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異伝一話
異伝1話 3
しおりを挟むエースはアイクたちをあしらった後に、獣人の拠点に戻る。
「おー、お疲れさン。
お土産は、そこのお嬢様だけかァ?」
「すまんね、ケーキを買ってあげる相手は子供と可愛い女の子だけって決めてるんダ。」
ビール片手にソファーでくつろいでいるシロは、ヘラヘラと帰ってきたエースにそう言った。
完全にOFFモードで、片方の手にはスルメが握られている。
エースは、疲れたようにふぅーと息を吐き出すと、キョロキョロと辺りを回す。
「あれ、じーさんハ?」
「おかえりなさいエース将軍、グラム博士は今…って馬鹿者!
勤務時間はまだ終わっておらんぞシロ!!」
エースの疑問に答えかけてくれたのは、ライトだった。
途中で話を止めて、素早くシロの近くに移動するとビールを取り上げる。
終わってねーのかヨ。
かつてグレーズに致命傷を負わされてはいたがグラムの治療により傷跡も残っておらず元気な様子だ。
「んだよ、頭が硬ってーなァ。
勤務時間はまだ終わってないが、今日の業務の全ては終わらせてるゼ。
このご時世、時間より質だろしーツ。」
シロは、そういうとビールを奪い返すと一気に飲み干す。
その様子にもぉおおと、プンプンとし始めるライト。
別に仲が悪いわけではないが、こう言う時は完全に火と油。
ロキとクロみたいに円満に事を落ち着かせられる奴がいないと何かと面倒だ。
エースは、大きくため息をついた。
「何を揉めているのだ馬鹿者。」
ヤレヤレといった様子でグラムが帰ってくる。
ジト目でチラリとシロとライトを見ると、2人はスン…と大人しくなった。
「おう、帰ってきたぞじーさン。」
助かったぁ…。
内心ホッとしたエースは、そんな胸の内を晒さないようになんて事のないトーンでそう話しながらグラムの側に近づく。
フルフェイスの兜だ表情など分かるまい。
「ご苦労だったなエース。
あとこの馬鹿共が揉め始めたら拳骨の一つでも落としてやれ、将軍の名が泣くゾ。」
バレてーら。
流石、自分の姿を知る数少ない人物だ。
いや、素顔ど知らなくても同じ事を言ってきそうだな。
壁に耳あり、障子にメアリーな獣人だからな隠し事などできはしないだろう。
「とりあえず彼女の容体は落ち着いタ。
ここからは、勿体ぶっても仕方がないから入ってきて貰おウ。
ほら、入って来なさイ。」
グラムは、優しいトーンで部屋外にいるであろうあのドールに入ってくるように促した。
扉をゆっくりと開くと素早くグラムの後ろに移動してくっつく。
「自己紹介を…ってそう言えば名はまだこれからだったナ。
何、怖がることはなイ。
お前に危害を加える物はココにはいないし…いたら私が始末してやろウ。」
グラムは、ドールの頭を優しく撫でながらそう言った。
優しい表情とトーンで、なんて物騒な事を口にするんだよこのジー様。
エースは、そんな言葉をグッと堪えた。
「とりあえず、まずは名前カ。
幸いココは、指折りの獣人が揃っていル。
ナイスな名前なんていくらでもでるだろウ。
ドールちゃんは…まだモジモジしてるから、案のあるやつから挙手してくださーイ。」
エースは、手をパンパンと鳴らしながらそう言った。
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