上 下
2 / 6

2

しおりを挟む

 「はんきち、明かりけてくれ」

 カッカと火打ち石の音がし、小ぶりなランタンに火が灯る。

 「灯を点けたら誰かに見つかるんじゃないか?」
 「どうせ今夜は誰も外を見ない。それに見つかったとして追いかけてきやしないよ」

 あんな迷信を信じてるんだから、と、どこかあざけりの混じった声で答える。

 「流石さすがに気味が悪いな。昼間は結構人がいるのに」

 仲間のひとりが真っ暗な森をぐるりと見渡す。
 よく手入れされたこの森とやしろは、昼間は子供たちの遊び場にもなるほど日が入る。
 風通しの良い場所なのに、今はどうしてか、じっとりと重苦しい空気がじゅうまんしているような気がした。きっと、先日まで続いた長雨と、星ひとつない闇夜のせいだろう。

 小道を辿たどって社までやってくる。よく知った場所なのでほど怖いということもない。
 初めは恐る恐る、という様子だった一行も、何も起きない事ですっかり気が大きくなっていた。

 「やっぱり何もない」
 「そりゃそうだ。今時あんな迷信」
 「散々怖い顔で言ってきたくせにな」

 先程まで身構えていた自分を誤魔化すように、皆の口数が増える。
 きっと、暗いところに行くと危ないよ、と子供に言い聞かせる為の作り話なのだと笑い飛ばす。
 そのせつ――

 「ううっ」

 仲間のひとりが唐突にうずくまった。
 普段は調子者の少年で、始めは悪ふざけかと思った。
 しかし、夜の闇よりも濃い、黒い影が彼の体にまとわりついて今るのを見た時、少年達の背筋が一瞬にして凍りついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

♡ド田舎×エロショタ×汗だくセックス夏休み♡

霧乃ふー  短編
BL
夏休み。 親戚のいるド田舎に行くことになった俺はそこで美しい少年、結に出会った。 俺は夏休みの間、結の艶かしい肢体を犯して続けた。 そんな夏休みの淫靡な日々♡

処理中です...