Nora First Edition

鷹美

文字の大きさ
上 下
48 / 253
第五話

第5話 16

しおりを挟む
「はっはァ!!
感じてんのカ?」



嬉しそうに体を動かすドレッドをよそに、真っ暗になりかけているアンナの脳内で数字が浮かんでいた。



5…25…40…67…。



なんの意味があるのかはアンナには理解できなかったが、構わず意識を手放さないように祈りを込め続けた。



適合率…100%。




アンナがその意味を理解した途端、キーウエポンが壁を破壊してアンナの右手に収まった。


アンナはキーウエポンを握るとすぐに起動させた。


“体の3段”


機械音を響かせてアイク達と同様にアンナの体にキーウエポンから放たれる雷が広がり、彼女の肉体を強化した。



「…っナ!?」


壁が破壊され突然の事にうろたえるドレッドにアンナは渾身の一振りをぶちかました。
ドレッドは、汚らわしいものをさらしながら後ろに吹き飛んでいく。

アンナは足の拘束も破壊し立ち上がると体の不調を鮮明に感じると共に確信を得ていた。


身体の治癒も今ならできると。


心とは本来、肉体の細胞を活性化させ傷を癒すもの。

いくら心の8段でも毒物や失った血液までは治癒できない。
でも、毒物ならアンナは治癒できると思い自分の胸に手を当てる。



“心の0段”


脳内でキーウエポンがアンナに教えてくれる。
アンナの0段は物質の成分の支配。


あの薬品には、水分が入っている筈。
なら、自分の血が多少混ざった今ならあの薬品を限りなく血液に近い物に変えられるだろう。


アンナの体全体が赤い雷で包まれて発光していく。
体から放たれた光と赤い雷が消える頃には、薬物の効果も無くなり激しい痛みと倦怠感が無くなった。

どうやら、無事に成功したようだ。



「なんだ…やるのカ?」

「ええ。
懺悔の時間です。

さぁ、祈りなさい。
貴殿方が信じるものにたいして!!

私が全て…打ち砕きましょう!!!」



ドレッドは、両手に軍事用ナイフをそれぞれ握るとアンナに向かって走りだした。


アンナは、それを待ち構えまえる。
今までに見せなかった…いや、出来なかった鋭い睨みをきかせて。


ボロボロになったスカート、ドレッドによってさらけ出された胸部を隠そうともせず。



「私の信じていたものを全て壊した貴殿方だけは絶対に…絶対に許さない!!」



ボロボロと涙を流したアンナは、ドレッドの攻撃を身体だけずらすようにして避けると腹部にキーウエポンによ渾身の横スイングを当てた。



アンナは再びドレッドを吹き飛ばし壁しに激突させた。
壁を簡単に砕くほどの威力で、ドレッドは壁の瓦礫の下敷きになり意識を失った。



「あのメスを捉えロ!」



ドレッドは気絶してしまったが、他に4体の獣が集まってきてしまった。
そのうち、1体はドレッドを回収して撤退をしていた。


ホープを完全に習得したとはいえ、いきなり複数の相手。


“心の0段”


アンナがそう身構えていると、突然獣の足元が固定されてた。
その様子に獣は思わず足元を見る。


“技の1段”



獣達のその隙を逃さないように、シオの火の斬撃が1体の獣を斬り裂き、直ぐに移動したハゲが残りの2体を斬り裂いた。




「アンナ、大丈夫!?」

「アンナ、遅れてすまん。
今、この場所を安全にする。

モヤシ、アンナの傷と服の修復をやってくれ。」




“心の0段”



シオとハゲがアンナの破壊した入口を遮ると ベルが直ぐにアンナの元に移動した。
怪我の状態を見ると、すぐにベルは服の修復を始める。



「…この様子だと、ホープを習得したみたいだね。
でも、手遅れになってしまってごめん。

でも、もう…怯えさせない。
どしっとハゲやシオによりかかってなさいな。」



“心の0段”



ベルは地面を叩くと、赤い雷を出しながら鍵穴を模した魔方陣を浮かべた。
先ずは、速さ重視の小型の鳥を召喚しアイク達の元に飛ばす。




そして、4体のユニコーンを召喚した。



「やった!
ユニコーンだ!」



建物の一部を削って作ったコンクリートのユニコーンを見て、シオは両手を上げて喜んだ。

ベルは、勢いよくユニコーンに跨がる。



「アンナは見つかった。
アンナが苗床にされてしまった以上、ジュリの身も危ない。


暴れまわってでも、ジュリを救出する。

皆、コイツに跨がって行くぞ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...