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新井宏の章

第1話 新井宏くん

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(はじめに)

 今回は、下着泥棒をしてしまった、ある少年のお話しをご披露いたします。お楽しみいただけたら幸いです。

**********

 月がこうこうと街の中を照らしている夜でした。とある地方都市の田舎街、その深夜の町中を一人の少年が歩いています。

 少年には、ある目的地があるようで、真っ暗な住宅街の中の路地を、早足で迷うことなく、くねくねと突き進んでいきます。そして、公園の隣のとある家の前に立つと、しばし中を伺っている様子でありました。どうやら、そこが少年にとっての目的地であったようです。

(はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……)

 少年は、その家の前にたたずみ、何を思っているのでしょう?

*********

「ヒロシ、ご飯粒が付いているぞ!」

 中学の給食終わりの昼休み、幼馴染の奈津美が、新井宏の唇の右下に付いているご飯粒をつまみました。

「やめろよ、奈津美」

 奈津美の指先が自分の唇のすぐ下に触れたことに驚いた宏は、奈津美の腕を振り払います。

「なによ、今更、一緒にお風呂も入った仲でしょ!」

 そう笑顔で言うと、奈津美はつまんだご飯粒を自分の口に運び、ぺろりと食べてしまった。宏は、それを見て真っ赤になりつつもドキッとしてしまいました。

 ふたりは幼稚園からの幼馴染、宏は照れているのか、腐れ縁だと友人には強弁していますが、それこそ幼稚園のころはふたりで風呂に入って、素っ裸で水遊びをしていたものでした。まるで兄弟姉妹のように育ってきたのでした。

 それがいつからでしょう?宏が奈津美を異性として認識してしまい、無意識にガードを強めてしまいながらも、奈津美に対する恋慕の情念が次第に膨らんできてしまうのです。

 奈津美はいつもそうです。

 宏の気持ちなんかには気づきもしないで、夏の体育の授業ではスクール水着を着たまま宏の背中にダイブしてきたり、上半身に薄い夏のセーラーブラウス一枚の姿で平気で宏におんぶして来たりします。

 いかに中学生とはいえ、膨らんできた奈津美の胸の感触で宏が顔を真っ赤にしても、奈津美はまったく頓着しません。

 それがいつからだったか……、宏はふと思い出します。それはふたりが小学校を卒業してまもなくのことでした。

**********

 ある日、宏の母親が宏を連れて買い物に行った帰り、奈津美の母親のところに遊びに行きました。当然、宏も2階の奈津美の部屋でいつものように遊んでいました。

 ふたりでやっていたテレビゲームにも飽きて、宏は、読みかけだった奈津美の持っているコミックを読み漁っていました。最初は奈津美も一緒にコミックを読んでいたのでしたが……。

「……ん?……ば、ばか!奈津美、おまえ、なにやってんだよ!」

「あ、宏、ちょっと待ってて。もうちょっと……よいしょっと……。ジャ~ン!どう?似合ってるかな?」

 奈津美は新しい中学のセーラー服を着て宏に見せます。しかし、その着替える前に、奈津美は普通に宏の前でスカートやシャツを脱いで、平気でスリップ姿からセーラー服に着替えをしていました。

 真っ白いジュニアスリップですが、純白のワンピースにも似ているものの、裾のレース模様や体のラインが透けて見えるようなその薄さと光沢が、下着であることを宏には強烈に印象付けられて、これ以上ないほどに、宏は心臓をドキドキさせてしまいました。

「ほら、どう?かわいい?なんだか、ちょっと大人になったみたいな気分だよね。」

 生まれて初めて着るセーラー服に奈津美は嬉しそうにしています。

 そのセーラー服は濃紺の生地にセーラー襟と袖口に緑色の二本線が付いていました。セーラー襟には中学生らしく胸当てが付いています。そして、そのセーラー襟を留めるのはスカーフではなく、共布のタイをセーラー襟の裏側でボタン留めしている様式を取っていました。

 そして、くるくると回る奈津美の濃紺のプリーツスカートが、たっぷりの空気をはらんでふんわりと膨れ上がります。すると、スカートの中の純白のスリップもまた、裾のレースを美しく翻して、一緒に美しく膨らみ回ります。

 それを目の前で見ている宏は、言葉にも出来ぬままドキドキと見つめるだけでした。今まで何度も見ていた小学生の奈津美のカラフルな可愛いスカート……それとはまったく雰囲気の違う、なぜか何歳も急に大人になったように見える濃紺の上下。そして、裾からチラチラと見え隠れするレーシーな純白のスリップ。

 それが初めての、宏のセーラー服との出会いでした。

……そんな風に男を男とも思わない奈津美の無邪気さは、宏にとって拷問以上の何物でもありません。そして、そのように幼馴染を女性として見るようになってしまった宏は、その時の奈津美の姿により、ずっとその後のフェチなトラウマを形成してしまったのでした。

**********

 しかし、中学時代はまだ淡い恋慕の情で済んでいたのですから、それだけで良かったのかもしれません。

 奈津美とは別々の高校に進学した宏は、高校が始まって間もなく、母親の用事で奈津美の家に届け物をした時、奈津美の家であるものを見つけたのです。

「あら、宏くん、ありがとうね。お母さんから頼まれたのね、ごめんなさい。……奈津美はまだ帰っていないけど、上がってお菓子でも食べていかない?」

 奈津美の母親も、奈津美の親だけあってなかなかの美しいおばさんでした。まだ三十路半ば過ぎの成熟した美しい女性です。しかし、さすがに宏でも、奈津美のお母さんに性的な興奮を感じることはありません。

 それに、奈津美もいないのに、勝手知ったるとはいえ、さすがに家の中に上り込むようなことはありません。もちろん、奈津美がいたとしても、もう二人で遊ぶような歳でもありません。ふと、考えてみれば、中学生になってからは奈津美の部屋に上り込んだ記憶もありません。

「いえ、大丈夫です。お袋の用事だって、ぼくもこのまま出かけるから、そのついでだったので。」

 そう言うと、少年は丁寧にお辞儀をして、奈津美のお母さんの笑顔を残して、家の玄関のドアを閉めました。

 しかし、玄関を離れ、自分の用事に行こうとしたその時、少年の視野にあるものが入ってきました。それは、あの中学の時の奈津美のセーラー服でした。

 古着として処分すべく、たたんで重ねられた制服は、他の衣類とともに、紐でしっかりと十字結びにされて、古紙古着の収集日に出す準備をして、奈津美のお父さんの車の車庫の奥に置かれていたのです。

 宏はその日、あの古着の衣類束のことがどうしても頭から離れず、悶々としていました。そして、その日の夜になって、家族も寝静まった深夜、遂に宏は決心したのでした。

 その日の深夜、宏は真夜中という異常な時間に初めて奈津美の家に行き、そして昼間に確認した古着の山の中から、奈津美の制服を抜き取って持ち帰ってしまったのでした。

 その時、宏が抜き取ったのは、奈津美が三年間の着古した濃紺のセーラー服と、夏の白いセーラー服、そして濃紺のプリーツスカートの一式でした。

 家に帰り、奈津美の制服の匂いを嗅ぎ、セーラー服の裏側のポリエステルサテンのツルツルした裏地に顔をうずめ、奈津美の匂いを探し求めます。また、テカテカとした年季の入ったテカリを放つプリーツスカートの顔を何度もうずめました。

 そして、その時の宏の脳裏には、制服姿で楽しそうに跳ね回る、中学の制服を着た奈津美の姿を思い浮かべます。

 その夜、宏は何度も何度も自分の精を放ちました。そして、朝までろくに睡眠も取らずに、ずっと奈津美の制服を抱きしめながら、その行為にふけり続けていたのでした。

 それが、彼の行った、許されざる『行為』の最初でした。

**********

(おわりに)

 少年には幼馴染の少女がいました。そして、いつしか、その少女に対して少年は恋心をいだいてしまいます。しかし、高校進学を控えたある時、少年は少女の車庫で古着として処分される少女の中学時代の制服を見つけてしまい、それを持ち帰ってしまったのでした。
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