コバナシ

鷹美

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プロローグ

プロローグ22

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護の事もある。
最速で矢島を倒そう。


蓮は地面にヒビが入るくらいの力で地面を蹴って一気に加速して勝負にでた。
しかし、矢島はそれを難なく避けると3歩下がった。


驚く蓮をよそに、矢島はゆっくりと鞘に収めてある刀の柄を握る。


「ほう…何度かきた雑魚どもとは違うみたいじゃのぅ。
領主は皆一流の戦闘技術を取得しておる。

マロとて、その一人じゃ。
速いだけの短調な攻撃など、避けれないことはない。」


おじゃおじゃとよく分からない笑い方をしながら、矢島はそう言う。

そして、やや力強く刀を鞘から抜いた。
その瞬間、鞘の中が一瞬光ると蓮に目掛けて細い火が飛んでいく。

予想外の事に驚く蓮だったが、避けれない速さではない。
直ぐにサイドステップを一歩踏んで避けた。


「お前さんも…四大の一角を感じ取れるのか。」

「そうじゃぁ。
見ての通り、マロは火を操れる。

お主は…異常な速度からみて風でも操るのかのぅ。」


蓮は直ぐに中腰になり、トンファーを構える。

先程の遠距離は、鞘に収めてからじゃないと発動しないはず…ならば収めた瞬間が勝負。
そんな事を考えていると矢島は、刀を地面に擦り付けながら振り上げる。

ギリギリと嫌な音を立てながら火花が散り、そこから火が生まれ先程と同様に細い火が蓮に向かっていく。


【送り火(おくりび)】


不意打ちなどでは無く、確かな型で出したその技は先程の火とは比べ物にならないくらい速い。
蓮は、驚きつつも右手のトンファーで火を弾き、矢島に向かって走り出した。


余裕の笑みを浮かべた矢島は、再び刀を地面に当てて擦りながら回転する。
ギリギリと再び嫌な音が響く。


【渾沌(こんとん)】


刀の軌道にそって火が矢島を囲んで守るように展開された。
火花から生まれた火だ、大した防御力ではないだろう。

蓮はそのまま、トンファーで矢島を殴るが…火は実態があるかのように固く弾かれてしまった。


「ぬっ…!」


【送り火】


矢島は、そんな蓮の隙を逃さないように自分を守った玄武の火を刀に纏わせて突き出す。
咄嗟にトンファーで軌道を逸らしたが、少し腕を掠ってしまう。

少し掠っただけで、蓮は火傷を負ってしまった。
出血がないのはいいが、刀傷と火傷が同時に起こるのは地味にキツい。
蓮は気休め程度だが、怪我を負った場所に冷たい風を纏わせて痛みを和らげる。


ふざけた口調だが、かなり強い。
どうりで護衛の手練れも倒されるわけだ。

砦が石を基調としてるのは、守りでは無く矢島が戦いやすいようにするためだったのか。
火花は起きやすく、放たれた火が何処かに燃え広がるわけでもない。

そう納得する蓮だったが、決定打に欠ける彼にとって防御に長ける矢島はとても遣り難い相手だった。
剛なら防御ごと矢島を斬りつけられたじゃろうか…。

色んな思考が頭の中を巡ったがいない人間を思っても仕方がない。


「こんな事なら剛と優と一緒に真面目に訓練するべきだっかのう!!」


そんな後悔を口にすると、蓮は深く深呼吸をする。


【塵風(じんぷう)】


蓮は風の力と自分の脚力を合わせて、地面を思い切り踏みつける。
ドンと爆音を響かせると踏みつけた箇所から、蜘蛛の巣のように大きく幅が入り凹凸が激しい床になった。
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