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第二話
第二話 8
しおりを挟む「一瞬も気を抜かないでね。」
優は、藤麻に向かってただ一言そう言った。
自分の娘に怪我をさせないように言っているのだろうか。
藤麻は、そう考えながら楓に向かって走る。
楓は訓練用の武器は一切持っておらず、帽子を少し被り直すと向かってきた藤麻の手をとって後方に思い切り投げ飛ばした。
本当に一瞬だった。
痛むのは受け身をとり切れず床にぶつけた背中のみ。
…ぁあ、そう言う意味か。
先程言われたばかりの事を生かしきれず、反省した藤麻はすぐに起き上がり楓に向かい直して拳を突き出す。
最初は、様子見のフェイント。
しかし楓は見切っていたのか最初のように藤麻の手を掴もうとせずに最小限の動きで避けてフェイントだとわかると、引いた拳に合わせるように右手の掌底を藤麻の腹に打ち込む。
掌底を思い切りくらった籐麻は、口から体の中にある空気が全部押し出されたように声と息を吐き出す。
そして、攻撃で動きが完全に止まった籐麻の右手を掴みながら後ろに回り込みそのまま前に押し倒した。
籐麻の右手を背中につけるように固定した楓は、籐麻の背中の中心に全ての体重を込めるように足で踏みつける。
「…これは、流石に教えてもよかったんじゃないかの?
候補者ではないが、ワシらの子供世代で1番強いのが楓だと。」
「それだと駄目だよ。
本当の強者は、自分の強さを隠している。
それを知る為には、楓には悪いけどちょうどよかったのかもしれないね。
…楓、離してあげなさい。」
優にそう言われた楓は、籐麻からゆっくりと離れて籐麻の手を引いて立ち上がらせた。
あまりにもあっという間の出来事だった為に、籐麻はどこか上の空だった。
「大丈夫かしら?
ほーら、シャキッとする!」
楓は、ポンポンと籐麻の両肩を叩く。
それで我にかえった籐麻は、自分の頬を叩いて気を取り直した所で楓に手を差し出した。
「組み手の相手をしてくれてありがとう。
次にやることがあったら、あっさり負けないように鍛錬をしておくよ。」
「あら、簡単に勝ちは譲らないわよ。」
籐麻の手を握り返した楓は、にこーっと笑ってそう言った。
中々に微笑ましい光景だ。
仕事でこの組み手を見れなかった護はさぞ、無念だっただろう。
珍しく務めにいくのを渋っていたのだから。
「それで、籐麻の武器は決まりそう?」
優は、微笑ましそうに子供達を見る蓮に声をかけた。
決まったも何も、籐麻の戦い方や四大の性質を見る限りほぼ確定しているようなものだった。
「ぉお、決まっておるぞ。
なんなら、明日にでも完成する予定じゃ。
火の四大使いの武器が回収できて助かったわい。」
籐麻の驚く顔が目に浮かぶ。
そんな事を考えながら、キセルを吸いに外に出かけた。
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