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借金令嬢

目を覚ました青年

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「ここは……?」

 青年は不思議そうに己の身体を見回す。
 無理もない。
 死んでもおかしくないほどの重症から回復したのだから。

「良かった……目を覚まされたのですね」
「……俺は死んだと思ったが。どうして……?」

 どうして、と問われても困った。

「そ、その。私、錬金術の知識がありまして。それでポーションを」
「俺の怪我はポーション程度じゃあ治らないと思ったんだが……」
「…………」
「高位の回復魔法を使ったんじゃないんですか?」

 仮のエリクシールだと説明なんて上手く出来ないし、ソフィーは嘘があまり得意ではない。

「とにかく……あなたに助けられたのは間違いないようだ。礼を言います」

 青年は立ち上がる。

「ああ! まだ怪我が……」
「え……ああ、あなたのおかげか、もう骨も血も完治しているみたいです」
「そ、そんなに……」

 先程まで心臓が止まっていた人間と同一人物とは思えないほどの回復っぷりだ。

「俺はロジェと言います。あなたは?」
「わたしはソフィーです。えっと、仕事は……」

 令嬢だとは言えない。
 となれば、やはり名乗るべき相応しい職業があるだろう。

「錬金術師です!」
「錬金術師のソフィー……? あなたが……?」

 まるで、ソフィーを知っているかのような口ぶりだ。
 それも令嬢としてのソフィーを、である。
 そうでなければ、錬金術師として活動を始めたばかりのソフィーのことを知っているハズがない。

「あなたは一体、何者ですか?」
「俺、ですか? ああいえ。怪我をした…………冒険者です」

 冒険者というには、服装や装備品に違和感があった。
 綺麗に整えられたコートに、王国の紋章が入った剣。
 冒険者とは思えない出立ちなのだが……。

「死の淵より助けていただき、改めて礼を言いたい。本当にありがとう」
「え、ええ。それよりもあなたは、どうしてこれほどの怪我を……」

 ロジェは瞳を閉じて、首を横に振った。

「言えません。あなたには特に」
「私には……特に?」
「……とにかく、俺は襲撃にあって三日三晩と戦い続けた。その時に負わされた傷ですよ」

 さも当然のように三日三晩戦ったとロジェは語る。
 普通の人間なら、一日中剣を振ったり、魔法を使ったりできないだろうに。
 一体、彼は何者なのだろうか。
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