11 / 151
プロローグ
プロローグ11
しおりを挟む
「なんで俺がこんな目に合うんだ。
俺が何をしたっていうんだ。」
男の子は、それだけを言うと静かになった。
椿は少し考えた後に、男の子の体を抱きしめる。
大介は少し迷ったが椿が抱きしめやすいように子供の拘束を解いて少し離れた。
「大丈夫、なんとかなるよ。
私も手を貸すから。」
「そんな簡単にいかないよ…。」
椿はまるで赤ん坊をあやすように子供の頭を撫でながら優しい声色でそう言った。
子供は抵抗することも抱き返す事もなく手を力なくブラリと下げ、そっけなくそう答える。
そんなやりとりをしていると、蓮はポリポリと頭を描いて側まで歩いてきた。
土草を払い自分の事を押し飛ばした事に何か言いたそうな表情だったが…息を大きく吐き出しただけてその事には触れなかった。
「簡単にはいかぬが…無理ではない。
戦の時、ワシらは全員を皆殺しにしているわけではない。
捕縛した人間に素性や襲ってきた理由を聞いて…それから処遇を決めておる。
無理やりやらされているのなら、帰るべき場所に帰す。
勿論、ある程度の能力があることが前提じゃが…本人の意思次第ではこちら側の兵士になってもらったりする。
殺される時は殺されるが、負けたら全てが終わりとは限らぬ。
確約できる話はワシの口からいえないが…どうせ死ぬなら後でもかまわんじゃろう。
今まで、苦労してきたからこそ争ってみろ。
ワシも全力を尽くそう。」
そういった蓮は、子供の頭を優しく撫でる。
その後は子供も特に言い返すこともなく静かになった。
大介が村人に現状を伝えたあとに砦に向かって歩き始める。
先頭には大介と蓮。
後ろには椿と剛。
間に捕虜と村人。
捕虜の中には子供は、金髪の男の子しかいないようで椿は彼の手を引いて歩いている。
子供の方は表情がなく下を向いているが、子供の好きな椿は不謹慎かもしれないが少し嬉しそうな表情をしていた。
「まったく緊急時なのにあの娘ときたら…。」
「まぁまぁ、蓮殿。
気の張りすぎも戦では禁物ですから。」
椿の様子に呆れる蓮を大介が宥める。
蓮の心配を他所に城まではあっさりとたどり着けた。
砦から出た姿を見なかった門番の2人は目を見開いて蓮の姿を見たが大介は簡単に経緯を話して砦の中に戻る。
東も護の所も無事鎮圧したようで、客室の入り口前で合流した。
「若、ご無事でなりより!」
「つもる話は後だ。
客席にひとまず民を避難させよ。
そして、拘束した賊達はひとまず民が不安にならぬように地下の牢に集めてそこで話を聞くとしよう。」
先ずは先に民を…そんな事を呟きながら、客室の扉を開くと蓮が隠し通路で撃退した賊達を客席の隅に拘束してのんびりと座ってる優の姿があった。
手には小さな本が握られており、客室に入る皆の姿を確認するとゆっくりと本を閉じて懐にしまい皆がある方へ歩いていく。
俺が何をしたっていうんだ。」
男の子は、それだけを言うと静かになった。
椿は少し考えた後に、男の子の体を抱きしめる。
大介は少し迷ったが椿が抱きしめやすいように子供の拘束を解いて少し離れた。
「大丈夫、なんとかなるよ。
私も手を貸すから。」
「そんな簡単にいかないよ…。」
椿はまるで赤ん坊をあやすように子供の頭を撫でながら優しい声色でそう言った。
子供は抵抗することも抱き返す事もなく手を力なくブラリと下げ、そっけなくそう答える。
そんなやりとりをしていると、蓮はポリポリと頭を描いて側まで歩いてきた。
土草を払い自分の事を押し飛ばした事に何か言いたそうな表情だったが…息を大きく吐き出しただけてその事には触れなかった。
「簡単にはいかぬが…無理ではない。
戦の時、ワシらは全員を皆殺しにしているわけではない。
捕縛した人間に素性や襲ってきた理由を聞いて…それから処遇を決めておる。
無理やりやらされているのなら、帰るべき場所に帰す。
勿論、ある程度の能力があることが前提じゃが…本人の意思次第ではこちら側の兵士になってもらったりする。
殺される時は殺されるが、負けたら全てが終わりとは限らぬ。
確約できる話はワシの口からいえないが…どうせ死ぬなら後でもかまわんじゃろう。
今まで、苦労してきたからこそ争ってみろ。
ワシも全力を尽くそう。」
そういった蓮は、子供の頭を優しく撫でる。
その後は子供も特に言い返すこともなく静かになった。
大介が村人に現状を伝えたあとに砦に向かって歩き始める。
先頭には大介と蓮。
後ろには椿と剛。
間に捕虜と村人。
捕虜の中には子供は、金髪の男の子しかいないようで椿は彼の手を引いて歩いている。
子供の方は表情がなく下を向いているが、子供の好きな椿は不謹慎かもしれないが少し嬉しそうな表情をしていた。
「まったく緊急時なのにあの娘ときたら…。」
「まぁまぁ、蓮殿。
気の張りすぎも戦では禁物ですから。」
椿の様子に呆れる蓮を大介が宥める。
蓮の心配を他所に城まではあっさりとたどり着けた。
砦から出た姿を見なかった門番の2人は目を見開いて蓮の姿を見たが大介は簡単に経緯を話して砦の中に戻る。
東も護の所も無事鎮圧したようで、客室の入り口前で合流した。
「若、ご無事でなりより!」
「つもる話は後だ。
客席にひとまず民を避難させよ。
そして、拘束した賊達はひとまず民が不安にならぬように地下の牢に集めてそこで話を聞くとしよう。」
先ずは先に民を…そんな事を呟きながら、客室の扉を開くと蓮が隠し通路で撃退した賊達を客席の隅に拘束してのんびりと座ってる優の姿があった。
手には小さな本が握られており、客室に入る皆の姿を確認するとゆっくりと本を閉じて懐にしまい皆がある方へ歩いていく。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる