Nora First Edition

鷹美

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第七話

第7話 5

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「なっ!」

「でけーレーザーが強い時代は終わってるんだヨ。

気を抜き過ぎだ、ボケ。」


獣鎧は、回転している槍を掴むとそのままB.Kに向かって走った。
アンナも進行を阻止しようとしたが、あっさりと避けられる。

エグザスも、サーベルを持った獣の相手に精一杯だ。


「っぎゃぁああア!!」


突然、悲鳴と共に壁が粉砕する。
槍を持った獣鎧も驚いて、粉砕した壁を見た。



“技の一段  カグズチ ”



B.Kがその隙を逃すわけもなく、直ぐに銃口を獣鎧鎧に向ける。
それに合わせてカプセルも散開。

B.Kが放った火の玉が分裂し、カプセルに当たると炎を灯した。



そして、雨のように細かく沢山の火の玉がそれぞれのカプセルからマシンガンのように一斉に放たれる。



「…まじカ。」

視線を元に戻した時は遅かった。
火の玉は、獣鎧に命中し後ろ側の壁まで押すように飛ばしていく。



“技の四段 タケミカヅチ”




B.Kの攻撃は、終わることなく次の技に繋げ直ぐに大型のレーザーを放つ。



「よそ見するからだよ、バカ。」


剣をもった獣鎧は、槍を持った獣鎧の前に素早く移動した後に剣で光線を真っ二つにした。



「止まれ、止まるんダ!!

ッ!

来るな、こっちに来るなァ!!」


外野にいた獣の叫び声が聞こえたと思ったらグチャッと嫌な音が響いた。
こちらの戦闘がやや激しくなっていても状況が変わらないようだ。




破壊された壁の土煙が晴れると、壁を破壊した人物が見えてきた。

鋭い目付き、程よい筋肉のついたらやや小柄な体つきの男だった。
ボロボロになった軍服のような者を身にまとった黒髪の男だ。


威圧的たが、物静かそうな男が、獣の頭を握り潰しているのだ。
獣は、既に絶命している。



「誰だ、興味本位でオスに狂い桜を投与したのハ!?」

「グラム様が、昔から検証しろようとしたかったことをしたらこうなったんだヨ。
オスに狂い桜を投与したらどうなるカ。

恐らく、我々に対する闘争心や殺意に支配されたのだろウ。
先ほどから、我々の攻撃が効いていないのが何よりの…。」



説明より早く獣は、茶髪の男によって頭を掴まれ力任せに横に投げた。
獣は、瓦礫のようにクルクルと回り壁に激突する。



「オイオイ。
アレってやばくネ?」

「主要研究室が心配ダ。
一旦、退こウ。」



獣鎧達は、直ぐにこの場を離れたがアンナは、暴れまわっている男が気になるようで視線をずっと男に向けている。

“狂い桜”が気になるのだろう。


「救えそうなら救うぞ。
戦力になりそうだからな。」


エグザスがそういうとアンナは、パァっと表情を明るくした後に口を開く。


「今でしたら、私の0段で治癒が可能です!
エグザス様、B.K様、補助をお願いしますわ!」



アンナは、そう言った後に地面が割れる位の力で踏ん張って走る。
途中、邪魔な獣はキーウェポンで殴り飛ばしていた。



「多少の怪我くらいは目を瞑ってくれ。」



“技の3段 ミズチ”





B.Kは、氷の塊をカプセルに当てる。
氷の塊はカプセルに当たると他のカプセルを一本の線で繋ぐように伸びていき一匹の蛇のような形状になった。
氷の蛇は、トグロを巻くように男を締め上げて動きを封じる。



「こンなモので。」


男は、力を思い切り入れてミズチを破壊しようとする。
インフィニティの強化があっても、少しずつヒビが入っていく。

錯乱して手綱が握られていない力でだ。



「とりあえず、落ち着きなさい。」



アンナは、思い切り男の頭を地面に叩きつけて動きを完全に封じるとキーウェポンを当てた。


“心の0段”



昔、自分がやったように狂い桜を限りなく血液に近い水に変える。



成功したのか、男はフーフーと荒ぶっていたが少しずつ落ち着きていき最後には意識を失って倒れた。


〝心の6段〟


アンナは、薬の影響が無くなるのを確認すると今度は怪我の治癒を始めた。
思ったより外傷は無く、あっという間に完治した。



「容体はどうだ?」


「ぇえ、無事に処置できましたわ。
後は意識が戻るのを待つだけ。」


アンナは、聖母のような優しい表情で男の顔を拭く。

男の顔を見たエグザスは、驚いた表情を浮かべる。



「“アステラ”だと…。
今まで行方不明だった男がなんでここに?」


「この方が!?」

アステラの名前を聞いてアンナも驚いた。

しかし、B.Kだけはピンときていないようで首を傾げている。
半分記憶喪失のような人間だったので彼を知らないのは無理もないだろう。

アンナはそういうと、アステラの胸元の汚れをパンパンと手で叩いた後に説明を始める。


「この方は、王様の右腕のアステラ様ですわ。
カナ様と同様に人間の誇る最高戦力のお一人です。

あの痛ましい事件の際に行方不明になっていましたわ。」

「痛ましい事件?」



B.Kがそういった瞬間に再び研究施設が揺れる。
アリエスの戦闘はまだ続いているのだろう。


揺れが治るとエグザスは、アステラを米俵のように肩で担ぐ。


「説明は後だ。
俺たちは、まだ目的を達成していない。

アリエス達がまだ戦える内に、せめて仲間の遺体の所までいこう。」


エグザスはそういうと、急いで主要研究室に向かって走り出した。
アンナとB.Kもエグザスの後を走って追いかける。

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