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第二話
第二話 22
しおりを挟むここで、父に聞けと蓮に丸投げしない辺り剛の人柄が窺える。
「そうな…簡単に言えば度胸試しの名を借りた照れ隠しみたいなもの…なのだろうか。
男は情けない事に女体に興味が尽きない生き物だ。
籐麻や空は、今は分からないと思うがそのうちわかる時がくる。
度胸試しなのは…あれだ、バレた時の報復が怖いからだろうな。
今回の話で例えるが…仮に女湯を今除いたら怒る人間がいるだろ。
見られた本人は勿論、家族である兄者と優と蓮。
お前達は、本気の兄者達を敵に回したいか?」
地の果てまで追いかける事のできる蓮。
確実に敵を追い込む知能と力を持つ護。
攻防のバランスが良く反撃されても決して困らない優。
手加減している訓練であの強さなのだから、本気の強さの彼はどうなるのだろう…。
考えただけで、背筋がゾクッとする。
「異性の体に興味があるのは、生物としての習性だから気になる事自体は恥じる事ではない。
だかな…歌舞伎者共がやった覗きは、相手を不快にさせる事だ決してやってはいけないぞ。
それに、覗きをやって複数の他の女子の秘密とかを知るより、本当に好きな女子の事だけを知り守ってやる方がいいとは拙者は思うぞ。
まっ、拙者は兄者と違い嫁さんはいないからあまり上手にいえないがな。」
ワッハッハと笑いながら、空と籐麻の頭をクシャクシャに撫でる。
その後で、それぞれの脇に空と籐麻を抱えると湯船に向かっていく。
ここでやっと男勢が全員湯船に浸かった。
一気に人が入った為に、湯船からお湯がザブーンと溢れる。
「剛の答えにしては繊細で優しい回答だったな。
学が無いわけでもないから案外、寺子屋の先生とか向いているのではないか?」
「茶化すなよ兄者。
流石にここまでは向いてないさ。」
怪訝そうな表情で剛は、護を見てそう答えた。
別に茶化している訳ではないさ。
フッ…と軽く笑うと、再び酒を口にする。
視線を移すと、今度は優が子供達と戯れていた。
両手をうまい具合に組んで湯船のお湯を水鉄砲のように発射して空と籐麻に撃っている。
優は風呂で血行が良くなっている事もあり、普段より酔っていた。
少し顔を赤くして、柔らかい笑みを浮かべながら容赦なくお湯を籐麻と空に撃っている姿はまるで赤鬼だ。
空もベソを描き始めたし、そろそろ止めるか…。
蓮がそう思い仲裁に入ろうとした時に、籐麻が覚醒した。
戦意を喪失している空とは違い、負けず嫌いの籐麻はフツフツと闘志を燃やしながら優の手元を見ていた。
その結果、優がどうやって水を出しているのか解析して反撃に出る。
籐麻が撃った、たった一発のお湯が優の顔を直撃。
元々、限界だったのだろう。
その一発で完全にのぼせてしまい、優は気を失った。
「…まぁ、自業自得じゃな。
どれ、優ものぼせたし…部屋に戻るとしようか。」
蓮の一言で、男達はお風呂から上がっていった。
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