Nora First Edition

第五話

第5話 3

痛みが収まったあとに、ゆっくりと手を頭から離したベルは涙目で口を開く。


「アイク…俺が、半病人だって忘れてないか？」

「アイク様、限度がありますわよ！！
神は貴方のそんな行いを見て、天罰を下しますわ。
気を付けてくださいませ。」


アンナは、両手でキーウエポンを強く握り締めて鋭い目付きでアイクを見る。
そんなアイクも呆れた表情を浮かべて、一息ついた後にアンナ達から少し離れた椅子に座った。


「さて、訓練を始める。
ベルは…そんなに暇なら瞑想でもしておけ。

アンナも軽く瞑想した後に、俺と組手をするか。
さて、始めてくれ。」



二人は、言われるがままに瞑想を始めた。
アイクも、瞑想の間は次の作戦の資料に目を通しながら二人の様子を眺めている。



そろそろ次の段階に行こうとしたときに、アイクの視界が反転していた。


アイクは、意味が分からないまま地面に仰向けに倒れる。



「よし、成功だ。」



仰向けになるアイクの視界の中に、ヤスが入ってきた。
何が成功なのか分からないまま、ヤスが差し出した手に捕まり起き上がる。

起き上がったアイクがみたのは、アイクが座っていた椅子をひっくり返すように出てきたコンクリートの小さな出っ張りだった。



「気持ち悪いのが、すこし収まったからさ試しにコーダの0段をやってみた。


まぁ…出来たとはいってもまだ物質の形状を変える程度までが限界っぽいけど。」

「それでも、進歩だ。
めでたいことだよ。

ただ…何故、お前とコーダは俺を実験台にする？」

「お前なら…どんな困難な状況でさえ切り抜けられるし、実験は肌で感じたほうが良い結果が得られるだろ？」



ベルは、アイクに背を向けてそういった。
すべては、これから起こる未来の為と。

アイクも、優しく微笑んでベルの肩を握る。




「やっぱり、お前も科学者の一人なんだな？


…なんて、言うと思っていたか？」



“体の1段”


肉体強化をかけたアイクは、片手でヤスを持ち上げて前に投げる。
その際、握られた肩はメキメキと音を奏でていた。


「いっっってぇ！！」

「ったく、理由はおもしろ半分だからだろ。



…よし。
アンナ、心の練習だ。
ベルの肩を治療してみろ。」



アイクは、先ほどの仕返しをかねてアンナの実験台にするためにベルに怪我を与えたようだ。



だが、いきなりで上手くいくわけもなく結局、痛みが収まって動けるようになったベルが自分自身で治療した。

「そういや、アンナにはキーウエポンの説明ってしたの？」


肩を回しながらそう言ったベルにアイクはゆっくりと口を開いた。
説明はしていないようだ。


「キーウエポンとは、俺が開発者した人類最後の兵器だ。

人類の天敵である獣人。
それに対抗できる能力“ホープ”を発動させることのできるのが特徴だ。


ホープも三種類に分けられる。
細胞を操り傷を治癒する“心〔じん〕”。

体温など体のもつ力の一部を増幅して具現化させる“技〔ぎ〕”。

筋肉、神経をより強靭化させる雷をまとわせる“体〔たい〕”。

これは、人類にそなわる3つの理、心技体からもってきている。


それを最大限に引き立てるよう、キーウエポンの形態も変化されられるようにした。
いや…させるしかなかったんだ。


心を使うための杖形態。

技を使うための銃形態。

体を使うための剣形態。



この形態は、ホープを最大限に引き立てるのに加えてホープを使うのに肉体が堪えられるようにするためだった。




キーウエポンが鍵の形を模してつくられているのは、人類の希望の扉の鍵をテーマとして製造していのもあるが…今あげた3つの形態に変化させやすかったが最大の理由だ。


特化形は、変形しなくてもホープをつかえるようにとしたのがきっかけだ。
一応…成功はしたが、適合者がなかなかでない事と、特化していないホープの出力がやや低いこと位だな。」



アイクは、キーウエポンについてそう答えた。
全部を把握した訳ではなさそうだが、キーウエポンについては何となく理解したようだ。