Nora First Edition

鷹美

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第十三話

第13話 23

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「ニースの部隊の者はいないな?」


「…はっ。
今いるのは、ドグマの案内で連れてこられた者しかおりません。」



聞きなれない声が聞こえる。
声と共に金属が擦れる音も聞こえるから、武装した集団なのだろう。

ナツは、細心の注意を払いながら聞き耳をたてる。



「今のところ、ドグマがインフィニティを回収できなかったこと以外、彼の方の作戦通りだ。
あの間抜けの尻拭いだ、下敷きになっているナツを探し出してインフィニティを回収しろ。

息があったら、トドメをさせ。」


なるほど、コレが目的ならあまり大人しくしている場合じゃないか。

そう考えたナツは自分の周囲にある瓦礫を雑に飛ばして立ち上がった。
油断していた数名の兵士は、ナツの飛ばした瓦礫の下敷きになる。


いざ、自分の目で部隊を確認すると兵士と言うよりかは特殊部隊のようだった。
小さめのヘルメット、目と鼻しかでていない黒い覆面とピッチリとした黒いスーツ。
手足には軽量の鎧のようなものをつけたいかにも特殊部隊といわんばかりの集団だった。




「初めまして、僕はナツ。
君達は…何者かな?」


「ヤレ。」


考えるまでもなくこの事件の主犯格のメンバーなのだろう。
隊長格の1人が短く声をかけると一斉にナツに武器を構えて向かってきた。


「聞く耳なし…か。
話を聞ければ誰でもいい、僕を巻き込んだ主犯格のメンバーだったら手心は加えない。
向かってくるなら、ドグマと同じ目に合わせるよ。」



ナツはそういうと適当な1人の後ろに転移して、頭を掴み握りつぶした。
大量の血の血が噴き出ているが、ナツには一才返り血は当たっていない。



「最後のチャンスだよ。
君達は何者で、なんの目的で僕に敵対するのかな?」


乱暴に掴んでいた人間を投げ捨てながらそう言う。

何人かは短く悲鳴をあげている人間はいたが、隊長の一睨みで静かになる。



「ヤレ。
俺にやられるか、ナツにやられるかの違いだ。」


隊長格がそういうと再び特殊部隊の人間達はナツに向かっていく。

なんてブラックな職場だ。
やはり、1人で働くのが正解なのかなぁ。

ふぅ…とそんな事を考えたナツだったが手加減などはしなかった。
指をパチンと鳴らすと前方にいる敵を怠惰な力で一つに集める。


「恨むなら、そこの上司を恨んでね。」


ナツは直ぐに両手を突き出した後におにぎりを握るような動作で両手を握る。
すると、前方にいる敵達が液体が噴き出る音と硬いものが砕ける音を奏でながら一つに集まっていき最終的には黒い小さな球体に変わってしまった。


「呆気ないね、次は君だよ。」


ナツがそういった時には、隊長格は背を向けて逃げ出していた。
勿論ナツは逃す訳もなく、隊長に手を向けて引き寄せると頭を掴んだ。

脱出されたら面倒臭い。
ナツはヘルメットを直ぐに暴食の力で消して、再び隊長の頭を掴み直す。


隊長は覆面をピリピリと覆面を破って脱出を試みやうとしたが無駄だった。



「君は部下になんていったっけ?
君が僕に殺されるかのどっちを選択させたよね。

だったら君は、僕に殺される選択肢しかないのだけど…なんで逃げたのかな?」


隊長はガチガチを歯を鳴らして震えている。
話せる様子でないのにガッカリしたナツは、隊長の頭に白い雷を流す。


ヒッ…と短い悲鳴が聞こえたが、ナツは無視して記憶が見れるかやってみた。

いや…話してもらった方がいいか。
憤怒の力で感情を操作して隊長の口から情報をきく。


「お前を…狙ったのは物資不足が始まりだ。
ナツの要求する物資だと我々の負担が徐々に大きくなるのは明らかだった。
物資を要求する要因は、犬にあると考えた。
だから、始末した。

大人しくするならよし、歯向かうなら始末する。」


なるほどね。
スタートボタンを押したレコーダーのように隊長は淡々とこれまでの経緯を話す。


こんなあからさまな部隊を使えるのだ。
相当権力のある者だろう。


「最後に、君にそう指示をだしたのは?」


ナツがそう言った瞬間に勢いよく人が入ってきた。
前日にナツが倒した騎士団と森羅万象の部隊だった。


「彼から手を離すのだ、ナツ教授!
これ以上…罪を重ねるな!!」


騎士団長がそういうと、部隊の全員がナツに武器を向ける。


明らかに怪しい男より僕に武器を向けるのか。
ナツはそう思ったが、口には出さずに一旦深呼吸をして口を開こうとすると隊長が正気に戻ったのか急に暴れ出した。


「助けてくれ!!
部下達のように殺される!!」



隊長は情けない声を出しながら、先程ナツに倒された部下達だったものを指差す。



「ナツ教授、その人を話して武装を解除しろ!」


騎士団長は強くナツにそう言う。
その瞬間にナツはプツンと何かが切れる音が聞こえた。


「…ぁあ、そうかい。
僕の話は聞く気にもなれないか。」



ナツはそういうと色々な考えが浮かんでくる。



アステラなどナツの話を聞いてくれそうな主要人物の突然の移動。

常駐している森羅万象の兵士の他に獣人化、神話継承など一般人には過剰な戦略を瞬時に稼働させられたこと。

そして不自然に不在のこの国の主人、ニース。

自分の物資が減って不満をもつ者等。





なるほど…自分等を護るために…下の人間を切り捨てるのか…。

大事な物を踏み躙っても…他の人間の人生を狂わせてもっ!!。


あ…ぁ。


狂わないって言っていたけど…もう無理だ。


犠牲を選んだ業を…身に持って味合うといいさ。
多少なり、覚悟くらいはあるだろ?




ナツは、無慈悲に隊長の頭を握りつぶした。


「ナツ教授!!」


騎士団長は、そう叫ぶと単身でナツに向かっていったがナツの一睨みでピタッと動きを止めた。


「話を聞く姿勢が感じられない以上問答は無用だね。
最後の…実験をしようか。」


最後の実験。
ザワザワと周りが騒めく中、騎士団長は思考を一瞬だけ巡らせた。


そして、人類がされて一番困る事。
まさか…。


「…防壁の破壊。」

「せーかい。」


騎士団長がそう言うとナツは、愉快そうにパチパチと手を叩く。
団長は、そんなナツの態度に握り拳を震わせて怒りを露わにする。



「教授!

それをしたら、どれほどの犠牲がでるのか…貴殿なら分かっている筈だ!

貴殿には、優しさも強さも知恵も備わっていたはずだ!!」


「そんな子供でもわかる事を僕に問いかけてどうするの?
そもそも、その犠牲を防ぐためのファーストサンプルとその量産技術じゃないか。

いい機会だと思うけどね、とっさの連携がとれるかの確認の。

優しさと知恵と強さ?
ハハハ、それは買い被りってやつだよ。」



ナツは、そう言うと周囲に白い雷を撒き散らした後に転移をしてその場を離れた。
一気に飛んだから補足はできる筈なのだが…能力を使われたのか補足ができない。




「アステラの連絡を最優先に他の全部隊とファーストサンプルに伝令をしてくれ!

ナツ教授…ナツの全ての資格を剥奪。
武器を使われるだろうから、捕獲の際に生死は問わない!」


騎士団長がそう叫ぶと、周りにいる人間はすぐに行動を始めた。


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