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第46話 二人の関係はどうあるべき?
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「あっ、そうか。千鶴ちゃんを見て、美希さんが戻ってきたと勘違いしちゃったんだ」
「うん。でも、美希さんは飛行機事故で死んでしまっているはず。だから、帰ってきたと思った自分に舌打ちしたんじゃない?」
「ああ、あり得る。それかあれだよね、幽霊を見たと思って、お坊さんなのにって後悔したとか」
「それもあるかも。なんにせよ、亮翔さんは千鶴を見た時に美希さんだって思ってことよね。ああ、このままだと切ない片想いだわ」
琴実は焼豚に噛り付きながら、切ない恋よねと盛り上がる。それにがっくんは苦笑しつつも、確かに切なさはあるかと思った。でも、今の亮翔は千鶴を受け入れているようにも見える。そして、そんな自分を許せないというか、そんな感じがした。
「前の彼女に似ている人を好きになるって、難しいのかな」
「そりゃあ、難しいんじゃない?絶対に比較しちゃうじゃん。考えてみて。亮翔さんの話題には必ず美希さんがセットになっちゃうのよ。それを乗り越えて愛し合えるかって、難しいわよ」
琴実は無理じゃないと首を傾げる。すると、がっくんが困った顔になった。それに、どうしたんだろうと琴実はさらに首を傾げる。すると、がっくんは決意したように琴実の目を真っすぐに見つめた。
「好きだった人が実は女の子になりたかった場合は、どうなの」
「そ、それは」
まさか今、それを訊ねるのと琴実は動揺してしまう。確かにがっくんとは恋人同士だった。つい二か月前まで、ラブラブのカップルだったはずだった。それなのに今、女友達として付き合っている。
「僕はまだ、琴実が好きだ。でも、諦めるべきかな」
「――」
「ごめん。急すぎるよね。急ぐ必要なんてないことなのに」
黙り込んでしまった琴実に、がっくんは忘れてと笑う。しかし、琴実はそれでいいのかと悩み、じっとがっくんを見た。それに、がっくんは困ったような笑顔になる。
「今の関係が楽しいから、僕も悩んじゃったんだ。好きだって気持ちは残ってるけど、こういうフラットな関係がいいなって思うこともあって。その、亮翔さんの悩みとはちょっと違うけど、今の自分も色々悩んでいるなあって思ったんだよね」
そして正直に今の気持ちを告げていた。男の子として好きだった自分と、こうやって可愛らしく女の子として琴実に接している自分は同一人物だ。でも、格好が違うだけで距離はずいぶんと変化してしまっている。
そのことに、徐々に悩むようになってしまっていた。今が楽しければ楽しいほど、その苦しさは大きくなっている。好きだった気持ちは今もあるのに、それが消えてしまうような気がしていたのだ。
「そう、よね。がっくんはがっくんだもん。ううん、私も解らないわ。亮翔さんに相談した時は、私を無視してるって思ったから気持ちが乱れていたの。でも、それはがっくんが自分の気持ちと葛藤していてのことだったって知ったら、その時の妙な嫉妬みたいな気持ちは消えちゃって。だから、友達とか恋人とか、そういうの、考えないようになってた」
真剣ながっくんに対し、琴実もちゃんと気持ちを伝えなきゃと言葉にする。千鶴といる時はがっくんのことをあれこれ言えるのに、本人を前にしては何も喋っていなかったと、今になって反省したのだ。
「じゃあ、今の僕たちは」
「そうねえ。友達以上恋人未満ってことでどうかしら。傍にいて欲しいっていう気持ちは、私もまだまだあるもの」
正直に互いの気持ちを言い合えて、二人はすっきりした気持ちになった。それはまた問題を先送りしただけかもしれないけど、互いの心の中を知ることが出来てほっとした。
「ねえ、今治ってかき氷激戦区らしいのよ。かき氷も食べに行こう」
「いいね」
だから、これからも二人の時間を大事にしよう。そう確認するかのように笑い合っていた。
法話会が行われるのは岩峰寺というお寺で、なんと恭敬の弟である長谷川恭行が住職を務めるお寺だった。
「兄弟揃ってお坊さんって凄いですね」
「そうだな。願孝寺を恭敬さんが継いでいるわけだし、別に弟は僧侶になる必要はなかったのに」
途中から口も利かずに今治市までやって来た二人だが、目的地に関して言いたいことがあるのは同じだった。恭行は美希の叔父にあたる人物だから、余計に気になってしまうところだ。
車をお寺の駐車場に止め、二人はまずその問題の恭行に挨拶するべく本堂へと向かった。岩峰寺は願孝寺とは違う、何だか長閑な空気に包まれるお寺だった。入口に枝垂桜のある願孝寺はどこか凛とした空気が漂っているのに、こちらはぽかぽかと日だまりにいるような気分になる。
「それは、うちの寺は緊張を強いているってことか」
千鶴の感想に、亮翔はむっとした顔をする。その顔に子どもかと千鶴は笑ってしまった。
「違いますよ。ぱりっとした気分にさせてくれて願孝寺の境内も好きです。そのあとに住職の顔を見ると和んで、そのギャップもいいんですよね」
「ふうん」
亮翔は納得したのかしてないのか解らない返事をする。それに千鶴は印象が違うのはたぶんあなたのせいですよと心の中で付け足す。ともかく、今峰寺はとてもほんわかした空気感のあるお寺だ。
「ああ、亮翔さん。ようこそ。今日はよろしくお願いします」
ゆったりと境内を歩いていると、どことなく恭敬に似た顔のお坊さんがひょっこりと現れた。恭行で間違いない。
「うん。でも、美希さんは飛行機事故で死んでしまっているはず。だから、帰ってきたと思った自分に舌打ちしたんじゃない?」
「ああ、あり得る。それかあれだよね、幽霊を見たと思って、お坊さんなのにって後悔したとか」
「それもあるかも。なんにせよ、亮翔さんは千鶴を見た時に美希さんだって思ってことよね。ああ、このままだと切ない片想いだわ」
琴実は焼豚に噛り付きながら、切ない恋よねと盛り上がる。それにがっくんは苦笑しつつも、確かに切なさはあるかと思った。でも、今の亮翔は千鶴を受け入れているようにも見える。そして、そんな自分を許せないというか、そんな感じがした。
「前の彼女に似ている人を好きになるって、難しいのかな」
「そりゃあ、難しいんじゃない?絶対に比較しちゃうじゃん。考えてみて。亮翔さんの話題には必ず美希さんがセットになっちゃうのよ。それを乗り越えて愛し合えるかって、難しいわよ」
琴実は無理じゃないと首を傾げる。すると、がっくんが困った顔になった。それに、どうしたんだろうと琴実はさらに首を傾げる。すると、がっくんは決意したように琴実の目を真っすぐに見つめた。
「好きだった人が実は女の子になりたかった場合は、どうなの」
「そ、それは」
まさか今、それを訊ねるのと琴実は動揺してしまう。確かにがっくんとは恋人同士だった。つい二か月前まで、ラブラブのカップルだったはずだった。それなのに今、女友達として付き合っている。
「僕はまだ、琴実が好きだ。でも、諦めるべきかな」
「――」
「ごめん。急すぎるよね。急ぐ必要なんてないことなのに」
黙り込んでしまった琴実に、がっくんは忘れてと笑う。しかし、琴実はそれでいいのかと悩み、じっとがっくんを見た。それに、がっくんは困ったような笑顔になる。
「今の関係が楽しいから、僕も悩んじゃったんだ。好きだって気持ちは残ってるけど、こういうフラットな関係がいいなって思うこともあって。その、亮翔さんの悩みとはちょっと違うけど、今の自分も色々悩んでいるなあって思ったんだよね」
そして正直に今の気持ちを告げていた。男の子として好きだった自分と、こうやって可愛らしく女の子として琴実に接している自分は同一人物だ。でも、格好が違うだけで距離はずいぶんと変化してしまっている。
そのことに、徐々に悩むようになってしまっていた。今が楽しければ楽しいほど、その苦しさは大きくなっている。好きだった気持ちは今もあるのに、それが消えてしまうような気がしていたのだ。
「そう、よね。がっくんはがっくんだもん。ううん、私も解らないわ。亮翔さんに相談した時は、私を無視してるって思ったから気持ちが乱れていたの。でも、それはがっくんが自分の気持ちと葛藤していてのことだったって知ったら、その時の妙な嫉妬みたいな気持ちは消えちゃって。だから、友達とか恋人とか、そういうの、考えないようになってた」
真剣ながっくんに対し、琴実もちゃんと気持ちを伝えなきゃと言葉にする。千鶴といる時はがっくんのことをあれこれ言えるのに、本人を前にしては何も喋っていなかったと、今になって反省したのだ。
「じゃあ、今の僕たちは」
「そうねえ。友達以上恋人未満ってことでどうかしら。傍にいて欲しいっていう気持ちは、私もまだまだあるもの」
正直に互いの気持ちを言い合えて、二人はすっきりした気持ちになった。それはまた問題を先送りしただけかもしれないけど、互いの心の中を知ることが出来てほっとした。
「ねえ、今治ってかき氷激戦区らしいのよ。かき氷も食べに行こう」
「いいね」
だから、これからも二人の時間を大事にしよう。そう確認するかのように笑い合っていた。
法話会が行われるのは岩峰寺というお寺で、なんと恭敬の弟である長谷川恭行が住職を務めるお寺だった。
「兄弟揃ってお坊さんって凄いですね」
「そうだな。願孝寺を恭敬さんが継いでいるわけだし、別に弟は僧侶になる必要はなかったのに」
途中から口も利かずに今治市までやって来た二人だが、目的地に関して言いたいことがあるのは同じだった。恭行は美希の叔父にあたる人物だから、余計に気になってしまうところだ。
車をお寺の駐車場に止め、二人はまずその問題の恭行に挨拶するべく本堂へと向かった。岩峰寺は願孝寺とは違う、何だか長閑な空気に包まれるお寺だった。入口に枝垂桜のある願孝寺はどこか凛とした空気が漂っているのに、こちらはぽかぽかと日だまりにいるような気分になる。
「それは、うちの寺は緊張を強いているってことか」
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「違いますよ。ぱりっとした気分にさせてくれて願孝寺の境内も好きです。そのあとに住職の顔を見ると和んで、そのギャップもいいんですよね」
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「ああ、亮翔さん。ようこそ。今日はよろしくお願いします」
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