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1章
12話 王子と店番をしていたら……招かざる客?
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またある日などは、二人でアイテムショップの番をすることもあった。
母が付き合いで不在にしており、私は出勤せざるをえなかったのだ。
悪いけど、エリゼオにはうちの屋敷でまったりしていてもらおう。
そう考えていたのに、エリゼオは変装まで完璧にやって、むしろ自ら役割を買って出てくれる。
「別にどこかで女と会っているという事実が大事なだけですから、手伝ってくれる必要はないですのに」
「いいんだよ。手は空いていたからね。それに、こういう営みには興味もあったんだ」
「なるほど。王家だとこんなことは絶対しませんもんね」
と、私が言いながらやっているのは商品の補充作業だ。
その一部である魔石水晶や、ドラゴンのテイル、回復ポーションなどは一プレイヤーだった時から馴染みがあった。
『黒の少女と白王子』では自分でアイテムを組み合わせることで衣服を作ったり、武器を作ったりすることもできたのだ。
それがストーリー進行上、確実に必要となる場合もあって結構苦しめられた覚えがある。
そうそう、とくにこの白水晶の腕輪!
なんでも聖なる力で、魔物などの穢れた存在を退ける力があるとか。
これをヒーローから、というかここにいるエリゼオから愛の証として貰ってないと、次にいけない場面があるのよねぇ。
化粧箱の裏に貼ってあるらしい値札を、そろぉーっと覗いてみる。
「……わお」
200万ペリー、円に置き換えても、そのまま200万だったはずだから、うーん恐ろしい!
そりゃあリーナも自分じゃ買えないわけね。
私は大事に大事に、それを元の位置へと戻した。
「なんだ、アニータさん。それが欲しいのかい?」
「えっ、いやいや、そういうわけじゃありませんよ!」
とんでもない。
買ってあげるなら、私みたいなモブにではなく、リーナ嬢にどうぞである。
「それだけ繁々眺めておいて、なにを言うんだ。たしかに、これはいいものだね。この店に置いてあるものの中では一番高価なものか?」
「たぶんそうですね。売れたらきっと、父も母も喜びますよ。しばらくはないでしょうけど……そうだ! いつか好きな人でもできたら、買ってあげてくださいな」
我ながら、いい誘導ではなかろうか。
私がシナリオの一部は変えてしまったけれど、いつか本筋の話に戻る時の伏線にもなる。
しかも、アイテムも売れて二者両得だ!
「ふっ、いいことを言うね。じゃあ、それをキープしておこう。きっといつか売上に貢献しよう」
「本当ですか! さすが王家ですね、ありがとうございます」
セールストークがばっちり決まって、含み売上は一気にかなりの額になる。
そんなふうに和気藹々とやっていたのだけど、それは唐突に壊されることとなった。
「邪魔するよ。ハンッ、まじで店番してるじゃねぇかアニータ」
望まれざる客が店にやってきたのだ。
元婚約者ディエゴ・オルシー、その人である。
目的を問いかけるまでもなく、彼はヘラヘラとした顔で勝手に語り出す。
「自分の選択が正しかったことを確認しにきたんだ。おめぇみてぇな奴は婚約破棄して正解だった、ってな。実際、今まさに痛感してる。商店の店番をやるような下賎な姿を見てな。ハンッ」
うわぁ、器小せえなこの男……!
いらぁと怒りが込み上げるが、私はこめかみに皺を寄せて、ひっそりため息をつく。
「なんだ、そのしょぼくれた男は。もうエリゼオ王子のことは諦めたのか、アニータ。ハンッ、ま。土台無理な話だろうがよ」
……まぁ、この人がエリゼオ本人なんだけどね? 化粧やら帽子やらのおかげで、気づいていないみたいだ。
ただまぁそんなことは言えるわけもないし、挑発に乗ったら負けだろう。
このままやり過ごそうと思ったのだけど、
「どこの誰だか知らないが。それ以上、彼女を悪く言ったらただじゃおかないよ」
よもや。
エリゼオが私の代わりに喧嘩を買ってしまった。
母が付き合いで不在にしており、私は出勤せざるをえなかったのだ。
悪いけど、エリゼオにはうちの屋敷でまったりしていてもらおう。
そう考えていたのに、エリゼオは変装まで完璧にやって、むしろ自ら役割を買って出てくれる。
「別にどこかで女と会っているという事実が大事なだけですから、手伝ってくれる必要はないですのに」
「いいんだよ。手は空いていたからね。それに、こういう営みには興味もあったんだ」
「なるほど。王家だとこんなことは絶対しませんもんね」
と、私が言いながらやっているのは商品の補充作業だ。
その一部である魔石水晶や、ドラゴンのテイル、回復ポーションなどは一プレイヤーだった時から馴染みがあった。
『黒の少女と白王子』では自分でアイテムを組み合わせることで衣服を作ったり、武器を作ったりすることもできたのだ。
それがストーリー進行上、確実に必要となる場合もあって結構苦しめられた覚えがある。
そうそう、とくにこの白水晶の腕輪!
なんでも聖なる力で、魔物などの穢れた存在を退ける力があるとか。
これをヒーローから、というかここにいるエリゼオから愛の証として貰ってないと、次にいけない場面があるのよねぇ。
化粧箱の裏に貼ってあるらしい値札を、そろぉーっと覗いてみる。
「……わお」
200万ペリー、円に置き換えても、そのまま200万だったはずだから、うーん恐ろしい!
そりゃあリーナも自分じゃ買えないわけね。
私は大事に大事に、それを元の位置へと戻した。
「なんだ、アニータさん。それが欲しいのかい?」
「えっ、いやいや、そういうわけじゃありませんよ!」
とんでもない。
買ってあげるなら、私みたいなモブにではなく、リーナ嬢にどうぞである。
「それだけ繁々眺めておいて、なにを言うんだ。たしかに、これはいいものだね。この店に置いてあるものの中では一番高価なものか?」
「たぶんそうですね。売れたらきっと、父も母も喜びますよ。しばらくはないでしょうけど……そうだ! いつか好きな人でもできたら、買ってあげてくださいな」
我ながら、いい誘導ではなかろうか。
私がシナリオの一部は変えてしまったけれど、いつか本筋の話に戻る時の伏線にもなる。
しかも、アイテムも売れて二者両得だ!
「ふっ、いいことを言うね。じゃあ、それをキープしておこう。きっといつか売上に貢献しよう」
「本当ですか! さすが王家ですね、ありがとうございます」
セールストークがばっちり決まって、含み売上は一気にかなりの額になる。
そんなふうに和気藹々とやっていたのだけど、それは唐突に壊されることとなった。
「邪魔するよ。ハンッ、まじで店番してるじゃねぇかアニータ」
望まれざる客が店にやってきたのだ。
元婚約者ディエゴ・オルシー、その人である。
目的を問いかけるまでもなく、彼はヘラヘラとした顔で勝手に語り出す。
「自分の選択が正しかったことを確認しにきたんだ。おめぇみてぇな奴は婚約破棄して正解だった、ってな。実際、今まさに痛感してる。商店の店番をやるような下賎な姿を見てな。ハンッ」
うわぁ、器小せえなこの男……!
いらぁと怒りが込み上げるが、私はこめかみに皺を寄せて、ひっそりため息をつく。
「なんだ、そのしょぼくれた男は。もうエリゼオ王子のことは諦めたのか、アニータ。ハンッ、ま。土台無理な話だろうがよ」
……まぁ、この人がエリゼオ本人なんだけどね? 化粧やら帽子やらのおかげで、気づいていないみたいだ。
ただまぁそんなことは言えるわけもないし、挑発に乗ったら負けだろう。
このままやり過ごそうと思ったのだけど、
「どこの誰だか知らないが。それ以上、彼女を悪く言ったらただじゃおかないよ」
よもや。
エリゼオが私の代わりに喧嘩を買ってしまった。
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