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借金令嬢
夜の食事
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ソフィーたちに運ばれてきたワインやチーズ。鶏肉料理に、オシャレなパイなど。
野菜のスープは甘みが香りから伝わってくる。
久しぶりのごちそうを目の前に、反対側の席に座る男はメソメソしていた。
「今日のフルコースは妙に塩気が強いね」
強がって笑っている顔を見せるが、近衛騎士にまで就任したエリートとは思えない顔に、ソフィーは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「その……」
「いや、いいんだ! ただ、護衛のお誘いだしね」
ナイフで鶏肉を切り分ける。
脂身がなく、ソースも塩気のみのシンプルな味付けで、女性であるソフィーでも食べやすい。
中々値が張るだろう。ここまでの贅沢は、貴族であるソフィーにとっても中々あることじゃない。
「あ……お金」
「俺、一応エリートだから」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、ワインをごくごく飲んでいるエリートなど初耳だった。
「それで、君はどうするんだい?」
「わたし、家から追放されて。娼館で身を売るしかないまで追い込まれて。工房をくれるのかと思ったら借金まで背負わされて。余裕なかったんです」
「ソフィー……」
「でも、その借金も圧倒いう間に解決しそうですし……これからどうしたいか、決めて行かないとって思ったんです」
そのままでいけば、売れるポーションをちゃんと作って。
ギルドの仕事も受けて。
そして……この延長線上にあるのは、錬金術を極めてみたい。
そんな感情が少し、溢れている。
「わたし、錬金術を極めて、金を作りたいの」
「きん……? 錬金術師が目指す金の精製?」
「そう。錬金術師が目指す終着点が金。元素の組み替えを極めた先に、何が待っているか」
もちろん。金の精製が、錬金術師としての完全なゴールではない。
あくまで金に至った後も、錬金術師は知を求めて極め続けることとなるだろう。
「だから、わたしは錬金術師としての生活をこれからしっかり送ってみたいの……!」
「そうか……! なら俺も出来る限り、君の力になるよ」
別にそんなことをして貰う必要は今の所ない、とソフィーは思いたい。
ジュリアン王子も、平民になったソフィーには何も口出ししてこないだろうし。
ロジェは約束通り、食事代を全額払ってくれた。
そこはソフィーは感謝する。
それに、この青年にはニガテ意識は多少あるが、悪い人ではなさそうだ。認識を改めた方が良いかもしれない。
野菜のスープは甘みが香りから伝わってくる。
久しぶりのごちそうを目の前に、反対側の席に座る男はメソメソしていた。
「今日のフルコースは妙に塩気が強いね」
強がって笑っている顔を見せるが、近衛騎士にまで就任したエリートとは思えない顔に、ソフィーは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「その……」
「いや、いいんだ! ただ、護衛のお誘いだしね」
ナイフで鶏肉を切り分ける。
脂身がなく、ソースも塩気のみのシンプルな味付けで、女性であるソフィーでも食べやすい。
中々値が張るだろう。ここまでの贅沢は、貴族であるソフィーにとっても中々あることじゃない。
「あ……お金」
「俺、一応エリートだから」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、ワインをごくごく飲んでいるエリートなど初耳だった。
「それで、君はどうするんだい?」
「わたし、家から追放されて。娼館で身を売るしかないまで追い込まれて。工房をくれるのかと思ったら借金まで背負わされて。余裕なかったんです」
「ソフィー……」
「でも、その借金も圧倒いう間に解決しそうですし……これからどうしたいか、決めて行かないとって思ったんです」
そのままでいけば、売れるポーションをちゃんと作って。
ギルドの仕事も受けて。
そして……この延長線上にあるのは、錬金術を極めてみたい。
そんな感情が少し、溢れている。
「わたし、錬金術を極めて、金を作りたいの」
「きん……? 錬金術師が目指す金の精製?」
「そう。錬金術師が目指す終着点が金。元素の組み替えを極めた先に、何が待っているか」
もちろん。金の精製が、錬金術師としての完全なゴールではない。
あくまで金に至った後も、錬金術師は知を求めて極め続けることとなるだろう。
「だから、わたしは錬金術師としての生活をこれからしっかり送ってみたいの……!」
「そうか……! なら俺も出来る限り、君の力になるよ」
別にそんなことをして貰う必要は今の所ない、とソフィーは思いたい。
ジュリアン王子も、平民になったソフィーには何も口出ししてこないだろうし。
ロジェは約束通り、食事代を全額払ってくれた。
そこはソフィーは感謝する。
それに、この青年にはニガテ意識は多少あるが、悪い人ではなさそうだ。認識を改めた方が良いかもしれない。
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