Nora First Edition

鷹美

文字の大きさ
上 下
167 / 253
第十三話

第13話 13

しおりを挟む
「んで、今日のご飯はすき焼きでしたー。」

「…え…何が?」


サヤは、両手を広げて嬉しそうにそういった。

“んで”の前の意味がよく分からないナツは、パーティ帽子を被らされて中心に座らせらせている。



サヤも腕を組んで胸を張り始めた。


「サヤさんの情報網を舐めては困る。
今日は、ナツの誕生日でしょ?


すき焼きが好きだって聞いたから、こうして祝いにきたのだよ!」

「いや、別にすき焼きが好きな訳じゃないよ?
単にプロフィールで好きな物を聞かれて適当に答えただけ。」



ナツはサラリとそう言うと、面倒くさい程にショックを受けていた。

困った笑みを浮かべたジュリは、サヤの手を引いて自分の隣に座らせる。

一応、向いはナツだ。



「まぁ、祝いたいって気持ちは本当だから楽しんでよ?

好きではないけど、嫌いでは無いんでしょう?」

「…そうだね…。
ありがとう。」


ジュリはニコリと笑って、そういう時ナツは穏やかな顔でそう返事をした。

フォローをいれるのは、本来ならサヤがするべきなのでは?
普段のナツなら一言二言余計な事を言うのに素直に礼を言うのは相当消耗しているようだ。


グレーズは、パンパンと手を叩いて声を出す。


「よーし。
そうと決まったら、酒だ。

あ、クソガキ共はオレンジジュースでも我慢してな。」


「そうさせて貰うよ、オッさん。」


グレーズはビール瓶を開け少しバカにするように未成年組…特にシオを見ながらそう言い、それに対してシオは口をイーっとしてオレンジジュースを口に運んだ。




「てか、酒を飲めるのは3人だけか。」



アイクもグレーズが注いでくれたビールを口にして言う。
成人しているのはアイク、グレーズ、サヤの3人だけ。




「んじゃ、カンパーイ!」

「おっさん、肝臓に気をつけなよ。」

「やかましい。」


サヤの一声でグラスが、掲げられた。
コーダとグレーズのそんなやりとりから会話が始まり、あっという間に時間が過ぎた。


食べた後の回復感が凄い、食事も甘くみてはいけないなぁ。

久しぶりに沢山の野菜や肉を食べたナツは、そんな事を考えながらご馳走様と手を合わせた。


解散の時になりチラリとグレーズをみると酔い潰れており起こしても起きる気配がなかった。
お酒が入ってないコーダとベルが運ぼうとしたが、ナツは珍しく静止する。


「別に、僕の部屋に人を泊めた事が無かったわけじゃないから大丈夫だよ。

まぁ、布団を用意する気は全く無いから風邪をひいても知らないけどね。」



ナツはクスッと笑った。
ゾロゾロと皆が帰るのを確認すると、居間の方に戻っていく。


すると、寝ていた筈のグレーズが起きていた。



「おや、寝ていたのでは?」

「んや、二人で話したい事があってなぁ。
あぁ、勘違いするなよ。

オッさんは、ノーマルだからな。」



グレーズは、座っている状態で手を組んで天井に向かって伸ばす。
ナツは、話したい事と聞かれて首を傾げた後にグレーズの向かいの椅子に座る。


話を聞く姿勢になるのを確認したグレーズは頭をポリポリと掻いて口を開く。


「…あくまで噂だ。
だが、火のない所に煙は立たないって言うからな。

変に話が拡大した状態でお前さんの耳に届くのは嫌だから言わせて貰う。


…ハルが死んだのは意図的なものなのかも知れない。」

「…そんな物は良く聞く噂だ。
そんなのを間に受ける程、まだ僕は疲弊していない。

それでも僕に伝えたいその心は?」


ナツが余裕そうな表情を浮かべるとグレーズは、目つきを鋭くさせる。

この先、一切の冗談や嘘をつかないという現れなのだろう。



「理由は、簡単だ。

…妬みだ。

ここ最近で、お前さんは大分明るくなった。
ベルのしつこい訪問と、姐さん達との交友でな。
本当に良い事なのだが、全ての人間がそれを良く思う訳がない。


…お前さんも知っていると思うが、人間つーのは醜い生き物だ。
自分が知る知識以上の事は知らないし、実感できない。
尚且つ、主観に囚われやすく被害妄想なんて少なくはないんだ。



学者としての地位、能力、そして人間関係。
全てが上手くいっていると思われているお前さんが羨ましいのさ。

そして比較する。
どうして、頑張っている自分とはこんなに違うのか?…っと。


そこから行き着く狂気なんて知れてるよな?
そいつを落とし入れて不幸にすればいいと。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...