35 / 124
第三章 まだ見ぬあなたに、こんにちは
3-2
しおりを挟む
広いレストランの半分以上を使って設置されたビュッフェコーナーには、数えきれないほどの料理が並べられている。クリスマスのイルミネーションの下で輝くメニューは、まるで海賊の財宝のようだ。案の定、その中でも最も美しい場所に、ミサキはいた。
「マコト、見てよこれ! キラキラなスイーツが、こんなにたくさん! どれから食べればいいと思う?」と、いつものしっかり者のお姉さんな顔をどこかに投げ捨てて、子どものように無邪気にはしゃいでいる。
「まあ、どうせ全部食べるんだけど」
「ぜ、全部っ? スイーツだけでも二十種類くらいあるみたいだよ?」
「あら、余裕」と、マコトと話したことが最初の一歩を踏み出すきっかけとなったのか、ミサキは自分の大皿に次々とスイーツを乗せていく。雑誌や画像でしかお目にかかったことのない、宝石のようなケーキやゼリーが詰み上がっていく光景に、マコトは思わずため息をこぼした。
「すごいお店だよね。中学生だけで来ていい場所じゃない気がして、ちょっと気後れする」
「なに言ってるのよ。正々堂々と勝ち取った景品なんだから、胸を張って楽しみ尽くしなさいよ」
『豪華レストランビュッフェ五名様ご招待』を当てたマコトたちは、ちょうどお腹も空いたということで、そのまま公園内にあった高級料理店までやって来た。壁がほとんどガラス窓になっているお洒落なフロアからは、クリスマスマーケットのにぎやかな様子が楽しめる。制服姿の自分は場違いなのではとうろたえる小心者のマコトと違って、頼もしい仲間たちは平常通り。隣にいるミサキなど、ついには小さな声で軽やかに歌いながらスイーツを選んでいる。ふと、その曲調と歌詞に聞き覚えがある――ような気がした。
「……ミサキちゃん、その曲って」
「曲? え、アタシ歌ってた? うそ、やだっ」
無意識に歌を口ずさんでしまうほど上機嫌だったのだろう。珍しく素直に驚きながら首を振るミサキを、マコトは笑うでもフォローするでもなく、ただただ真剣な眼差しで見つめる。
「その曲、ボクもどこかで聞いたことがある気がするんだ」
なぜだろう。なにが、こんなにも気になるのだろう。自分でも不思議に思ったが、そんなマコト以上に不思議そうな表情を浮かべながら、ミサキが首を傾げる。
「この曲、マコトから教えてもらったのよ?」
「え?」マコトが、ミサキに。そんな記憶は、なかったはずだ。
「異世界で――その、色々あって、ほんのちょこっとだけ落ち込んでたアタシに、マコトが教えてくれたじゃない。『これを歌うと元気が出るんだよ』って」
「ボクが……?」
「マコト、見てよこれ! キラキラなスイーツが、こんなにたくさん! どれから食べればいいと思う?」と、いつものしっかり者のお姉さんな顔をどこかに投げ捨てて、子どものように無邪気にはしゃいでいる。
「まあ、どうせ全部食べるんだけど」
「ぜ、全部っ? スイーツだけでも二十種類くらいあるみたいだよ?」
「あら、余裕」と、マコトと話したことが最初の一歩を踏み出すきっかけとなったのか、ミサキは自分の大皿に次々とスイーツを乗せていく。雑誌や画像でしかお目にかかったことのない、宝石のようなケーキやゼリーが詰み上がっていく光景に、マコトは思わずため息をこぼした。
「すごいお店だよね。中学生だけで来ていい場所じゃない気がして、ちょっと気後れする」
「なに言ってるのよ。正々堂々と勝ち取った景品なんだから、胸を張って楽しみ尽くしなさいよ」
『豪華レストランビュッフェ五名様ご招待』を当てたマコトたちは、ちょうどお腹も空いたということで、そのまま公園内にあった高級料理店までやって来た。壁がほとんどガラス窓になっているお洒落なフロアからは、クリスマスマーケットのにぎやかな様子が楽しめる。制服姿の自分は場違いなのではとうろたえる小心者のマコトと違って、頼もしい仲間たちは平常通り。隣にいるミサキなど、ついには小さな声で軽やかに歌いながらスイーツを選んでいる。ふと、その曲調と歌詞に聞き覚えがある――ような気がした。
「……ミサキちゃん、その曲って」
「曲? え、アタシ歌ってた? うそ、やだっ」
無意識に歌を口ずさんでしまうほど上機嫌だったのだろう。珍しく素直に驚きながら首を振るミサキを、マコトは笑うでもフォローするでもなく、ただただ真剣な眼差しで見つめる。
「その曲、ボクもどこかで聞いたことがある気がするんだ」
なぜだろう。なにが、こんなにも気になるのだろう。自分でも不思議に思ったが、そんなマコト以上に不思議そうな表情を浮かべながら、ミサキが首を傾げる。
「この曲、マコトから教えてもらったのよ?」
「え?」マコトが、ミサキに。そんな記憶は、なかったはずだ。
「異世界で――その、色々あって、ほんのちょこっとだけ落ち込んでたアタシに、マコトが教えてくれたじゃない。『これを歌うと元気が出るんだよ』って」
「ボクが……?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
時間泥棒【完結】
虹乃ノラン
児童書・童話
平和な僕らの町で、ある日、イエローバスが衝突するという事故が起こった。ライオン公園で撮った覚えのない五人の写真を見つけた千斗たちは、意味ありげに逃げる白猫を追いかけて商店街まで行くと、不思議な空間に迷いこんでしまう。
■目次
第一章 動かない猫
第二章 ライオン公園のタイムカプセル
第三章 魚海町シーサイド商店街
第四章 黒野時計堂
第五章 短針マシュマロと消えた写真
第六章 スカーフェイスを追って
第七章 天川の行方不明事件
第八章 作戦開始!サイレンを挟み撃て!
第九章 『5…4…3…2…1…‼』
第十章 不法の器の代償
第十一章 ミチルのフラッシュ
第十二章 五人の写真
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる