳を無視して、というか当の静嵐の意思さえ無視して、寺本はどんどん話を進めていく。そりゃあ、送ってもらえればラッキーとは思うが、いいのだろうか。
「その男は言い出すと聞かない。行こう。えっと」
「お、奥山です。奥山愛佳」
「そう。奥山さん。静嵐と呼んでくれていい」
「は、はあ」
 名前を、知っていたわけではないのか。それにまた下の名前しか解らない状態だ。この静嵐という青年も、かなりマイペースらしい。
 しかし、どうやら声を掛けろというのは、寺本が勝手に気を利かせ、勝手に愛佳だと特定して仕掛けたことらしい。
 そりゃあ、じっと見ていたら変に思うだろう。まったく、どうしてくれるのか。第一印象が最悪だったらどうしよう。
 三人出そろって図書館を出たが、静嵐と何を話せばいいのか解らない。図書館から駐車場までは少し歩かなければならないというのに、気まずいままだ。
「奥山君は図書館が好きなのかい?」
 しかし、勝手に世話を焼く寺本が、沈黙させておくわけなかった。そう話題を振ってくる。
「え、はい。もともと本が好きですし、この図書館。かゆいところに手が届くというか、読みたい本が次々に見つかるんですよね」
 ということで、愛佳はそう答えた。それに、静嵐は聞いているのか聞いていないのか、無反応だった。横に並んで歩くのは初めてで、彼の身長が百八十近いことに、今更気付く。
 そういえば、髪や目の色が薄いから、外国人の血が混ざっているのかもしれないなと思う。
 ひょっとして、それがこちらから声を掛けなければならない理由だろうか。こっちから話し掛けないと英語で話してしまうとか。
 そんな妄想をする愛佳だが、当の本人の静嵐には確認できない。
 いやはや、何を話せと。共通の話題は図書館なのだろうが、何を話せというのか。寺本の期待には、まだまだ応えられそうにない。
「戦国時代の本はね。僕の我が儘がずいぶんと反映されているから多いんだよ。全体的に歴史関係の本を増やしたいんだけどさ。それを読んでくれる学生が見込めなくてねえ。ま、図書館の利用率を増やせという、大学側からのあれでね」
「は、はあ。じゃあ、図書館を利用する人が増えれば、もっと本が増えるんですか?」
「そうそう。学部的にはやっぱり文学部の子の利用が多いからね。僕なんかの意見も聞いてもらえるわけ」
「へえ」
 と、寺本との会話は弾むが、静嵐は一言も発しなかった。そうしている間に、駐車場へと着く。
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