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三章 サキュバスが帰ると言い出して。

第24話 作戦継続!

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 二


「僕もいつかは和歌集に選ばれるだけの歌を書きたいなぁ」

放課後、最終下校時間までみっちりと古典のイロハを詰められた僕は、すっかり和歌愛好家になっていた。今ならきっと老人の歌会にだって混じれる。帰ったらまずは季語のインプットだ。そう意気揚々として校門を出たのだが、

「もう和歌なんて一生やるもんか、散々だよ全く!」

百メートルもすれば、意欲もなにもなくなっていた。

「なんだかゲッソリしてますね」

少し前を歩いていた結愛が、鞄を膝で抑えて、こちらを振り返る。単に目の保養になった。全てが若く、そして瑞々しい。

「そりゃあそうさ。まさか五十路を奔走する教師に迫られるなんて。職権濫用も甚だしいよ」

ついさっき、間近に見てしまった肌の荒いキメ、唇のカサつきに比べたら、尚更だ。

「でもそもそもは、ご主人様が招いた事態ですよ。召喚キャラを使った作戦なんて。私は止めましたし」
「うっ、……いけると思ったんだよ。成功してたら、それこそ告白できたと思うんだ」
「リスクを背負いすぎです。澄鈴さんに嫌われてた可能性だってあったんですよ」

危険は付き物だろう、一発逆転の秘策なのだから。

「正攻法でもよかったんじゃないですか。飛び道具に頼らなくても」
「それって印象アップ作戦のこと? それだけってほど、悠長にはいられないよ」

なにせあと五日。土日も含んでいるから、自然に澄鈴と接触できるのはあと三日しかない。
進歩はあるとはいえ、もっと一足飛びに成果を上げたくもなる。

「まだチャンスはありますよ。金曜日のクラス会なんか、ちょうどいいのでは? 一気に男として意識させちゃいましょう。それから思いをそのままに、愛の告白を!」
「え、なにそれ」
「なにって愛の告白、ですか? うーん、たとえば」
「いやいや。じゃなくて、そのもっと前」

クラス会だなんて、

「あら。もしかして誘われてないんですか」

初耳も初耳だった。

「ボーリング場でやるみたいですよ、吉田くんが主催で」

またあいつかよ! 僕を目の敵にしやがって。

「でも今日あたりお誘いあるんじゃないでしょうか。なにせ吉田さんは今ご主人様にゾッコンですから」
「嬉しくないなぁ」
「キューピット作戦、ある意味成功ですね、ふふっ。懲りましたか? なら明日からはちゃんと」
「ねぇ結愛、まだ別のキャラも召喚できるんだよね」
「えぇ、できますが。ご主人様もしかして」

うん。その、もしかして★。
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