コバナシ

鷹美

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プロローグ

プロローグ23

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矢島は、少し狼狽えたが地面が割れる以外の事が無いと分かると直ぐに状況をみる。

地面が平らで無くなった為に、摩擦で火花を起こすのが難しくなった。
少しだけ確認したが矢島だったが、火花が起こる前に割れた出っ張りで刃が止まってしまうのが見えると小さく舌打ちをする。

…ならば。
矢島は直ぐに壁際まで走る。
何も摩擦を起こせるのは床だけではないと。


対した距離ではなかったが、蓮はその隙を逃さなかった。


【朱雀(すざく)】


蓮は素早く天井から壁へと順番に踏み付けて加速した。
特に壁には力を入れていたようで、ヒビを作って踏み込み矢島に向かって跳んでいく。

何とか壁際まで間に合った矢島は、壁に刀を擦り火花を散らしながら回転する。

【渾沌】


実態のある炎が渦を巻き矢島を守る。
しかし、蓮は止まらないグルグルと体を回転させるとそのままの勢いで右手のトンファーを振り下ろした。

金属同士がぶつかるような重たい音が響く。


「みくびるなよ、型とまではいかんが…武器に風を纏わせて殴るくらいはワシにもできる!」


ガラスが割れるような音を響かせると蓮のトンファーは、矢島を守る火をかき消した。
矢島も咄嗟に出した刀でトンファーを防ごうとしたが…構えた刀も打ち砕きそのまま矢島の肩を打ち抜いた。

短く呻いた矢島の声が響く。
そして、ガードを打ち崩した隙を逃さないように蓮は左手のトンファーで矢島の横腹を殴った。
メキメキと嫌な音を立てながら横腹を殴られた矢島は綺麗に側転して、床に倒れる。

まだ、余力はまだある。
蓮はトドメをさすか少しだけ迷っていると、護が到着した。



「蓮が頭を押さえていたおかげて、其方は囚われていた女子供を無事に救出できた。

そちらは…終わったようだな。」


護は、刀を鞘に納めて額の汗を拭いながら蓮の元に向かう。
その間蓮は砕いた刀は念のために、矢島から遠ざけておく。

護は、ゆっくりと屈むと矢島の顔を見る。
蓮は知らなかったが、護は顔を知っているようで少し驚いた顔をした。


「矢島じゃないか。
私たちと同じ四大の技術を扱えるここから離れた領地で活動する高名な剣士だったはずだ。

確か…彼は火を扱う剣士だった。
なるほど、護衛の戦士が返り討ちにあう話を聞いて疑問に思っていたが…彼が相手なら納得だ。」


さらに付け加えると護が知る矢島は、メイクでもっと顔が白かったそうだが…。

そんな事はさておき、矢島の処遇だ。


まずは事情を聞こう。
有益な情報を持っているかもしれない。



護の指示で矢島は拘束し、東野の城に連行する事が決まった。


他にも砦内部を巡回し、残党がないか確認。
幸いにも囚われていた女子供には死者はいないようで、東野で待つ者達に嬉しい知らせを届ける事ができそうだ。



東野への道中に下手に暴れられても困る為、矢島だけは簀巻きのようにして大介と蓮の二人で運び東野に向かっていく。
生き残った他の山賊は、手だけを拘束して一列にして歩かせている。


「こちらに死者が出てないのが何よりも私は嬉しいです。
若も大変御喜びになれるでしょう。

護様や蓮殿には、大変助けられました。」


「なに、気にすることはない。
私も東殿と連携がとれたおかげで早急に危険な芽を摘む事ができた。

何より盟友と同じ事に取り組めた事は、今後に生かす事ができるから…。」


大介と護はそんな話をしていたが、蓮の仕事モードは完全に切れており完全に上の空だ。

難しい話は、護に任せていればいい。

矢島の事もあったから自分ももっと鍛錬をせねば…。

最近、平和ボケして気が付かないうちに訛ってきたのだろうか。
それとも、とうとう歳が近づいてきたのだろうか…。

そんなことを考えながら、蓮は足を進めた。
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