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二部・戻る気はない

父の噂

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 シャロンの母親を治療した翌日、シャロンは今まで以上にやる気満々で働いていた。

「ソフィーさん、行ってきますっ!」

 彼女は元気よくポーションを荷車に並べていく。
 母親が治って、ソフィーも本当に良かったと思う。

「シャロン。お母様のご様態はどう?」
「すっかり元気になりましたっ! 洗濯や家事とメキメキ働いていますっ! 昨日まで一日中苦しそうにしていた時とは大違いですっ!」
「それはよかったわ」
「だから、そのぅ。あたし、ソフィーさんのためにも一生懸命働きますのでっ!」

 彼女は元気よく配達へ向かい、入れ違いでロジェが工房に訪れた。

「やあ、ソフィー」
「おはよう、ロジェ。どうしたの?」
「いや、ギルドの依頼で見回りついでに、ここを寄ったんだ」
「サボり?」
「仕事の最中さ。昨日だって、アイザックに絡まれたんだろう? あとは君のところの従業員が何かあったらいけないからね」

 シャロンとは入れ違いになったが、ロジェはシャロンのことを知っているようだ。

「ギルドもシャロンの弁償を受け付けたよ。一応被害者の方も、今の所は弁償で納得しているようだ」
「そう、良かったわ……!」
「あと……それは、アイリスドリスの花を……?」
「ええ。アイリスドリスの薬よ」

 ソフィーが工房で作っているのは、昨日、シャロンの母親に対して作った薬だ。
 それを何個か作っている最中だった。

「ついにアイリスドリスの販売をするんだね」
「ええ! やっぱり必要だと思うの」
「……しばらく、この街にアイリスドリスを求めた人々が集まりそうだ」

 だから、シャロンが働いてくれている間に、ソフィーは薬の生産を始めているのだ。
 また、花を溶かす作業がこれまた時間がかかるので、これの効率化も必要になってくるだろう。

「それにしても」

 ロジェは呟く。

「ハンナさんはまたいないね」
「ええ。最近、よくわたしの実家に帰っているの」
「セイリグ家に? そういえばセイリグ伯爵はなにをしているんだろう?」
「なにをしている?」
「ああ。王子の一件が偽りだったことが明らかになった今、彼が無言を貫いているのはおかしい」

 ロジェもソフィーの父に対して、違和感を抱いたようだ。
 ……ソフィーと同じく。
 ソフィーの追放は、王子の婚約破棄にかかわる一連の出来事だったハズなのに。

「最近は公共の場にも姿を現さないと聞くが……どうしたんだろうね……?」
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