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プロローグ
プロローグ8
しおりを挟む蓮が屋敷の上にある見張り台まで移動して着地すると一斉に弓兵が蓮にむかって弓を引き矢先を向けた。
蓮は、真上から落ちるようにして着地した為に下を見ていた弓兵達の反応がやや遅めではあったが…それを差し引いても素早い対応だった。
蓮も慌てて両手を上げて降伏したような格好をして、声を出そうとした奥の方から東の声が聞こえる。
「まて、敵ではない。
先程話した蓮殿だ、朱雀という…空中歩行のような技を使ってここまできたのだろう。
同じようなに上から攻めてくる敵、外壁を登る敵に備え班を分けろ。
矢と灯りは絶やさぬよう注意しながら、作戦にあたれ。
すまなかった、蓮殿。」
東がそういうと、蓮に矢を向けていた弓兵は一斉に構えを解くと東の指示に従って移動する。
弓兵に指示を出し終わると、東は蓮の元に向かい謝罪をした。
「気にしないでくだされ。
それよりも、お話することが…。」
蓮は、気にしないでとニカッと笑ながら言った後に真剣な表情で今までの経緯を話す。
非常口がばれていたこと。
そこからの賊とは思えない手際の侵入者。
そして、合流した仲間たち。
東は辺りの警戒を怠らずに、蓮の話を聞いた。
そして話が終わり、辺りを見回し終わると考えがまとまったのか顔を蓮に向ける。
「…護殿が向かわれているのはわかった。
兵にここまで案内をさせよう。
蓮殿に東野全域の遊撃を頼めるのであれば、あの方角にある少し大きめの小屋に向かって貰いたい。
小屋の外に大介と…歌舞伎者と女剣士がいる。
3人とも小屋を背にしているから、恐らく民を守るために賊と睨み合っているのだろう。
助太刀を頼めるか?」
東はそういいながら、遠くにある小屋を指さす。
恐らく東の肉体特性が視力はのだろう…蓮には小屋を見つけられたのがやっとで人なんて見えない。
しかし、東には見えているようで人の特徴を言える辺り信頼がおけるものだろう。
「お任せくだされ。」
蓮はそれだけを言うと、直ぐに跳躍して東の指さす方向を朱雀を使い真っ直ぐ進む。
歌舞伎者と女剣士。
間違いなく、蓮の仲間だろう。
二人とも手練で心配はないと思うが…そんな事を考えながら蓮は移動を早める。
東が指さした小屋が近づき人影が見えてくると、聴き慣れた声が聞こえる。
「賊どもぉおお、腕に覚えあるならば…」
話の途中だが、蓮は聞くのをやめた。
そんなので一騎討ちとかを申し受けるのならば、初めからこんな事はしないだろう。
馬鹿でかい斬馬刀を構えている金髪の歌舞伎者は仲間である〝剛〟で間違い無いだろう。
自分で染めた金髪長い髪を全部後ろで束ねて縛り、赤と金のド派手な色の軽装の鎧を見に纏っている。
剛の横に小太刀を両手で握った女剣士がいた。
彼女が〝椿〟で黒髪のポニーテールに肩と胸を守るサポータをつけていて隣にいる剛とは対照的に一般的な格好をしていた。
歳は16歳で、この旅に同行した蓮の娘だ。
剛と一緒であれば無事だと信じてはいたが、無事な姿が見えると蓮は安堵する。
そして2人の視線の先には、自分たちを襲撃した賊が数名。
銃を持っているのもいる賊もおり、民に被害が及ばないように動かないのだろう。
敵は目の前の2人に集中している。
ならば…!
蓮は、袖からトンファーを取り出して降下しながら加速して銃をもつ賊を真っ先に蹴散らした。
隕石が落ちてきたような大きな衝撃と音、土煙は敵の注意を晒すのには十分過ぎるものだった。
蓮はそのまま、他にも銃をもつ賊を優先してトンファーで殴っていく。
勿論、剛と椿もその隙を逃すことはなく他の賊達を蹴散らしていった。
武装がやっかいなだけで、数はいなかった為に文字通り一瞬で賊達を倒した。
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