コバナシ

鷹美

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プロローグ

プロローグ1

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他国、〝エルトリア〟から蛮国〝戦(せん)〟と呼ばられようになったこの地域。
違い政治や文明が発達しておらず争いが多い国だ。

利益、他人への被害をより多く多くの排他的な人間性の結果なのだろう。


文明が発達していないため、煉瓦で道が整備されているわけでもなく道に灯などない。

しかし、戦が絶えない為に兵器の発達や流通は優れていて特にコストの低い弓や刃物は護身用のためにどんなに貧しい農民も手にしているくらいだ。
おそらくは、撃退した賊や戦後の死体漁りで手に入れたものばかりだろうが…


エルトリアがこの地域を統治しようとしないのは、この地域の人々の体質にもよるだろうが…武具の技術の発展によるものだろう。

もっとも戦の有権者が手を取り合えば、他の所からの侵略など恐れる事はないのだろうが…。


それをなんとかしようと、その有権者の一人が立ち上がった…!

そんな事を考えながら、歩くやや気崩した茶色い着物の男がいた。


「ちょっと、一服したら逸れるとはのぅ…。
皆はどこじゃ。」


ボサボサの髪、無精髭の40代くらいの男のようでキセルを咥えながら困り果てたようにしていた。

分煙する心がけは大変立派なのだが、それで逸れて困らせてしまうがたまに傷。


己の健脚を呪いながら、彼は目的の場所であろう方向へ進む。
誰もいないことを確認して再びキセルに火を灯し、ケムリを吐きながら散歩のような軽い足取りをしながら。

貧困はあれど自然の豊富さはどの国よりもあると、木々の木漏れ日を浴びながら満足げに自負して頬を緩ます。


自分を含め、仲間達も故郷であるこの地域が好きだ。
好きだからこそ、自分の主人は全ての領主と手を取り合う為の対話というゴールの見えない事を始めたのだろう。



全てとはいかないが、昔から…などという変な格式に囚われた排他的な人間が多いからどれだけ人の話を聞ける人物が多いのだろうか…。

そんな事を考えながら、懐から地図が記された一枚の布を取り出す。


幸い、自分の居場所と目的地は分かる。
これを予期して記した仲間に感謝しながら地図を眺めた。


一番初めは、自分達の住む場所の近くにある〝東野(あずま)〟。

先ほども言ったが、自分たちの目的は侵略などではなく同盟。
彼は無事に目的の領土に着くと、やましい事は無いぞと言わんばかりに堂々と領主の屋敷に足を運ぶ。


領土は小さいものの東野も他と同じようだった。
領主の屋敷を中心にそこから、段々と貧しくなっている。

地形上仕方ないのかもしれないが、田畑はだいぶ外側に追いやられていた。



「賊に作物を盗られやすそうな立地じゃのう…。
ここの主人の采配はいかがなものか。」


やれやれと独り言をこぼしながら、熱が冷めたキセルを胸元にしまう。


東野の境にはいなかった門番は、領主の屋敷の前には存在しており彼は真っ直ぐ門番の元へ歩き出した。
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