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元令嬢の錬金術ライフ

剣の切れ味

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 ――side ロジェ――

 ロジェは冒険者ギルドで登録を済ませると、とりあえずは単独で依頼を受注する。
 長期的な潜伏が必要になってくるロジェには、仕事をして冒険者であることを誤魔化さなければいけない。
 そして、機会を伺いジュリアン王子が行った暗殺行為や、婚約破棄にまつわる騒動などを解決していかねばならない。
 ソフィーはそれを望まないだろうが、国家の問題だからだ。

「それにしても」

 ロジェの仕事は、荒れ地に増えたグールの討伐だ。
 騎士として、魔物を討伐する任務は経験済みだが、冒険者として魔物を討伐するのは、こうにも違うのか、と改めて実感させられる。

「一人の仕事というのは、こうにも不安があるものか」

 ロジェが剣を振るう。グールを斬っていく。
 しかし、もし不意の一撃で怪我を負えば?
 強敵が現れた時に誰が助けてくれる?
 所持品の管理や健康状態などの確認は?

「中々、安定した仕事とは言いにくい、なっと!」

 グールの爪をはたき落とすように剣を振った。
 冒険者となると一人、あるいは少人数で戦うことになるだろうが、もし、何かがあれば、誰も助けてくれない。
 ソフィーに出会ってロジェが助かったのは、運が良かった、としか言いようがなかった。

「ソフィー」

 彼女は、錬金術師として名前を馳せるようになるのではないだろうか。
 なにせ、エリクシールなど到底作れるものではない。
 それが、模倣品であったとしても、ほぼ死亡したようなロジェを助けられるワケがない。
 すごい。そして、彼女にはどこか惹かれるような、そんな魅力がある。

「……いけない。戦闘中に考え事をしていては」

 ロジェはグールを次々と斬っていくが、剣を振った感触が今までと段違いだった。
 刃物を当てたとき、するりと敵を真っ二つに出来る。
 特に力を込めずとも、振るだけで簡単に敵を倒せてしまうのだから、切れ味が異様に上がっている。

「……試してみたい」

 ふと、この剣で堅い敵を斬った時にどうなるのか。
 そんな好奇心出てしまった。
 ロジェが剣を見つめていると、地面が揺れる。
 大きな魔物でも姿を現したのだろうか。

「誰かー!!!」

 男の悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。
 ロジェはすぐに駆ける。
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