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新婦志津子の章

第2話 新郎竜治の生い立ち

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(これまでのあらすじ……)

華やかに披露宴の幕が切って落とされました。祝福のBGMと歓声をバックに、幸せに包まれた新郎新婦が入場してまいります。定番の司会者の挨拶の後、それは唐突に始まりました。今回は、わたし自ら、披露宴をプロデュースさせていただきます。

**********

 司会者として、わたしの最初の仕事が始まりました。いよいよ、わたしがプロデュースする結婚披露宴の開幕です。

 静まり返った披露宴会場、これからの楽しいひととき、招待客はみな、わたしのひと言ひと言に謹聴することでしょう。

 招待客の目の前に置かれた披露宴パンフレットの式次第のスケジュールを書いた文字が一瞬にかき消すように焼失し、次いで一行目の文字が浮かんできます。

『新郎・岸田竜治様の生い立ち』

 真っ白な厚めのパンフレット冊子の『式次第』の中に、突然、文字が浮かんできたのです。

(な、なにこれ、……手品? )

(これから何が起きるというの! )

 招待客の疑問をよそに、まずは恒例の、新郎新婦の生い立ち紹介から始めてまいりましょう。

「ではまず、本日の主役であります新郎新婦様のご紹介から始めさせていただきます。不肖、わたくしが、特別に作製・編集いたしました映像と共にご覧くださいませ。」

 会場から、なぜか拍手が沸き起こります。

(か、体が勝手に! な、なんで! 誰か、誰か助けて! )

(な、なんだこれは! いったい、どうなっているんだ! なんで拍手させられて……)

(司会者はしゃべれるのか! 俺たちを助けてくれ! この状況が分からないのか! )

 混乱する招待客の心の叫びには関係なく、わたしは淡々と司会進行を進めます。招待客達の頭の中の阿鼻叫喚とは裏腹に、会場内は深閑とした森の中のように静まり返っています。

 そのような中、新郎新婦の後方上部に、巨大なスクリーンが天井からスルスルとおりてきました。

 スクリーンが背後にある新郎新婦も映像を見られるように、新郎新婦正面のテーブルからモニターが立ち上り起動し始めました。

 会場の照明が再び暗く落とされ、軽やかな音楽のBGMのもとで、新郎の生い立ちの上映が始まりました。
  
「新郎の岸田竜治さんは、小学校5年生の夏、人生で初めての精通を経験いたしました。場所は、体育で水泳授業中のひと気のない教室の中でした」

 そこに映し出されたのは、小学生時代の幼い新郎? の姿でした。少なくとも、家族・友人の記憶の中にある新郎の少年時代の容貌を思い起こさせるに足る顔立ちには間違いありません。

「アイテムとして竜治少年が御使用されましたのは、学年の中でも可愛らしいと評判の、佐藤奈緒子さんのパンティーとブルマでした。」
  
 その少年は、教室の一角のある机の陰で、女子の濃紺ブルマの匂いを嗅ぎながら、可愛らしいキャラクタープリントの綿パンティーで、小さなオチンチンをしごいている様子でした。

 映像はそんな少年のあられもない姿を、しっかりと記録していました。

 頬を真っ赤に火照らせた顔、荒い息づかい、止まらない右手の上下の躍動……、

 カメラはそんな可愛らしい小学生のひとり遊びの模様を、余すところなく、冷徹に事実を切り抜いてフィルムに収めています。

(なに! このビデオ! なんでこんな変な盗撮ビデオを流しているの! )

(え! マジでこれ、竜治のガキん時のかよ! )

(なんで、こいつ、こんな近くで撮られてんのに分からねぇんだよ! どうせヤラセだろ! )

(悪質な再現ビデオじゃねえか! こんなの、すぐに止めさせろ! )

(もう~わけ分かんない~! パパ~、助けてよ~! うううっ……)

 少年のオチンチンはまだ可愛いつるりとした皮に包まれていました。少年の上下動により引きづられた皮の中に、縦にパックリと割れた尿道口が僅かにのぞいています。

 そして、アップになって画面いっぱいになったモザイクなしの竜治の包茎オチンチンから、遂に白いどろりとした液体が噴出しました。

 そんな様子までもが、しっかりと映像に捉えられていたのです。

 皮に遮られて勢いよく飛んではいきませんが、その放出の音まで聞こえそうにリアルな射精の瞬間でした。

 更に映像は、初めての射精に驚いて、うろたえ青くなる少年の姿までをも克明に記録しているのでした。

(いや~! やだ~! こんなんなの~! )

(え! なに、なに、これ、ほんとなの? )

(なんで、野郎のオナってんのを見せられなきゃいけねぇんだよ! )

(司会者! 変だろ! 止めろよ! )

 ……そして、射精により急速に減退した性慾の末、証拠隠滅のために、白い謎の液体を拭き取る少年の姿までも……。

 まるでそれが、青春時代の当たり前の微笑ましいヒトコマででもあるかのように、軽快なBGMに乗せて……。

(悪い嫌がらせよね、いたずらでしょ、そうだよね、でも、ドッキリにしてもひどくない! )

(作りもんに決まってる! 祝いの席をぶち壊しにするなんて、誰が! なんでだぁ! )

(にしても、なんで体が動かねぇんだよ! 集団催眠でもかけてんのか! 笑えねぇぞ! )

(もお、やだぁ! おうちに帰りたいよお! )

 一体、どうやってこのような映像が作られたのか? 画面の中の少年は、間違いなく新郎の幼い時の容貌そのままです。参列者の疑問と驚愕をよそに、映像はどんどん進行していきます。
  
「……これがきっかけとなり、新郎・竜治さんは、中学・高校と、同級生の下着や制服でオナニーをするようになりました」

 そんなナレーションとともに、次第に成長して身体も大きくなった新郎が、様々なオカズでオナニーをしているショットの画像が、映像の中で次々に切り替わります。

「育ち盛り、いえ、オナニーを覚えた10代の性欲は、猿並とも申しますが、新郎の竜治様も、それはもう激しくたくましいご様子ですね♪ 」
  
 映像は、同級生の親友には見覚えのある学校の教室や更衣室、部室でオナニーをする姿や、深夜に下着泥棒する姿を、容赦なく克明に映し出していました。

(ま、まさか……あれ、中学のクラスじゃね? )

(ここ、俺らの高校じゃなくね? まさか、立て直す前の木造校舎? )

 この映像が真実か作り物か、それが明確に判断できることが出来る者は、この会場では唯一、ひとりだけしかいません。

 その人物は、今この時、その映像にわなわなと震えていました。しかし、その彼にしても、相変わらず身体は動かず、ここから逃げ出すこともかないません。

(な、なんで、あんな物が……なんで、いつの間に……終わりだ、もう、何もかも、おしまいだ! )

 ……その後も、大学時代のソープランドでの童貞喪失、大学時代に付き合った彼女からセックスが下手くそだとなじられた様子と、新郎の青春のエピソードが次々と披露されていきます。

 その後のただれた性欲の発散ぶりなどが、わたしの丁寧なナレーションと共に映像に映し出されていきました。

(ほ、本当に竜治くんが、こんなことを……)

(なんだよ、だからなんだよ! ちくしょう! 誰でも良いが、いい加減にしろよ! )

 かくして、様々な新郎の恥部が満座の中であらわにされていったのであります。

 身体の自由がきかぬながらも、視覚と聴覚、そして意識はしっかりと保っている会場の参列者全員が、新郎の恥部を余す所なく認識しました。

 勿論、新郎の両親も、そして新郎自身も……新郎は顔を真っ赤にしながら、何もできぬまま、さらし者の立場に置かれていました。
  
「長南家の皆様、どうぞご安心くださいませ。さすがの新郎様もお嬢様に対しては、まだいたってノーマルですわ。」

 しかし、わたしは新郎の趣味嗜好の傾向も補足することを忘れませんでした。

「もっとも、コスチュームを着せた上で、縛ったりするのが、本当はお望みのようですわね……」

 満面の笑みをたたえながら、わたしはそのような言葉で、新郎の生い立ち紹介を締めくくりました。

 新郎新婦のなれそめのエピソードもないまま、新郎紹介のビデオ映像は終わりました。次はもちろん、会場のご招待客の皆様がお待ちかねの新婦のご紹介となります。

**********

(おわりに)

まずは新郎の生い立ち紹介です。新郎が小学生の頃に、同級生の女子の下着にイタズラして初めて精通を体験してからの恥ずかしい自慰生活に始まり、初体験から自分の趣味嗜好までをも暴露されてしまいます。
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