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騎士の試練
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私とテュール将軍は攻防一体の戦いを繰り広げる。
将軍の槍の刃を紙一重で躱して、私の反撃の“木剣”による一撃を将軍は腕で受け止める。
「テュール将軍! いくらなんでも危険です! 今すぐに中止を――」
アル様が吠える。当然かもしれない。
将軍が試験を始める前に言い出したのだ。
いわく、
『女の身であるゆえ、騎士という誇り高き国を守る仕事の“難しさ”を教える』
『ワシは本物の得物を使う。実戦であれば、死ぬこともある仕事じゃからな』
『これくらいで怖気付く人間はさっさと去れ。女には騎士など出来ぬ』
と。
私には訓練用の木剣を。
将軍は実戦で使っている槍で戦っているのだ。
「所詮ッ! 伝統とッ! 格式あるッ! 騎士団には女など不要なのだッ! 陛下もそう仰るハズ!」
将軍は、槍をぐるりと旋回させ、突きへと移行する。
しなやかな技だ。
「実力なんぞ、この国では細やかな基準よ! 年齢こそが、他者を凌駕する経験の質よ! 血縁こそ、産まれながらにして、与えられる才覚の一種よ!」
突き、そして、突き。
私は木剣で弾いて、弾く。
「なぜ、我が槍が、全く届かぬ……!」
ギリギリと槍の一撃を、木剣で受け止める。
「将軍の言う通りかもしれません……! でも!」
ただ負けられない。
何もなしていないのに。
始まる前から終わっているなんて嫌だ。
「私のために色々な人が助けてくれました……! 身を粉にして私に先生などを雇ってくれたお母さん! それに、自分の妃にするという抜け道を真っ先に提案してくださったアルヴィース様……!」
私は木剣を一気呵成に振り、将軍の手から槍を弾き飛ばした。
「私、一人の想いでここに来ているんじゃありませんッ!」
将軍の槍の刃を紙一重で躱して、私の反撃の“木剣”による一撃を将軍は腕で受け止める。
「テュール将軍! いくらなんでも危険です! 今すぐに中止を――」
アル様が吠える。当然かもしれない。
将軍が試験を始める前に言い出したのだ。
いわく、
『女の身であるゆえ、騎士という誇り高き国を守る仕事の“難しさ”を教える』
『ワシは本物の得物を使う。実戦であれば、死ぬこともある仕事じゃからな』
『これくらいで怖気付く人間はさっさと去れ。女には騎士など出来ぬ』
と。
私には訓練用の木剣を。
将軍は実戦で使っている槍で戦っているのだ。
「所詮ッ! 伝統とッ! 格式あるッ! 騎士団には女など不要なのだッ! 陛下もそう仰るハズ!」
将軍は、槍をぐるりと旋回させ、突きへと移行する。
しなやかな技だ。
「実力なんぞ、この国では細やかな基準よ! 年齢こそが、他者を凌駕する経験の質よ! 血縁こそ、産まれながらにして、与えられる才覚の一種よ!」
突き、そして、突き。
私は木剣で弾いて、弾く。
「なぜ、我が槍が、全く届かぬ……!」
ギリギリと槍の一撃を、木剣で受け止める。
「将軍の言う通りかもしれません……! でも!」
ただ負けられない。
何もなしていないのに。
始まる前から終わっているなんて嫌だ。
「私のために色々な人が助けてくれました……! 身を粉にして私に先生などを雇ってくれたお母さん! それに、自分の妃にするという抜け道を真っ先に提案してくださったアルヴィース様……!」
私は木剣を一気呵成に振り、将軍の手から槍を弾き飛ばした。
「私、一人の想いでここに来ているんじゃありませんッ!」
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