Nora First Edition

第三話

第3話 7

「マレは、スタミナ無さすぎだろ。
今日は、誰が運ぶんだ？」


「今回は、俺のゴーレムで運ばせるわ。

ついでに、そのまま外の見回りでもさせようかな。」


B.Kは呆れた表情で、マレを見下ろした。
ベルは、そう言うとキーウエポンを起動させる。


“心の0段”


ケンタウルスのような姿のゴーレムを2体作ると気絶したシオとマレを持ち上げると訓練所から出ていき、それぞれの部屋に向かった。


その間、B.Kは羨ましそうに二人を見てる。
ベルはその様子に気がついていたが、黙っていた。

こんなので羨ましいのか、お前は？
そんな事を言った時にめんどくさくなると思ったのだろう。




「ベル、この前の話について相談があるからついてこい。」

「えーどうせ行くなら、乙女の部屋がよかったよ。」




アイクはそういうと、チョイチョイと手招きしながらベルを呼んだ。
途中、文句を言うヤスの声が廊下から響く。



「…そういえば、相談事があるとベルが呼ばれるな。」

「あー。
それは、ノラの生き残りの中で唯一、アイクの科学者時代の助手をしたらだってさ。

もっとも、茶を入れたり思考が行き詰まった時のご意見番ぐらいしかしなかったみたいだけど。」



エグザスの疑問は、ハゲが答えてくれた。
ハゲ本人も、話の話題程度にベルから軽く聞いただけで詳しくは知らないそうだ。


四人は、そんな雑談を軽くした後にそれぞれ部屋に戻っていく。


皆が部屋に戻った頃に、アイクとベルは話始めていた。


「先に、話しておきたいんだけど…。

マレのスタミナ切れに関してだ。
いくら、ホープの使い方が下手だとしてもスタミナが切れるのが早すぎだ。

あくまで予想なんだが、無意識にホープをかけていたんじゃないか？
他でもない、アイツ自身の0段を。


だから、今度から訓練の相手はアイクがしてくれ。
コーダ、アンナ、ハゲみたいに、分かり易いと助かるんだが…B.Kみたいに分かり難かったら困るからな。」


「分かったよ。
って、ハゲの0段については俺も知らないんだが…自身の肉体を傷つける程の身体能力強化でいいんだよな？」



ベルは、そう言いながらコーヒーを入れる。
席に座った時に言われたアイクの問いにコーヒーを飲みながらベルが頷いた所で本題に入った。



アイクは、大きめの地図をテーブルに広げると赤いペンで丸を書き始める。



「次の任務なんだが、この前に潜入したビルの苗床の救出と共にデータの強奪をしようと思う。

この前、フェムトと名乗った獣から地図を頂いてきた。
アイツも方向音痴なのだろう、腰にぶら下がっていたよ。


あの間抜けのお陰で、この作戦ができた。
作戦開始と共にお前はこの丸の所まで移動してデータを奪ってくれ。」


「分かった、やってみるよ。
んで、なんで俺だけに言うんだ？」


ベルは、コーヒーを飲み干してそう言った。
アイクは少しだけ表情を濁らすと、ゆっくりと口を開く。

視線は、キョロキョロと移動している。



「いや。
ゴーレムを使えるとはいっても、今回はたった一人の任務となるから心の準備をしてもらうためだ。」


ベルは、鼻で笑うとゆっくりと立ち上がった。
コップを洗いながら口を開く。

水道の音に消されない程の声で。



「何を今更。
コーダが死んだあの日に、覚悟は決まってたよ。

それでも、遅いくらいだけどな。


まっ。
死ぬつもりはないから、いつもみたいに間抜けな顔でもしてな。」



ベルは、そう言うとゆっくり扉の前に移動して振り向いてニカッと笑った。



「ったく、間抜けな顔は余計だクソガキ。」


アイクは、呆れた表情を浮かべてそういった。
右腕をヒラヒラとさせながら。


その様子を見たベルは、満足そうな笑みを浮かべて部屋を出ていった。