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梨色のキス
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ポスターの色校正に隅々まで目を走らせ、西野素子は大仰に首を傾げた。
「うーん、なんだかまだ微妙にイメージが違うんですよね」
また駄目か。
毎度要領を得ない西野の駄目出しに、侑介は内心で深く溜息をついた。
相手は得意先の飲料メーカーのPR担当だ。苛立つ心を深呼吸で制御して、最大限丁寧な口調を作る。
「前回ご指摘いただいた梨の果実感については、色味を明るくして水滴の効果を加えたことでよく表現できているかと思うのですが」
「それはそうなんだけど、なんていうのかしら、ちょっと生々しくなりすぎっていうか。これじゃあ、アメリカのチューインガムのCMみたいですよね」
曖昧な言葉を操りながら、西野はポスターに印刷された梨を指さした。濃いピンク色の爪が果実の輪郭をなぞっていく。
「もっと自然で柔らかい色合いでかつ瑞々しさがほしいんです」
「柔らかく、ですか。ただ、これ以上梨の色を薄くすると背景に負けてしまうんですよね」
「でしたら、いっそ背景の色を変えてしまっても構わないわ」
「しかし、背景は自然の畑の風景をということでしたので、あまり色調を変えるわけには」
堂々巡りの会話に侑介はテーブルの下の拳を握りしめた。
これで4回目のリテイクだ。発注先の印刷工場の営業にまた頭を下げなければならない。
「なんでもっと相手の意向を具体的に確認してくれないんですか。これではうちも採算が取れなくなりますよ。うちは零細なんでね、安い仕事を大量に受けてなんとかやってるんですから。いつも仕事をいただいて有難いんですが、ここまで無茶を言われると職人の連中も、ほら、あれなんですよ」
3回目のやり直しの時、こっちだって忙しいんだと言いながら1時間以上もぐちぐちと不満を垂れ流された。またあれを聞くことになるかと思うと気が萎える。いっそ怒鳴られた方がマシだった。
既に第4稿だ。なんとかこれで了承を貰いたい一心で抵抗を試みるが、西野は首を縦には振らなかった。テーブルの上で両手を組み、西野は侑介を見据えた。
「佐田さん。何度もお願いして申し訳ないとは思っています。ですが、弊社としても力を入れている新製品なので、妥協はしたくないんです。120%満足できる広告を打ちたいんです」
「はい。それは勿論です。弊社としても精一杯努力させていただきますが、印刷所の方の限界もありますので」
「この梨のリキュールは、働く女性が仕事で疲れて帰った後、家でオシャレなお酒を簡単に作ってリラックスタイムを楽しむ、そういうイメージで開発しているんです。その観点でポスターデザインも自然や癒しを感じられるものにしています。この梨、本物そっくりですが本物すぎるんです。もう少し、理想の梨に近づく色合いをお願いします」
一見プロフェッショナルな姿勢を述べているようだが、だったらもっと具体的に指示をしてほしい。侑介は分かりましたと答えて、色校をケースに仕舞った。
その日は散々だった。
印刷所で愚痴を聞き、帰社して上司に説教され、残業で終電を逃しタクシーはなかなか捕まらず、夕飯調達に寄ったコンビニはチルド製品が売り切れだった。
精も根も尽き果ててアパートに帰ると、玄関前に置き配の荷物があった。
鳥取の実家からだ。「たまには帰ってきなさい」と段ボールに直接メッセージが書かれている。雑だ。
開封すると、牛骨ラーメン、カレーのスパイス、そして梨が詰まっている。梨。今一番見たくないものだ。ラーメン一袋だけを取り出して、侑介は段ボールの蓋を閉じた。
久々に食う牛骨ラーメンは美味くて心に沁みた。
就職してから丸3年。実家には一度も帰っていなかった。
典型的な地方都市の両親とはたまに電話をしているが、やれ出世はできそうか、ちゃんと食っているのか、彼女はできたのか等と口やかましいのだ。
仕事は行き詰っているし食事はコンビニと社食の往復だし、こちとらゲイなので彼女なんて一生作る気はない。
まあでも。有休も溜まっているし、たまには実家に帰るのもいいかもしれないな。
空になったどんぶりを流しに置き、ANAのアプリを開いた。
大歓迎されるだろうと意気揚々と帰省したものの、両親の反応は塩これ極まりだった。
「侑介! 帰ってくるならどうして前もって言わないのよ。お母さんとお父さん、これから町内会の旅行で大阪に行くところなのよ」
「え、旅行? マジで?」
「マジ、よ。まったくタイミングが悪いったら。まあいいわ、家でゆっくりしておきなさい。冷凍庫におかずが色々あるから、好きに食べてね。そうだ、商店街の福引で貰った温泉の招待券が茶箪笥にあるから行ってくるといいわ。じゃあね。明日の夜には帰ってくるから」
旅行バッグを抱えた両親は玄関で鉢合わせした息子に早口で捲し立てると、慌ただしく出かけて行ってしまった。
路線バスには客が数人いるだけだった。通勤に使っている都バスの密度との落差が凄い。
バスの振動に揺られながら、車窓を這う一匹の蜘蛛と、その向こうの古い街並みを眺めるのは悪くない気分だった。
ご招待券を渡された鹿野温泉は鄙びた田舎町だった。バスを降りると、澄んだ空気と田んぼの匂いに五感が目覚める。思いっきり深呼吸をすると身体が浄化されるようだ。
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
古びた温泉ホテルのスタッフは、無料券持参のアラサー男の一人旅を笑顔で迎えてくれた。小ぢんまりした客室は古い畳と砂壁の匂いがどこか懐かしい。
掛け軸は季節に合わせたススキだ。なんとなく捲ってお札がないことを確認してしまう自分がおかしくて、少し笑った。
有名な観光地でもなく、オフシーズンの平日なのでホテルはがらんとしている。
風呂場も無人で、気兼ねせずに裸になって鼻歌まじりに髪と身体を洗う。露天風呂は広くはないが、岩と草花に囲まれて野趣があった。
そっと足を差し込むと、熱すぎずちょうど良い温度だった。湯面に紅葉の落ち葉が散っているのも風情がある。
身を浸すと指先からじんじんとぬくもっていく。
「ふわああ」
思わず大きな声が出た。
気持ちいい。独り言だがもう一度言う。気持ちいい、最高だ。日本人で良かった。
一番高い岩からは湯気の立つ湯が流れ落ちて水面を叩く。
身体がじんわり温まって、淀んだ心が解きほぐされていく。
西野も梨もどうでもよくなってしまう。
温泉最高。温泉旅館で働いている人は毎日こんな気持ちいい思いをしているのだろうか。
「あー、もう仕事やめてここに住みたい!」
誰もいないのをいいことに空に向かって大声を出した。
すると、後ろから笑い声がした。
「ふはっ、大きい独り言」
振り向くと、同い年くらいの男が立っていた。温泉なので当たり前だが全裸で、前を隠してもいない。堂々とした立ち姿に立派な股間が丸出しだ。
思わず凝視しそうになって、慌てて目を逸らした。
「すみません、誰もいないと思ってて」
「いや、俺こそタイミング悪くてごめん。横、いい?」
「勿論。どうぞ」
侑介が横にずれると、男は肩まで湯に浸かり大きな溜め息をついた。
やっぱり出るよな、声。
「あー、最高」
男は水色ととろみを確かめるように湯を掬った。
それから侑介の方に向き直った。
「ひとり? 観光の人?」
「実家が倉吉市なんだ。有休取って帰省してきたら親もたまたま旅行に出かけてて、仕方なくひとり温泉」
「何それ、面白い家族だね」
「普段ロクに連絡を取ってなかったから」
「そんなもんでしょ。俺も親とは時々ラインするくらい。あ、俺は市内の会社で働いてて、今日は久々の有休で湯めぐり中」
男は話しながら、湯の中で四肢を伸ばしたり曲げたりしている。
何か運動をしているのだろう。引き締まった筋肉がついた身体は同じ男として羨ましいし、正直魅力的だ。
少し垂れ目の温和で優しそうな顔も好みだ。
そういや最近残業続きでセックスどころかセルフもしていない。
いやいや、旅先で何を考えてる、俺!
公共の場でムラムラしそうになってしまった。邪な思いを消し去ろうと、両頬をぱしんと叩いた。その仕草を勘違いしたのか、男は詫びるように片手を立てた。
「色々詮索してごめん。ひとりになりたくて来てるんだよな」
「大丈夫。仕事関係の人以外と喋るの久しぶりで、ちょっと緊張しただけ」
「友達とかは? 会ってないのか?」
「残業続きで飲みの誘いを断ってたら、疎遠になった」
「そういやさっき、仕事辞めたいって叫んでたもんなー。ブラックなの? 社畜なの?」
「シリアスに両方。俺、中小の広告代理店で営業やってるんだけど、クライアントと下請けの板挟みで雁字搦め」
「うわ、大変そ。けど、湯に浸かってるとさー、そういうのどうでもよくなるよな」
男は岩に頭を預けて空を見上げた。ゆったりとした声が耳に心地よい。
「うん、そうだな」
二人並んで、岩に頭を預けて空を見上げた。秋空は高く薄青く、鰯雲がたなびいていた。
「あー、やっぱり風呂上がりにはこれだよなー」
のぼせる前に切り上げて、男はパンイチで鳥取名産大山乳業の白バラ牛乳を煽った。
胸板の厚さも上腕の太さも薄く割れた腹も好みだ。ゲイ市場ではマッチョが好まれるが、侑介はムキムキすぎる男には逆にそそられない。優しそうで普通っぽい男の方がいい。
旅先で恋に落ちるなんてロマンチックはフィクション世界だけだと知っているし、ワンナイトを求めに来たわけでもないし、相手はきっとノンケ。
だけど、好みの男ともう少し一緒にいたいと思うのは罪ではないだろう。激務の合間の休暇なのだ。ちょっとくらいの下心は神様だって許してくれる。
フルーツ牛乳を一気飲みして喝を入れ、侑介は勇気を出して浴衣を羽織る男の袖を引いた。
「その、良かったら、晩飯一緒に食いませんか? あ、俺は佐田って言います」
男は少しだけ目を見開いて侑介を見て、「なんで急に敬語」と笑った。
「佐田君」
「うん」
「いーよ、一緒に食べよ。俺もひとりで旅館飯は味気ないと思ってたし」
「え、いいのか?」
「誘っといてなんでそんな驚くの。じゃあ、俺の部屋に佐田君の分も運んでもらうよう言っておくな。あ、俺は菊戸塚。菊戸塚昂輝」
「きくとづか」
「呼びにくいだろ、昂輝でいいよ。みんなそう呼ぶから」
昂輝は空瓶を棚に戻すと、先に立ってフロントに向かう。侑介は丹前の下でこっそりガッツポーズをした。
先付3種は鴨と秋茄子、百合根あんかけ、柚のジュレ。お造り、てんぷら、茶碗蒸し。瓶ビールに地酒。メインは黒毛和牛のステーキ。最高に過ぎる。
注ぎ合ったビールを一息で飲み干し、「うっまー」と声を揃えた。
「やっぱ風呂上りはビールだよな」
昂輝が牛乳の時と同じ台詞を言うので、侑介は「どっちだよ」と笑う。
食べたり飲んだりしながら沢山の話をした。旅行や温泉や好きな音楽やハマっている動画の話。学生時代に戻ったかのように話題はつきない。
腹はふくれて酒も回って、目の前にはいい男がいて、気分は王様だ。
「窓あけようか。肉焼くと、匂いこもるよな」
昂輝が立ち上がって、障子と窓を全開にする。澄んだ空気が吹き込み、酒と熱で火照った頬を冷ましていく。
「佐田君、しーっ」
窓際で昂輝が人差し指を立てたので、侑介はおしゃべりしていた口をつぐんだ。
途端に、鈴虫の音が聞こえてくる。耳を澄ますと、稲穂が風でこすれる音と川のせせらぎも。
BGM動画とは違う、本物の田舎の夜だ。
昂輝が二人分の盃に瑞泉を注いでくれる。
目を伏せて風流に浸っていると、涼やかな音色に濁音が混じった。
グルルルッ、グエッグエッグエッ……グルルル、グエッ。
突然の大合唱に二人して吹き出した。
「これ、何の鳴き声? 虫?」
「カエルだね。何ガエルだろ」
窓の外を覗き込む侑介に、昂輝は思いっきり嫌そうな顔をした。
「知るかよ。窓、閉めよう」
「別にいいよ、これも風情のうちだろ」
「俺、苦手なんだよ、カエル」
「そうなのか? 可愛いのに」
「あの皮膚の質感とか模様とかでかい目が無理。水かきが透けそうに薄いのもぞわぞわする」
急に早口になっている。嫌いと言う割に観察力がすごい。
「佐田君、首引っ込めて。もう空気入れ替わっただろ、閉めよう」
昂輝が本当に震えるように身をちぢめているのが面白くて、侑介は爆笑した。
大きな仲居と小さな仲居が膳を下げて布団を敷いていくと、昂輝は冷蔵庫から酒瓶を取り出した。ぽってりと丸いフォルムの瓶は二十世紀梨のリキュールだ。
「もう少し飲まない? 甘いから、デザート代わりに」
うんと頷きながらも、その色合いに西野の顔とポスターのデザインを思い出してしまった。
侑介はグラスに注がれたとろりとした液体を見つめる。
「これ、何色って言うんだろうな。梨色?」
昂輝は「そんな色はないよ」と笑って、グラスを電灯に透かすように持ち上げた。
「淡黄、よりは黄色が薄いな。伽羅色とか砥粉色が近いかな」
何の呪文だ。漢字が全く変換できなかった。
「今の何語?」
「日本の伝統色の名前だよ」
昂輝はハーシェルのリュックを探ると、ポーチから正方形の付箋を取り出して「砥粉」と書いた。
「漆の下地塗りに使われたりする粉らしい。俺も粉の方の実物は見たことがないけど」
「へえ、初めて聞いた。この付箋、変わった色だな。初めて見た」
昂輝の付箋は白に近い水色で。けれど普通の水色よりもっと柔らかくてやさしい色合いだった。
「綺麗な色だな。使い捨てるのがもったいない」
そう言うと、昂輝は嬉しそうに笑った。
「これは月白っていう色なんだ」
また知らない単語だった。
「昂輝はカラーコーディネーターかなんかなのか?」
「違うよ。俺、文房具のデザインやってるんだ」
「え、じゃあ、これって昂輝の会社の?」
付箋と昂輝を見比べると、昂輝は畏まって「弊社の商品です」と言った。
「俺、中小の文具メーカーで働いてて、担当は企画開発兼デザイナーってとこかな。今は老舗の画材メーカーさんとタイアップして、伝統色を使った文房具シリーズを展開しているんだ。この付箋もそのひとつ」
「付箋って、例の黄色とピンクと水色だけかと思ってた」
「ポストイットに比べたら出荷数は全然少ないけど、結構人気出てきてるんだよ。文房具は熱狂的なファンもいるし、特に女性は綺麗な色のものが好きだろ」
「確かに、こういうオシャレな付箋で電話のメモとか置かれたら嬉しいかも」
「な。結構人気あるんだよ。ロフトにも置いてもらってるし」
「すごいじゃん」
「あんまり誉めると照れるからやめて。次は、佐田君の仕事の話も聞かせてよ」
あのCMも俺が担当したんだぜ、なんてカッコいいことを言っていたのは最初の5分で、あとは愚痴のオンパレードになってしまった。温泉で忘れたと思っていたのに、飲んでいるのが梨の酒なのも良くなかった。
良いに任せてひとしきり吐き出してしまうと、今度は急に恥ずかしくなって顔を伏せた。初対面の相手に仕事の愚痴を連ねるとか、俺はあの印刷工場のおっさん以下だ。面目なさすぎる。
「ごめん、愚痴りすぎた」
心底謝るが、昂輝は全く気にしていないと手を振った。
「いいじゃん。愚痴は吐き出さないと、腹の中で溜まって腐ってネバネバのドロドロになるだろ」
「いやでも、聞いてて楽しくなかっただろ」
「結構楽しいよ。ま、半分以上聞き流してるけど」
「聞き流してるのかよ」
むくれてみせると、昂輝は屈託なく笑った。くそう、笑顔も好みすぎる。
布団を敷くために座卓を壁際に寄せたので、斜向かいに座っていて食事の時より距離が近い。
互いに浴衣姿で、そんな気はなのにちょっと意識してしまう。こんなふうにどきどきするのは久しぶりでなんだか嬉しい。鳥取の神様に感謝しなければ。
「で、佐田君は仕事の疲れを癒すために帰省したんだ」
「癒すっていうか、うん、でもそうかな。実家って、帰る度に、やれ仕事はどうだちゃんと食ってるのか彼女はできないのかってうるさくないか? だからどっか敬遠してたんだけど、この前、牛骨ラーメン食べたら、たまには帰ろうかなって気分になって」
「故郷の味な。分かる分かる」
昂輝は真正面から否定をしない。勿論自分の意見は言うけれど、侑介が何かを話したら、まず第一声は同調してくれる。だから、なんでも話してしまいそうになる。
昂輝は「牛骨って、夜中に無性に食いたくなるんだよな」と言ってから、いたずらっぽい眼差しで侑介を見た。
「仕事と飯の話は散々聞いたけど、彼女は? 付き合ってる子、いるの?」
目を合わせていられなくて、侑介は掌の中のグラスに視線を落とす。
誤魔化すのは簡単だし今までずっとそうしてきた。引かれるのは正直怖いけれど、昂輝には嘘をつきたくないな。そう思った。緊張でこぼさないようにグラスを座卓に戻した。
「いないよ。俺、女の子は、無理だし」
昂輝は驚くふうでもなく、「へえ、そうなんだ」と言った。
「じゃあ、質問変更。彼氏はいるの?」
「……」
「いいたくないなら」
「いや、ちょっと予想外の反応で。ちょっとは驚くとかなんとか」
「今から驚こうか?」
おどけた口調に笑ってしまう。昂輝と話していると、楽しくてすぐに顔が緩む。
「ははっ、何それ。そんなの驚きじゃないだろ」
けらけら笑っていると、片膝を立てた浴衣の上に影が落ちた。昂輝が距離を詰めていて、眼前に顔がある。
「なに、近いって」
「彼氏、いるの?」
低い声。さっきまでとはトーンが違う。瞳からやわらかさが消えている。なんだ、これ。
「いない、けど……んっ」
語尾は昂輝の唇に飲み込まれた。
え、なんだこれ。キス、されてるのか?
触れ合った部分が熱い。ついばむように刺激をされて唇に熱が宿る。
状況把握がままならないし、久しぶりすぎて勝手が思い出せない。
硬直していると、昂輝が口元で囁いた。
「佐田君。すこし、口あけて」
言われるがままに唇が開く。すかさず入り込んできた舌は唇よりも熱くて、梨と酒の甘い香りに酔いが回る。絡まる舌に唾液が溢れてきて恥ずかしい。
「んっ…、んん」
昂輝の舌が丁寧に歯列をなぞっていく。犬歯の裏を舐められると身体がびくりと震えた。思わず仰け反って後ろ手をつく。倒れそうになった腰を昂輝が支えてくれる。
頭の後ろも同時に支えられて、完全に逃れることができなくなった。
くちゅくちゅとやらしい水音が響く。
昂輝のキスは温和な見た目を裏切る激しさで、侑介はされるがままだった。なんでキスなんてするんだなんて、抗議することも考える隙間も与えてくれない。
気持ちよさで脳がぐらぐらする。こめかみが痛んで、熱が下半身にたまっていく。
「ん、ふ、んんっ……」
鼻腔の奥で押さえきれない声が漏れる。
気の遠くなるような長い時間、存分に侑介の口腔を蹂躙し、昂輝はようやく唇を離した。腰と頭の後ろも解放され、空気が触れてひやりとする。
解放されても息が全然整わない。昂輝の顔を見るのが怖くて、視線が上げられない。
唇の熱が引かなくてじんじんする。口の端に残っていた唾液がつと垂れたのを感じて、舌で拭った。
その瞬間に手首を掴まれた。
「な、に…?」
立てた膝を割り開かれ、昂輝の上体が入り込んでくる。濃厚なキスで熱を持った股間同士が触れ合って、また声が漏れた。
布団の上に押し倒された姿勢で昂輝を見上げると、獲物を食うオスの顔をしている。
性的に求められているのが分かって、ぞくぞくする。流されてしまいたいほど魅力的だ。
でも、昂輝は拳を握って掌に爪を立てた。このまま欲に負けて一線を超えたら、きっと後悔する。
理性を振り絞って、自由な方の手を座卓のグラスに伸ばした。
溶けかかった氷を掴み、昂輝の襟元に落とし込む。一秒後。
「……ひゃっ!」
昂輝が間抜けな声を出して侑介から飛びのいた。
「冷たっ! 何するんだよ、うわ、どこだ氷、あ、ここか」
あたふたと浴衣を探り小さくなった氷を掬いだしている。その様子がおかしくて、侑介はまた笑った。
「なに笑ってるんだよ。ひどくないか?」
「ひどいのはどっちだ。いきなりキスするとか」
「だって、佐田君が可愛かったから」
「はあ? だってじゃないだろ、可愛かったら誰にでもキスするのかよ変質者か」
侑介は体勢を起こして裾を直した。酔い覚ましの水を一気飲みする。昂輝は神妙な顔で、誰にでもじゃないよと言った。
「佐田君と話してるの楽しいし、よく笑うとこ可愛いし。風呂とかで、俺のことちょっと熱っぽい目で見てたし」
「見てない!」
名誉のために全否定しておくが、バレていたのか。羞恥で死にそうだ。
「えー、本当? あと、彼氏いないとかいうし」
「それは、昂輝が聞いたから答えただけだ! 大体おまえ、普通に女の子が好きな奴だろ」
「そのはずなんだけど、なんか自分でもびっくりするほど興奮して、制御できなかった。ごめん」
昂輝は正座して拝むように両手を合わせた。これ以上怒るのも馬鹿らしくなって、侑介は溜息をついた。何より、さっきのあの剣呑で性的な雰囲気が消え去ったことに安心する。
「もう、いいよ。ちょっと、びっくりしただけだから」
「でも佐田君」
「なに」
「キス、気持ちよかった、だろ?」
さっきまで謝り倒していたくせに、今度は悪びれもしない顔で侑介の股間を刺している。まだ熱は治まっていないそこは、浴衣の布を押し上げている。
「ただの生理現象だ!」
枕を掴んで、両腕で力任せに投げつけた。
温泉でリフレッシュしたからといって、いきなり仕事が上手く進むわけもなく、相も変わらず印刷工場では愚痴を浴びせられ、上司には叱られ、後輩が納期をミスったフォローで取引先に謝罪に行く羽目になった。目の前の西野は相変わらず難しい顔で蘊蓄を垂れている。
流石に再度のリテイクは避けたいがなんと説得したものか。
「それでは、こちらで社内稟議に回させていただきます」
「……え?」
空耳かと、思わず呆けた返しをしてしまった。
「どうかされましたか?」
「OK、ですか?」
確認すると、西野はにこりともせずにポスターの色校を指先で叩いた。
「OKです。これで行きましょう。この梨、最高です。癒されます」
癒される梨ってなんだ。相変わらずよく分からないがとりあえず青信号に変わったことに胸を撫でおろす。上手く進むわけもなくなかった。
「良かったです。それでは、こちらでよろしくお願いします。データは後ほどクラウドでお送りしますので。先ほどご指摘いただいたコラボ用パッケージのデザイン案は、再度修正してお送りします」
「よろしくお願いします」
宿題はあるが、とりあえずポスターの件は片付いた。肩の荷がひとつ下りた気分だ。
互いにデスクの資料を片付けていると、西野の動きがふと止まった。視線を辿ると、侑介の手帳を見ている。
「その付箋、素敵な色ですね。何色って言うのかしら」
ベージュ色の爪が手帳に張った付箋を指している。
「薄葡萄と言うそうですよ」
「へえ、秋らしくて素敵な色ですね。可愛いわ」
褒められたのが嬉しくて、侑介は鞄から新しいパッケージを取り出した。通勤の途中、錦糸町のロフトで全色まとめ買いした、昂輝の商品のひとつだ。
「沢山あるので、良かったら、おひとつどうぞ」
「いただいていいんですか? ありがとうございます」
西野が嬉しそうに微笑む。この人、小さな文具ひとつでこんな顔をするんだな。新しい発見に侑介まで嬉しくなった。
あの夜、侑介は自分の部屋に戻ってそれぞれの夜を過ごした。興奮でまったく眠気が襲ってこなくて、布団の中で身もだえしながら悩みに悩んで、結局、侑介は始バスで宿を発った。朝食も一緒に取ろうという約束は反故にした。
だって、あれ以上二人でいたら、本気で好きになってしまう。ストレート相手の恋なんて不毛なだけだ。
あのキスは、心の中の宝箱に飴玉としてしまっておく。
落ち込んだ時に取り出して舐めて、その甘さに浸って、そしていつかは無くなってしまう、飴玉だ。
コンビニで紅イモと栗のモンブランを買って帰社すると、社員通用口の前にあり得ない人物がいた。
「は?」
「お疲れ。タイミングばっちし。やっぱ運命だね」
「え、は? 昂輝?」
あまりのことに幻かと目をこすってしまう。間違いなく昂輝だ。見慣れないスーツ姿だし前髪も上げているが、確かに昂輝だ。
「久しぶり、佐田君」
「なんでここに」
「営業1課に電話したら、佐田君は外回り中で6時戻りだって聞いたからさ、待ち伏せしてた」
「そうじゃなくて、なんで東京にいるんだよ。てかなんで俺の会社知ってんの」
「地方の中小でも東京出張くらいあるし、佐田君、酔って社名も部署もぶちまけてたよ」
混乱する侑介と対照的に昂輝は飄々と説明する。
「だからって、なんで会社まで来るんだよ」
「ご挨拶だね。佐田君に会いにきたに決まってるだろ。とりあえず夕飯一緒したいんだけど、もしかして、今日残業?」
昂輝は手元のエコバッグを指している。
「あ、これは夜食じゃなくて、ケーキ。今日、後輩がミスしたから差し入れ的な」
「ふうん。優しいね」
正直に答えてしまって、後悔する。これは夜食で今日は残業だから帰ってくれと言えばよかったのに。
言えなかった。
上気する頬が嫌で奥歯を噛み締める。
だって、会いたかったんだ。馬鹿か、俺は。自分から切ろうとしたくせに。来てくれて嬉しいなんて。こんなにどきどきしてるなんて。
恋なんて、どうしようもない。
「佐田君。それ、後輩君に届けたらすぐに戻ってきて」
「なんで」
「今日はなんでばっかりだね。だって佐田君、今、すごい物欲しそうな顔してるよ」
「……っ、してない」
色気のある物言いにあのキスを思い出して、反射的に唇に触れてしまう。
「ほら佐田君。そういう仕草、反則だよ」
あの夜みたいに力強く手首を掴まれ、ビルの隙間に連れ込まれる。湿度に満ちた細い路地裏で昂輝は顔を寄せてくる。
「佐田君、キスしよう」
「しない」
「本当に? したくない?」
昂輝は容赦なく詰め寄ってくる。
「……っ」
「ほら、どっち」
「……知らない」
「知ってるだろ」
低い声が耳元を犯す。それさえも官能を揺さぶる。昂輝の指がゆっくりと唇をなぞる。侵入して、犬歯の裏をなぞる。
「佐田君。好きだよ」
「え?」
「好きだよ。よく笑ってちょっと口が悪くて、頑張って働いてる、男の佐田君が好きだよ」
まっすぐな告白にぶわりと鳥肌が立った。
目元が濡れて熱い。背中に当たるのは会社のビルなのに、どうしようもなく興奮する。掴まれた手首は痛いのに、もっと強く握ってほしいとさえ思う。
「こう、き。俺も、」
「うん」
その先の言葉を紡ぐ代わりに、昂輝の唇に噛みつくようなキスを仕掛けた。
「うーん、なんだかまだ微妙にイメージが違うんですよね」
また駄目か。
毎度要領を得ない西野の駄目出しに、侑介は内心で深く溜息をついた。
相手は得意先の飲料メーカーのPR担当だ。苛立つ心を深呼吸で制御して、最大限丁寧な口調を作る。
「前回ご指摘いただいた梨の果実感については、色味を明るくして水滴の効果を加えたことでよく表現できているかと思うのですが」
「それはそうなんだけど、なんていうのかしら、ちょっと生々しくなりすぎっていうか。これじゃあ、アメリカのチューインガムのCMみたいですよね」
曖昧な言葉を操りながら、西野はポスターに印刷された梨を指さした。濃いピンク色の爪が果実の輪郭をなぞっていく。
「もっと自然で柔らかい色合いでかつ瑞々しさがほしいんです」
「柔らかく、ですか。ただ、これ以上梨の色を薄くすると背景に負けてしまうんですよね」
「でしたら、いっそ背景の色を変えてしまっても構わないわ」
「しかし、背景は自然の畑の風景をということでしたので、あまり色調を変えるわけには」
堂々巡りの会話に侑介はテーブルの下の拳を握りしめた。
これで4回目のリテイクだ。発注先の印刷工場の営業にまた頭を下げなければならない。
「なんでもっと相手の意向を具体的に確認してくれないんですか。これではうちも採算が取れなくなりますよ。うちは零細なんでね、安い仕事を大量に受けてなんとかやってるんですから。いつも仕事をいただいて有難いんですが、ここまで無茶を言われると職人の連中も、ほら、あれなんですよ」
3回目のやり直しの時、こっちだって忙しいんだと言いながら1時間以上もぐちぐちと不満を垂れ流された。またあれを聞くことになるかと思うと気が萎える。いっそ怒鳴られた方がマシだった。
既に第4稿だ。なんとかこれで了承を貰いたい一心で抵抗を試みるが、西野は首を縦には振らなかった。テーブルの上で両手を組み、西野は侑介を見据えた。
「佐田さん。何度もお願いして申し訳ないとは思っています。ですが、弊社としても力を入れている新製品なので、妥協はしたくないんです。120%満足できる広告を打ちたいんです」
「はい。それは勿論です。弊社としても精一杯努力させていただきますが、印刷所の方の限界もありますので」
「この梨のリキュールは、働く女性が仕事で疲れて帰った後、家でオシャレなお酒を簡単に作ってリラックスタイムを楽しむ、そういうイメージで開発しているんです。その観点でポスターデザインも自然や癒しを感じられるものにしています。この梨、本物そっくりですが本物すぎるんです。もう少し、理想の梨に近づく色合いをお願いします」
一見プロフェッショナルな姿勢を述べているようだが、だったらもっと具体的に指示をしてほしい。侑介は分かりましたと答えて、色校をケースに仕舞った。
その日は散々だった。
印刷所で愚痴を聞き、帰社して上司に説教され、残業で終電を逃しタクシーはなかなか捕まらず、夕飯調達に寄ったコンビニはチルド製品が売り切れだった。
精も根も尽き果ててアパートに帰ると、玄関前に置き配の荷物があった。
鳥取の実家からだ。「たまには帰ってきなさい」と段ボールに直接メッセージが書かれている。雑だ。
開封すると、牛骨ラーメン、カレーのスパイス、そして梨が詰まっている。梨。今一番見たくないものだ。ラーメン一袋だけを取り出して、侑介は段ボールの蓋を閉じた。
久々に食う牛骨ラーメンは美味くて心に沁みた。
就職してから丸3年。実家には一度も帰っていなかった。
典型的な地方都市の両親とはたまに電話をしているが、やれ出世はできそうか、ちゃんと食っているのか、彼女はできたのか等と口やかましいのだ。
仕事は行き詰っているし食事はコンビニと社食の往復だし、こちとらゲイなので彼女なんて一生作る気はない。
まあでも。有休も溜まっているし、たまには実家に帰るのもいいかもしれないな。
空になったどんぶりを流しに置き、ANAのアプリを開いた。
大歓迎されるだろうと意気揚々と帰省したものの、両親の反応は塩これ極まりだった。
「侑介! 帰ってくるならどうして前もって言わないのよ。お母さんとお父さん、これから町内会の旅行で大阪に行くところなのよ」
「え、旅行? マジで?」
「マジ、よ。まったくタイミングが悪いったら。まあいいわ、家でゆっくりしておきなさい。冷凍庫におかずが色々あるから、好きに食べてね。そうだ、商店街の福引で貰った温泉の招待券が茶箪笥にあるから行ってくるといいわ。じゃあね。明日の夜には帰ってくるから」
旅行バッグを抱えた両親は玄関で鉢合わせした息子に早口で捲し立てると、慌ただしく出かけて行ってしまった。
路線バスには客が数人いるだけだった。通勤に使っている都バスの密度との落差が凄い。
バスの振動に揺られながら、車窓を這う一匹の蜘蛛と、その向こうの古い街並みを眺めるのは悪くない気分だった。
ご招待券を渡された鹿野温泉は鄙びた田舎町だった。バスを降りると、澄んだ空気と田んぼの匂いに五感が目覚める。思いっきり深呼吸をすると身体が浄化されるようだ。
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
古びた温泉ホテルのスタッフは、無料券持参のアラサー男の一人旅を笑顔で迎えてくれた。小ぢんまりした客室は古い畳と砂壁の匂いがどこか懐かしい。
掛け軸は季節に合わせたススキだ。なんとなく捲ってお札がないことを確認してしまう自分がおかしくて、少し笑った。
有名な観光地でもなく、オフシーズンの平日なのでホテルはがらんとしている。
風呂場も無人で、気兼ねせずに裸になって鼻歌まじりに髪と身体を洗う。露天風呂は広くはないが、岩と草花に囲まれて野趣があった。
そっと足を差し込むと、熱すぎずちょうど良い温度だった。湯面に紅葉の落ち葉が散っているのも風情がある。
身を浸すと指先からじんじんとぬくもっていく。
「ふわああ」
思わず大きな声が出た。
気持ちいい。独り言だがもう一度言う。気持ちいい、最高だ。日本人で良かった。
一番高い岩からは湯気の立つ湯が流れ落ちて水面を叩く。
身体がじんわり温まって、淀んだ心が解きほぐされていく。
西野も梨もどうでもよくなってしまう。
温泉最高。温泉旅館で働いている人は毎日こんな気持ちいい思いをしているのだろうか。
「あー、もう仕事やめてここに住みたい!」
誰もいないのをいいことに空に向かって大声を出した。
すると、後ろから笑い声がした。
「ふはっ、大きい独り言」
振り向くと、同い年くらいの男が立っていた。温泉なので当たり前だが全裸で、前を隠してもいない。堂々とした立ち姿に立派な股間が丸出しだ。
思わず凝視しそうになって、慌てて目を逸らした。
「すみません、誰もいないと思ってて」
「いや、俺こそタイミング悪くてごめん。横、いい?」
「勿論。どうぞ」
侑介が横にずれると、男は肩まで湯に浸かり大きな溜め息をついた。
やっぱり出るよな、声。
「あー、最高」
男は水色ととろみを確かめるように湯を掬った。
それから侑介の方に向き直った。
「ひとり? 観光の人?」
「実家が倉吉市なんだ。有休取って帰省してきたら親もたまたま旅行に出かけてて、仕方なくひとり温泉」
「何それ、面白い家族だね」
「普段ロクに連絡を取ってなかったから」
「そんなもんでしょ。俺も親とは時々ラインするくらい。あ、俺は市内の会社で働いてて、今日は久々の有休で湯めぐり中」
男は話しながら、湯の中で四肢を伸ばしたり曲げたりしている。
何か運動をしているのだろう。引き締まった筋肉がついた身体は同じ男として羨ましいし、正直魅力的だ。
少し垂れ目の温和で優しそうな顔も好みだ。
そういや最近残業続きでセックスどころかセルフもしていない。
いやいや、旅先で何を考えてる、俺!
公共の場でムラムラしそうになってしまった。邪な思いを消し去ろうと、両頬をぱしんと叩いた。その仕草を勘違いしたのか、男は詫びるように片手を立てた。
「色々詮索してごめん。ひとりになりたくて来てるんだよな」
「大丈夫。仕事関係の人以外と喋るの久しぶりで、ちょっと緊張しただけ」
「友達とかは? 会ってないのか?」
「残業続きで飲みの誘いを断ってたら、疎遠になった」
「そういやさっき、仕事辞めたいって叫んでたもんなー。ブラックなの? 社畜なの?」
「シリアスに両方。俺、中小の広告代理店で営業やってるんだけど、クライアントと下請けの板挟みで雁字搦め」
「うわ、大変そ。けど、湯に浸かってるとさー、そういうのどうでもよくなるよな」
男は岩に頭を預けて空を見上げた。ゆったりとした声が耳に心地よい。
「うん、そうだな」
二人並んで、岩に頭を預けて空を見上げた。秋空は高く薄青く、鰯雲がたなびいていた。
「あー、やっぱり風呂上がりにはこれだよなー」
のぼせる前に切り上げて、男はパンイチで鳥取名産大山乳業の白バラ牛乳を煽った。
胸板の厚さも上腕の太さも薄く割れた腹も好みだ。ゲイ市場ではマッチョが好まれるが、侑介はムキムキすぎる男には逆にそそられない。優しそうで普通っぽい男の方がいい。
旅先で恋に落ちるなんてロマンチックはフィクション世界だけだと知っているし、ワンナイトを求めに来たわけでもないし、相手はきっとノンケ。
だけど、好みの男ともう少し一緒にいたいと思うのは罪ではないだろう。激務の合間の休暇なのだ。ちょっとくらいの下心は神様だって許してくれる。
フルーツ牛乳を一気飲みして喝を入れ、侑介は勇気を出して浴衣を羽織る男の袖を引いた。
「その、良かったら、晩飯一緒に食いませんか? あ、俺は佐田って言います」
男は少しだけ目を見開いて侑介を見て、「なんで急に敬語」と笑った。
「佐田君」
「うん」
「いーよ、一緒に食べよ。俺もひとりで旅館飯は味気ないと思ってたし」
「え、いいのか?」
「誘っといてなんでそんな驚くの。じゃあ、俺の部屋に佐田君の分も運んでもらうよう言っておくな。あ、俺は菊戸塚。菊戸塚昂輝」
「きくとづか」
「呼びにくいだろ、昂輝でいいよ。みんなそう呼ぶから」
昂輝は空瓶を棚に戻すと、先に立ってフロントに向かう。侑介は丹前の下でこっそりガッツポーズをした。
先付3種は鴨と秋茄子、百合根あんかけ、柚のジュレ。お造り、てんぷら、茶碗蒸し。瓶ビールに地酒。メインは黒毛和牛のステーキ。最高に過ぎる。
注ぎ合ったビールを一息で飲み干し、「うっまー」と声を揃えた。
「やっぱ風呂上りはビールだよな」
昂輝が牛乳の時と同じ台詞を言うので、侑介は「どっちだよ」と笑う。
食べたり飲んだりしながら沢山の話をした。旅行や温泉や好きな音楽やハマっている動画の話。学生時代に戻ったかのように話題はつきない。
腹はふくれて酒も回って、目の前にはいい男がいて、気分は王様だ。
「窓あけようか。肉焼くと、匂いこもるよな」
昂輝が立ち上がって、障子と窓を全開にする。澄んだ空気が吹き込み、酒と熱で火照った頬を冷ましていく。
「佐田君、しーっ」
窓際で昂輝が人差し指を立てたので、侑介はおしゃべりしていた口をつぐんだ。
途端に、鈴虫の音が聞こえてくる。耳を澄ますと、稲穂が風でこすれる音と川のせせらぎも。
BGM動画とは違う、本物の田舎の夜だ。
昂輝が二人分の盃に瑞泉を注いでくれる。
目を伏せて風流に浸っていると、涼やかな音色に濁音が混じった。
グルルルッ、グエッグエッグエッ……グルルル、グエッ。
突然の大合唱に二人して吹き出した。
「これ、何の鳴き声? 虫?」
「カエルだね。何ガエルだろ」
窓の外を覗き込む侑介に、昂輝は思いっきり嫌そうな顔をした。
「知るかよ。窓、閉めよう」
「別にいいよ、これも風情のうちだろ」
「俺、苦手なんだよ、カエル」
「そうなのか? 可愛いのに」
「あの皮膚の質感とか模様とかでかい目が無理。水かきが透けそうに薄いのもぞわぞわする」
急に早口になっている。嫌いと言う割に観察力がすごい。
「佐田君、首引っ込めて。もう空気入れ替わっただろ、閉めよう」
昂輝が本当に震えるように身をちぢめているのが面白くて、侑介は爆笑した。
大きな仲居と小さな仲居が膳を下げて布団を敷いていくと、昂輝は冷蔵庫から酒瓶を取り出した。ぽってりと丸いフォルムの瓶は二十世紀梨のリキュールだ。
「もう少し飲まない? 甘いから、デザート代わりに」
うんと頷きながらも、その色合いに西野の顔とポスターのデザインを思い出してしまった。
侑介はグラスに注がれたとろりとした液体を見つめる。
「これ、何色って言うんだろうな。梨色?」
昂輝は「そんな色はないよ」と笑って、グラスを電灯に透かすように持ち上げた。
「淡黄、よりは黄色が薄いな。伽羅色とか砥粉色が近いかな」
何の呪文だ。漢字が全く変換できなかった。
「今の何語?」
「日本の伝統色の名前だよ」
昂輝はハーシェルのリュックを探ると、ポーチから正方形の付箋を取り出して「砥粉」と書いた。
「漆の下地塗りに使われたりする粉らしい。俺も粉の方の実物は見たことがないけど」
「へえ、初めて聞いた。この付箋、変わった色だな。初めて見た」
昂輝の付箋は白に近い水色で。けれど普通の水色よりもっと柔らかくてやさしい色合いだった。
「綺麗な色だな。使い捨てるのがもったいない」
そう言うと、昂輝は嬉しそうに笑った。
「これは月白っていう色なんだ」
また知らない単語だった。
「昂輝はカラーコーディネーターかなんかなのか?」
「違うよ。俺、文房具のデザインやってるんだ」
「え、じゃあ、これって昂輝の会社の?」
付箋と昂輝を見比べると、昂輝は畏まって「弊社の商品です」と言った。
「俺、中小の文具メーカーで働いてて、担当は企画開発兼デザイナーってとこかな。今は老舗の画材メーカーさんとタイアップして、伝統色を使った文房具シリーズを展開しているんだ。この付箋もそのひとつ」
「付箋って、例の黄色とピンクと水色だけかと思ってた」
「ポストイットに比べたら出荷数は全然少ないけど、結構人気出てきてるんだよ。文房具は熱狂的なファンもいるし、特に女性は綺麗な色のものが好きだろ」
「確かに、こういうオシャレな付箋で電話のメモとか置かれたら嬉しいかも」
「な。結構人気あるんだよ。ロフトにも置いてもらってるし」
「すごいじゃん」
「あんまり誉めると照れるからやめて。次は、佐田君の仕事の話も聞かせてよ」
あのCMも俺が担当したんだぜ、なんてカッコいいことを言っていたのは最初の5分で、あとは愚痴のオンパレードになってしまった。温泉で忘れたと思っていたのに、飲んでいるのが梨の酒なのも良くなかった。
良いに任せてひとしきり吐き出してしまうと、今度は急に恥ずかしくなって顔を伏せた。初対面の相手に仕事の愚痴を連ねるとか、俺はあの印刷工場のおっさん以下だ。面目なさすぎる。
「ごめん、愚痴りすぎた」
心底謝るが、昂輝は全く気にしていないと手を振った。
「いいじゃん。愚痴は吐き出さないと、腹の中で溜まって腐ってネバネバのドロドロになるだろ」
「いやでも、聞いてて楽しくなかっただろ」
「結構楽しいよ。ま、半分以上聞き流してるけど」
「聞き流してるのかよ」
むくれてみせると、昂輝は屈託なく笑った。くそう、笑顔も好みすぎる。
布団を敷くために座卓を壁際に寄せたので、斜向かいに座っていて食事の時より距離が近い。
互いに浴衣姿で、そんな気はなのにちょっと意識してしまう。こんなふうにどきどきするのは久しぶりでなんだか嬉しい。鳥取の神様に感謝しなければ。
「で、佐田君は仕事の疲れを癒すために帰省したんだ」
「癒すっていうか、うん、でもそうかな。実家って、帰る度に、やれ仕事はどうだちゃんと食ってるのか彼女はできないのかってうるさくないか? だからどっか敬遠してたんだけど、この前、牛骨ラーメン食べたら、たまには帰ろうかなって気分になって」
「故郷の味な。分かる分かる」
昂輝は真正面から否定をしない。勿論自分の意見は言うけれど、侑介が何かを話したら、まず第一声は同調してくれる。だから、なんでも話してしまいそうになる。
昂輝は「牛骨って、夜中に無性に食いたくなるんだよな」と言ってから、いたずらっぽい眼差しで侑介を見た。
「仕事と飯の話は散々聞いたけど、彼女は? 付き合ってる子、いるの?」
目を合わせていられなくて、侑介は掌の中のグラスに視線を落とす。
誤魔化すのは簡単だし今までずっとそうしてきた。引かれるのは正直怖いけれど、昂輝には嘘をつきたくないな。そう思った。緊張でこぼさないようにグラスを座卓に戻した。
「いないよ。俺、女の子は、無理だし」
昂輝は驚くふうでもなく、「へえ、そうなんだ」と言った。
「じゃあ、質問変更。彼氏はいるの?」
「……」
「いいたくないなら」
「いや、ちょっと予想外の反応で。ちょっとは驚くとかなんとか」
「今から驚こうか?」
おどけた口調に笑ってしまう。昂輝と話していると、楽しくてすぐに顔が緩む。
「ははっ、何それ。そんなの驚きじゃないだろ」
けらけら笑っていると、片膝を立てた浴衣の上に影が落ちた。昂輝が距離を詰めていて、眼前に顔がある。
「なに、近いって」
「彼氏、いるの?」
低い声。さっきまでとはトーンが違う。瞳からやわらかさが消えている。なんだ、これ。
「いない、けど……んっ」
語尾は昂輝の唇に飲み込まれた。
え、なんだこれ。キス、されてるのか?
触れ合った部分が熱い。ついばむように刺激をされて唇に熱が宿る。
状況把握がままならないし、久しぶりすぎて勝手が思い出せない。
硬直していると、昂輝が口元で囁いた。
「佐田君。すこし、口あけて」
言われるがままに唇が開く。すかさず入り込んできた舌は唇よりも熱くて、梨と酒の甘い香りに酔いが回る。絡まる舌に唾液が溢れてきて恥ずかしい。
「んっ…、んん」
昂輝の舌が丁寧に歯列をなぞっていく。犬歯の裏を舐められると身体がびくりと震えた。思わず仰け反って後ろ手をつく。倒れそうになった腰を昂輝が支えてくれる。
頭の後ろも同時に支えられて、完全に逃れることができなくなった。
くちゅくちゅとやらしい水音が響く。
昂輝のキスは温和な見た目を裏切る激しさで、侑介はされるがままだった。なんでキスなんてするんだなんて、抗議することも考える隙間も与えてくれない。
気持ちよさで脳がぐらぐらする。こめかみが痛んで、熱が下半身にたまっていく。
「ん、ふ、んんっ……」
鼻腔の奥で押さえきれない声が漏れる。
気の遠くなるような長い時間、存分に侑介の口腔を蹂躙し、昂輝はようやく唇を離した。腰と頭の後ろも解放され、空気が触れてひやりとする。
解放されても息が全然整わない。昂輝の顔を見るのが怖くて、視線が上げられない。
唇の熱が引かなくてじんじんする。口の端に残っていた唾液がつと垂れたのを感じて、舌で拭った。
その瞬間に手首を掴まれた。
「な、に…?」
立てた膝を割り開かれ、昂輝の上体が入り込んでくる。濃厚なキスで熱を持った股間同士が触れ合って、また声が漏れた。
布団の上に押し倒された姿勢で昂輝を見上げると、獲物を食うオスの顔をしている。
性的に求められているのが分かって、ぞくぞくする。流されてしまいたいほど魅力的だ。
でも、昂輝は拳を握って掌に爪を立てた。このまま欲に負けて一線を超えたら、きっと後悔する。
理性を振り絞って、自由な方の手を座卓のグラスに伸ばした。
溶けかかった氷を掴み、昂輝の襟元に落とし込む。一秒後。
「……ひゃっ!」
昂輝が間抜けな声を出して侑介から飛びのいた。
「冷たっ! 何するんだよ、うわ、どこだ氷、あ、ここか」
あたふたと浴衣を探り小さくなった氷を掬いだしている。その様子がおかしくて、侑介はまた笑った。
「なに笑ってるんだよ。ひどくないか?」
「ひどいのはどっちだ。いきなりキスするとか」
「だって、佐田君が可愛かったから」
「はあ? だってじゃないだろ、可愛かったら誰にでもキスするのかよ変質者か」
侑介は体勢を起こして裾を直した。酔い覚ましの水を一気飲みする。昂輝は神妙な顔で、誰にでもじゃないよと言った。
「佐田君と話してるの楽しいし、よく笑うとこ可愛いし。風呂とかで、俺のことちょっと熱っぽい目で見てたし」
「見てない!」
名誉のために全否定しておくが、バレていたのか。羞恥で死にそうだ。
「えー、本当? あと、彼氏いないとかいうし」
「それは、昂輝が聞いたから答えただけだ! 大体おまえ、普通に女の子が好きな奴だろ」
「そのはずなんだけど、なんか自分でもびっくりするほど興奮して、制御できなかった。ごめん」
昂輝は正座して拝むように両手を合わせた。これ以上怒るのも馬鹿らしくなって、侑介は溜息をついた。何より、さっきのあの剣呑で性的な雰囲気が消え去ったことに安心する。
「もう、いいよ。ちょっと、びっくりしただけだから」
「でも佐田君」
「なに」
「キス、気持ちよかった、だろ?」
さっきまで謝り倒していたくせに、今度は悪びれもしない顔で侑介の股間を刺している。まだ熱は治まっていないそこは、浴衣の布を押し上げている。
「ただの生理現象だ!」
枕を掴んで、両腕で力任せに投げつけた。
温泉でリフレッシュしたからといって、いきなり仕事が上手く進むわけもなく、相も変わらず印刷工場では愚痴を浴びせられ、上司には叱られ、後輩が納期をミスったフォローで取引先に謝罪に行く羽目になった。目の前の西野は相変わらず難しい顔で蘊蓄を垂れている。
流石に再度のリテイクは避けたいがなんと説得したものか。
「それでは、こちらで社内稟議に回させていただきます」
「……え?」
空耳かと、思わず呆けた返しをしてしまった。
「どうかされましたか?」
「OK、ですか?」
確認すると、西野はにこりともせずにポスターの色校を指先で叩いた。
「OKです。これで行きましょう。この梨、最高です。癒されます」
癒される梨ってなんだ。相変わらずよく分からないがとりあえず青信号に変わったことに胸を撫でおろす。上手く進むわけもなくなかった。
「良かったです。それでは、こちらでよろしくお願いします。データは後ほどクラウドでお送りしますので。先ほどご指摘いただいたコラボ用パッケージのデザイン案は、再度修正してお送りします」
「よろしくお願いします」
宿題はあるが、とりあえずポスターの件は片付いた。肩の荷がひとつ下りた気分だ。
互いにデスクの資料を片付けていると、西野の動きがふと止まった。視線を辿ると、侑介の手帳を見ている。
「その付箋、素敵な色ですね。何色って言うのかしら」
ベージュ色の爪が手帳に張った付箋を指している。
「薄葡萄と言うそうですよ」
「へえ、秋らしくて素敵な色ですね。可愛いわ」
褒められたのが嬉しくて、侑介は鞄から新しいパッケージを取り出した。通勤の途中、錦糸町のロフトで全色まとめ買いした、昂輝の商品のひとつだ。
「沢山あるので、良かったら、おひとつどうぞ」
「いただいていいんですか? ありがとうございます」
西野が嬉しそうに微笑む。この人、小さな文具ひとつでこんな顔をするんだな。新しい発見に侑介まで嬉しくなった。
あの夜、侑介は自分の部屋に戻ってそれぞれの夜を過ごした。興奮でまったく眠気が襲ってこなくて、布団の中で身もだえしながら悩みに悩んで、結局、侑介は始バスで宿を発った。朝食も一緒に取ろうという約束は反故にした。
だって、あれ以上二人でいたら、本気で好きになってしまう。ストレート相手の恋なんて不毛なだけだ。
あのキスは、心の中の宝箱に飴玉としてしまっておく。
落ち込んだ時に取り出して舐めて、その甘さに浸って、そしていつかは無くなってしまう、飴玉だ。
コンビニで紅イモと栗のモンブランを買って帰社すると、社員通用口の前にあり得ない人物がいた。
「は?」
「お疲れ。タイミングばっちし。やっぱ運命だね」
「え、は? 昂輝?」
あまりのことに幻かと目をこすってしまう。間違いなく昂輝だ。見慣れないスーツ姿だし前髪も上げているが、確かに昂輝だ。
「久しぶり、佐田君」
「なんでここに」
「営業1課に電話したら、佐田君は外回り中で6時戻りだって聞いたからさ、待ち伏せしてた」
「そうじゃなくて、なんで東京にいるんだよ。てかなんで俺の会社知ってんの」
「地方の中小でも東京出張くらいあるし、佐田君、酔って社名も部署もぶちまけてたよ」
混乱する侑介と対照的に昂輝は飄々と説明する。
「だからって、なんで会社まで来るんだよ」
「ご挨拶だね。佐田君に会いにきたに決まってるだろ。とりあえず夕飯一緒したいんだけど、もしかして、今日残業?」
昂輝は手元のエコバッグを指している。
「あ、これは夜食じゃなくて、ケーキ。今日、後輩がミスしたから差し入れ的な」
「ふうん。優しいね」
正直に答えてしまって、後悔する。これは夜食で今日は残業だから帰ってくれと言えばよかったのに。
言えなかった。
上気する頬が嫌で奥歯を噛み締める。
だって、会いたかったんだ。馬鹿か、俺は。自分から切ろうとしたくせに。来てくれて嬉しいなんて。こんなにどきどきしてるなんて。
恋なんて、どうしようもない。
「佐田君。それ、後輩君に届けたらすぐに戻ってきて」
「なんで」
「今日はなんでばっかりだね。だって佐田君、今、すごい物欲しそうな顔してるよ」
「……っ、してない」
色気のある物言いにあのキスを思い出して、反射的に唇に触れてしまう。
「ほら佐田君。そういう仕草、反則だよ」
あの夜みたいに力強く手首を掴まれ、ビルの隙間に連れ込まれる。湿度に満ちた細い路地裏で昂輝は顔を寄せてくる。
「佐田君、キスしよう」
「しない」
「本当に? したくない?」
昂輝は容赦なく詰め寄ってくる。
「……っ」
「ほら、どっち」
「……知らない」
「知ってるだろ」
低い声が耳元を犯す。それさえも官能を揺さぶる。昂輝の指がゆっくりと唇をなぞる。侵入して、犬歯の裏をなぞる。
「佐田君。好きだよ」
「え?」
「好きだよ。よく笑ってちょっと口が悪くて、頑張って働いてる、男の佐田君が好きだよ」
まっすぐな告白にぶわりと鳥肌が立った。
目元が濡れて熱い。背中に当たるのは会社のビルなのに、どうしようもなく興奮する。掴まれた手首は痛いのに、もっと強く握ってほしいとさえ思う。
「こう、き。俺も、」
「うん」
その先の言葉を紡ぐ代わりに、昂輝の唇に噛みつくようなキスを仕掛けた。
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梨の二人、凄くテンポが良くてずっと読んでいたかったです。このシリーズの解説が海外ってなってるけど、こう言う日本の地方も良いですね。
BijouTheCatさま
久々の更新となってしまいました。感想ありがとうございます!
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BijouTheCatさま
こちらも感想ありがとうございます。
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書いてて辛かったので笑、次はハピエンものにしようと思います。