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第二十一話

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 僕とルールーは山の中を走っていた。馬は途中で足を痛めて走れなくなったので木に手綱を括りつけて置いてきた。

 それからずっと走っているので、息も絶え絶えだ。ルールーは余裕そうな顔をしているけど。

 それでもあと少し。

 結局、ラックたちに追いつくことは出来なかった。しかし、まだ盗賊の拠点に攻め入っている時間ではないだろう。

 僕はそろそろだなと思い、ルールーの手を握った。

「うぇっ!? な、なんだ!?」

 振り払われそうになったので、ギュッと握りしめる。
 離されると困る、主にルールーが。

「お、俺たち!? 付き合うにはまだ早いんじゃないかなっ!? いや、俺はいいんだけど!? 心ノジュンビガッ!?」
「ハァッ、ハッ、えッ……?」

 何を言ってるのかとルールーを見れば、顔が赤くなっていた。
 しかし僕にはそれを指摘している体力的余裕がない。
 というか、何を恥ずかしがってんだ?

 はぁ、疲れた。

「村にはッ、結界が、はぁ、張ってはるから、僕と手を繋がないと、はぁっ、迷うよ」
「あっ? あぁ、そういうことかよ。焦ったぁ」
「とにかく、急ぐよッ」
「了解」

 そうして、僕とルールーは猫獣人村に到着することが出来た。

 村は入口から一望することが出来る。

 しかし、そこには既にルールーも、ナリヤも、ホンドンさんも。ましてや村の男たちもいなかった。

 家の中にいるなんてことは無いだろう。そんな人数が集まれるような場所はない。

 予想よりも、ラックたちの到着が早かった……?

 そもそも僕は何を根拠に昼過ぎまでなら大丈夫だと思っていたのか。いやでも、荷物を詰め込んだ荷馬車でどうやってこんな早く到着することができたんだ?

 僕が考え込んでいると、ルールーが僕の肩に手を置いた。そして、僕はその勢いで地面に座り込んでしまった。

「ファイアさん!? 大丈夫か!」
「……また、僕のせいで、人が死んでしまう……」
「ファイアさん! まだ誰も死んでねぇよ!? それに死んだとしてもファイアさんのせいじゃねぇ!」

 ルールーが何か僕に話しかけているのは分かったが、内容が上手く理解できない。
 早くッ、早く向かわないとッ!

 僕は立とうとするが足が震えて上手くいかない。
 ルールーが手を貸してくれるが、手も震えていて上手く力が入らない。

 するとルールーが舌打ちをして近づいてくる。

「グレイには言うなよっとッ!」

 ルールーは僕を横抱き、つまりお姫様抱っこした。

「とりあえず村の人に話を聞きに行くって……こ、とで……」

 ルールーはこちらを見て話しかけてきたが、急に声が小さくなり、止まってしまう。
 そしてバッと前を向くと何ごともなかったかのように言葉を続けた。

「……いいのか?」
「あっ、うん。ありがとう」

 ルールーは僕の言葉を聞くと急に真剣な顔をして、歩き出した。
 そしてとても小さな声で一言だけ呟いた。

「……礼はいらねぇんだ。俺の方がシユさんには感謝してんだから」

 その言葉は、ファイアには届かなかった。
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