43 / 44
第43話 礼詞が笑った!?
しおりを挟む
「で、でも」
そんなことはないと、ずっと思い込んでいた礼詞には難しい内容だ。
それに、目標を見失う気持ちにもなる。
「あのさ。お前は何と戦ってんの?」
「えっ?」
躊躇う礼詞に、路人はクリームのなくなったコーンを突きつけながら訊く。それに、何を言い出すんだと礼詞は怪訝な顔だ。
「そうやって俺ばっかり気にしているけど、研究って、俺との戦いなわけ?」
「・・・・・・」
そんな問いを投げかけられるとは思っていなかったのだろう。礼詞の目が大きく見開かれる。
「そりゃあ、同じ分野で戦っている限りはライバルだ。でも、同じものをやり続ける必要なんてどこにもない。それなのに、お前は俺を気にし続け、自分の可能性を潰すのか」
いきなり教授モードで説教を始める路人に、暁良は呆れてしまった。しかし、こうやって正面から向き合える瞬間を見逃さずに、適切な言葉を投げかけるその手腕には、素直に凄いと感心する。
「可能性を、潰すなんて」
「お前は俺より出来る。少なくとも、プログラミングは完璧だ。俺は・・・・・・その点は逃げ続けてしまったからな。もちろん解ってるよ。出来ないって言い訳していることは。でも、お前のように完璧に出来るとは思っていない」
「・・・・・・」
ううん、認めるのは難しいみたいだな。黙り込んだ礼詞に、暁良も路人も難しいなという顔をする。
しかし
「お前は、今回の対決で自らプログラミングまでやるのか?」
そう礼詞が問い掛けてきて、暁良はやったねと思わず親指を立てる。
「そうだ」
路人はすかさず頷いた。
「そうか。それが、完璧でなくてもか?」
「ああ。ひょっとしたら動かないかもしれない。それでも、やる」
路人の断言に、礼詞はようやく顔を上げると、ぎこちなく笑った。
あ、あの仏頂面のハシビロコウの礼詞が笑った!
暁良は思わずスマホでその顔を写真にしてしまう。
「おい」
「いや、穗乃花お嬢様に見せないと」
注意してくる礼詞に、いいじゃんと、本当は翔摩たちに見せびらかすつもりだったが、その場で穗乃花にメールしてみせる。
「いつの間にお嬢様のメアドを?」
それに、路人は何で知ってるんだよと唇を尖らせる。
「この間、たまたま会ったんだよ」
で、暁良は説明するのが面倒なので大幅省略する。メールを送ると、すぐに穗乃花から電話が掛かってきた。
「凄いわね。どうやったの?」
穗乃花は開口一番、そんなことを訊く。
「やったのは路人ですよ。取り敢えず、対決は行われるみたいです」
暁良は苦笑しつつ、ともかく決まったことだけを告げた。すると、穗乃花はくすっと笑う。
「やるんだ」
「みたいですね。どっちも完璧じゃないことを証明するために」
「あらあら」
楽しそうに笑う穗乃花は、心底ほっとしているようだった。それは二人が仲直りしてくれればいいと、そう考えていたからだろう。
「あのぅ、本当にどっちかと結婚する気あるんですか?」
だから、思わず暁良はそう訊いてしまった。
「あるわよ。ふふっ、対決の日を、楽しみにしているわ」
穗乃花はそう言うと電話を切ってしまった。
「なんて」
電話の間黙っていた路人だが、明らかに不機嫌な声で訊いてくる。そんなに嫌いなのかよ。
「対決の日が楽しみだって」
「ふん。まあいい、まだ遊び足りない! 行くぞ!!」
取り敢えずの解決を見出せたと、路人は暁良と礼詞の手を取ると引っ張る。
「はしゃぐなって」
「お、おい」
注意する暁良と、戸惑う礼詞。でも、今までと違って礼詞はその手を振り払うことはしなかった。
そんなことはないと、ずっと思い込んでいた礼詞には難しい内容だ。
それに、目標を見失う気持ちにもなる。
「あのさ。お前は何と戦ってんの?」
「えっ?」
躊躇う礼詞に、路人はクリームのなくなったコーンを突きつけながら訊く。それに、何を言い出すんだと礼詞は怪訝な顔だ。
「そうやって俺ばっかり気にしているけど、研究って、俺との戦いなわけ?」
「・・・・・・」
そんな問いを投げかけられるとは思っていなかったのだろう。礼詞の目が大きく見開かれる。
「そりゃあ、同じ分野で戦っている限りはライバルだ。でも、同じものをやり続ける必要なんてどこにもない。それなのに、お前は俺を気にし続け、自分の可能性を潰すのか」
いきなり教授モードで説教を始める路人に、暁良は呆れてしまった。しかし、こうやって正面から向き合える瞬間を見逃さずに、適切な言葉を投げかけるその手腕には、素直に凄いと感心する。
「可能性を、潰すなんて」
「お前は俺より出来る。少なくとも、プログラミングは完璧だ。俺は・・・・・・その点は逃げ続けてしまったからな。もちろん解ってるよ。出来ないって言い訳していることは。でも、お前のように完璧に出来るとは思っていない」
「・・・・・・」
ううん、認めるのは難しいみたいだな。黙り込んだ礼詞に、暁良も路人も難しいなという顔をする。
しかし
「お前は、今回の対決で自らプログラミングまでやるのか?」
そう礼詞が問い掛けてきて、暁良はやったねと思わず親指を立てる。
「そうだ」
路人はすかさず頷いた。
「そうか。それが、完璧でなくてもか?」
「ああ。ひょっとしたら動かないかもしれない。それでも、やる」
路人の断言に、礼詞はようやく顔を上げると、ぎこちなく笑った。
あ、あの仏頂面のハシビロコウの礼詞が笑った!
暁良は思わずスマホでその顔を写真にしてしまう。
「おい」
「いや、穗乃花お嬢様に見せないと」
注意してくる礼詞に、いいじゃんと、本当は翔摩たちに見せびらかすつもりだったが、その場で穗乃花にメールしてみせる。
「いつの間にお嬢様のメアドを?」
それに、路人は何で知ってるんだよと唇を尖らせる。
「この間、たまたま会ったんだよ」
で、暁良は説明するのが面倒なので大幅省略する。メールを送ると、すぐに穗乃花から電話が掛かってきた。
「凄いわね。どうやったの?」
穗乃花は開口一番、そんなことを訊く。
「やったのは路人ですよ。取り敢えず、対決は行われるみたいです」
暁良は苦笑しつつ、ともかく決まったことだけを告げた。すると、穗乃花はくすっと笑う。
「やるんだ」
「みたいですね。どっちも完璧じゃないことを証明するために」
「あらあら」
楽しそうに笑う穗乃花は、心底ほっとしているようだった。それは二人が仲直りしてくれればいいと、そう考えていたからだろう。
「あのぅ、本当にどっちかと結婚する気あるんですか?」
だから、思わず暁良はそう訊いてしまった。
「あるわよ。ふふっ、対決の日を、楽しみにしているわ」
穗乃花はそう言うと電話を切ってしまった。
「なんて」
電話の間黙っていた路人だが、明らかに不機嫌な声で訊いてくる。そんなに嫌いなのかよ。
「対決の日が楽しみだって」
「ふん。まあいい、まだ遊び足りない! 行くぞ!!」
取り敢えずの解決を見出せたと、路人は暁良と礼詞の手を取ると引っ張る。
「はしゃぐなって」
「お、おい」
注意する暁良と、戸惑う礼詞。でも、今までと違って礼詞はその手を振り払うことはしなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる