5 / 151
プロローグ
プロローグ5
しおりを挟む護に賊との繋がりが無く信用できるかどうか…偶然ではあるが一人でいる蓮ににあらかじめ聞いて情報を集めようとしていたのだろう。
「なるほど、東様の考えがわかりました。
しかし…ワシの一言が、東様の期待に応えられるか分かりませぬ。
実際に会われないと…もしかしたら、ワシがもしかしたら偽物で護様の誤報を伝えてお二人をぶつけて消耗させようとするかもしれませんぞ?」
「それはない。
余は…余の見る目と…評価したものを信じる。
其方は、信じるに値する人間だ。」
先程とは打って変わって、堂々とした様子だった。
それ程までに、自分の洞察力や評価した仲間達に自信や信頼があるのだろう。
大介が再び目頭に手をやっているのは言うまでもない。
若いのに涙腺ガバガバじゃのう…。
蓮は心の中でそう呆れたが…東の真剣な眼差しと気持ちを受け止めて気持ちを切り替えた。
「わかりました。
我が主人、護殿についてワシが感じるままの事をお伝えします。
完全なる主観であるゆえ…東様の感じた事と違うかもしれぬで、そこだけはお気をつけて…。」
蓮がそう承諾すると、東は大介に用意してもらった座布団まで移動し蓮と対面するような形で座る。
大介は若き領主を守るために直ぐ後ろで後ろに手を組んで立つ。
二人の聞く準備が終わると、蓮は軽くコホンと咳込むとゆっくりと口を開く。
「あまり長い話は得意ではないので、手短に…。
護殿は…大層穏やかな方じゃ。
争い事を好まず、剣より筆の方を握られる方…。
避難民や貧しいものの手を取り、力では無く知恵で少しずつ領土を大きくきていった方じゃ。
此度は侵略ではなく同盟…きっと力になることでしょう。」
そう話をしていると、鐘の鳴る音が鳴り響いた。
上の方から聞こえるため、恐らく見張り台から響いている。
カンカンカンと素早く鳴らしていることから、緊急事態なのだろう大介は険しい顔をし始める。
「こんな時に…。」
ポツリとそう言う大介だったが、直ぐに東は立ち上がった。
先程の弱々しい雰囲気はない。
「大介、いつものように騎兵隊を指揮して住民の避難を頼む。
既に客人がつかっているが、緊急事態だいつものように客間に集まろ。
途中、いるかもしれない護殿に見落とすな。
発見次第、隊を分けて現状の連絡と手助けを客人に怪我などさせないように十分に他のものにも伝えろ。
余は、見張り台に上がり弓兵の指揮に入る。
頼んだ。」
幼さが残る号令だったが…大介のみならず蓮までも思わず姿勢を正す圧のある領主に相応しい声色だった。
大介は一礼をすると、すぐさまに行動を始める。
「すまない、蓮殿。
奇襲が起きやすい時間をずらして集合していたのだがこんなことになって。
其方はそこにいよ、先祖から受け継いできた東の名に賭けて民と一緒に守ってみせよう。」
それだけを言うと、襖を開けて客間から出て行く。
襖を閉めていったが、彼の号令は響き渡っていた。
住民の避難、兵の割り振り、非戦闘員の使用人のこれからの行動など聞き取りやすく正確に襖越しの蓮でもどの内容も曇らずしっかりと聞こえていた。
そんな号令が鎮まる頃に、蓮の緊張は解かれる。
見くびっていた。
それが蓮の正直な感想だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる