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プロローグ
プロローグ20
しおりを挟む2人のうち、1人が山賊が欠伸を始めた。
蓮は直ぐに吹き抜けから飛び降りて欠伸をしていない方を目掛けて降下した。
風の力も使い、音もなくふわっと着地すると欠伸をしていない方の山賊の顎を殴り奇襲をかけて気絶させる。
そして欠伸で反応が遅れた山賊に右手のトンファーを投げて怯ませると、自慢の脚力で素早く距離を詰めて左手のトンファーで殴り気絶させた。
脳震盪を利用して気絶させており完全に意識がないことを確認すると、手慣れた様子で山賊を拘束して辺りの様子を見回す。
上からだと見えない場所が特にあるわけでも無いことに安堵すると、働かされていた3人を見る。
「これでよし…。
どれ、悲鳴をあげないでくれて助かった。
先日、東野を襲撃した者達から事情を聞いて助けに参った。
話を聞く限りだとここの集落だった者はみんな無事じゃ。
どれ、怪我はないかの?」
蓮は気さくな笑みを浮かべて、3人を見る。
椿より少し歳が低そうな男の子が2人と自分と同じくらいの女性が1人。
悲鳴をあげなかったのではなく、あげる体力も残されていなかったからだろうな。
蓮は、そんな思いを心に留め3人の怪我の様子等をみる。
子供には目立った怪我はないが、女の人には顔に痣があった。
この人は子供達の為に、体を張ったのだろう。
集落の者は無事。
そのことが聞けたからか、意を決したように女は口を開いた。
「…大人達は、動けないほどの怪我は負わされていません。
私たちが大人しく従うことで子供達には、なんとか怪我を負わせないようにしていました。
幸いにも、売りに出された者はおりません。」
水もろくに飲ませて貰えなかったのだろう、声もガラガラと乾いていた。
話の途中だったがまずは水を飲めと、女に促す。
草木に散布する用の水だったがないよりかはマシだろう。
水を飲んで落ち着いたのを確認した後に再び詳細を聞く。
護から分けてもらった砦の見取り図をひらき、女の人に指をさしてもらいながら詳細を詰めていく。
この砦は、集落としてあった長屋を改造したものでゴツゴツとした外見とは裏腹にそこまで大きくないそうだ。
3階建ての建物に見えるが石が嵩張っているため実際は2階。
1階は山賊達の住居スペース。
2階は、無理やり働かされいる女子供の住居スペースと物置。
1階に山賊達がいるのは、女子供が逃げられないようにする為と脱出を容易にする為と考えられてのものだった。
出口から一番反対側にある一番奥の部屋が、山賊の長の部屋だそうだ。
「賢い男が長だと厄介じゃの…。
まずは、頭から抑えるのがいいか。」
蓮はそういうと、ゆっくりと立ち上がる。
そして何かあった時の為に、事が終わるまでこの場で気絶したフリをしているように女子供に指示を出した。
どうせ、ボロボロなのだ無傷で気絶したフリをしていても気づきはしないだろう。
素直に指示に従う子供達に、いい子だと頭を優しく撫でた後に扉から内部に入っていく。
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