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外伝 万屋
外伝 万屋 5
しおりを挟む「よく来た。
どれ、まずはその無粋な笠でも外してもらおう。」
そう答えたのは、この屋敷の主の〝武(たけし)〟は顔だけを普齊達に向けて太々しくそういった。
武の指示に大人しく従い、2人は笠を外す。
「ほう、只者のではないな。」
「武様も武道を嗜まれているのですか?」
満足そうにそういういう武にやっと普齊は言葉をかけた。
普齊の問いに声を上げて笑うと禍々しい笑みで普齊を見る。
「何人もの家畜を見てきたのだ、ここの価値や力量は顔を一目見ればわかる。
そこの娘も惜しいな…腕が立ちそうになかったらその見た目だ高く売れただろうに。」
そういうと、窓から離れて部屋の奥にある自分の机まで移動するとコップに酒を注ぎゴクゴクと喉を鳴らして飲み始めた。
酒を飲みほして机にコップをおくと、普齊達をみる。
「それで、誰の差し金で俺を殺しにきた?
甘ちゃんの護か?
それとも…俺を目の敵にする倭の家畜共か?
護衛の話は聞いてたが…家畜の話など長く聞いていなかったものでな。
誰の差し金だか分からん、大方…下の牧場で集まっている人間もどき共のどれかだろうがな。」
武の一言にルイは動揺したが、普齊はそんなのを気にしている様子もなくゆっくりと立ち上がる。
畏まった態度をしていて肩が凝ったのか肩を大きく回しすと、ギロリと武を睨んだ。
「ありがたい、家畜の鳴き声を態々きてくれるんだな。」
「よい、俺が許可する。
そして今日は俺の気分も良い、聞きたいことがあれば答えてやろう。」
丸腰で武器も持っていないのに何故そんなに余裕そうなのだろう。
案内した兵士が実はかなりの手練れなのだろうか…いやそれはない、隙だらけだったからその気になればすぐにでも始末できた。
普齊は武の様子を伺いつつも口を開く。
「いや、それが俺達もきいてないんすよ武の旦那…手紙と金だけの一方的なやつでこっちも片思い中なんだ困ったものだろ?
それと…アンタの言葉で合わしてやると、〝静(せい)〟って名前の牧場は来たことがあるか?」
「そうか、それはお前らも災難だったな。
ぁあ、その牧場は来たことがある質のいい家畜がいて大変良かった。
後からアイツに明け渡したのは少々おしかったと思っていたからよく覚えている。」
確定だ。
普齊は刀の柄に手をかけて武に向かって走り込んで思い切り振り下ろすが、武は素手で普齊の振り下ろした刀を握って受け止めた。
むき出しの刀の刃を平気な顔をして握る人間は流石に初めてのようで、彼の目には少し同様の色が見える。
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