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第三章 まだ見ぬあなたに、こんにちは

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 広いレストランの半分以上を使って設置されたビュッフェコーナーには、数えきれないほどの料理が並べられている。クリスマスのイルミネーションの下で輝くメニューは、まるで海賊の財宝のようだ。案の定、その中でも最も美しい場所に、ミサキはいた。

「マコト、見てよこれ! キラキラなスイーツが、こんなにたくさん! どれから食べればいいと思う?」と、いつものしっかり者のお姉さんな顔をどこかに投げ捨てて、子どものように無邪気にはしゃいでいる。

「まあ、どうせ全部食べるんだけど」
「ぜ、全部っ? スイーツだけでも二十種類くらいあるみたいだよ?」
「あら、余裕」と、マコトと話したことが最初の一歩を踏み出すきっかけとなったのか、ミサキは自分の大皿に次々とスイーツを乗せていく。雑誌や画像でしかお目にかかったことのない、宝石のようなケーキやゼリーが詰み上がっていく光景に、マコトは思わずため息をこぼした。

「すごいお店だよね。中学生だけで来ていい場所じゃない気がして、ちょっと気後れする」
「なに言ってるのよ。正々堂々と勝ち取った景品なんだから、胸を張って楽しみ尽くしなさいよ」

『豪華レストランビュッフェ五名様ご招待』を当てたマコトたちは、ちょうどお腹も空いたということで、そのまま公園内にあった高級料理店までやって来た。壁がほとんどガラス窓になっているお洒落なフロアからは、クリスマスマーケットのにぎやかな様子が楽しめる。制服姿の自分は場違いなのではとうろたえる小心者のマコトと違って、頼もしい仲間たちは平常通り。隣にいるミサキなど、ついには小さな声で軽やかに歌いながらスイーツを選んでいる。ふと、その曲調と歌詞に聞き覚えがある――ような気がした。

「……ミサキちゃん、その曲って」
「曲? え、アタシ歌ってた? うそ、やだっ」

 無意識に歌を口ずさんでしまうほど上機嫌だったのだろう。珍しく素直に驚きながら首を振るミサキを、マコトは笑うでもフォローするでもなく、ただただ真剣な眼差しで見つめる。

「その曲、ボクもどこかで聞いたことがある気がするんだ」

 なぜだろう。なにが、こんなにも気になるのだろう。自分でも不思議に思ったが、そんなマコト以上に不思議そうな表情を浮かべながら、ミサキが首を傾げる。

「この曲、マコトから教えてもらったのよ?」
「え?」マコトが、ミサキに。そんな記憶は、なかったはずだ。

「異世界で――その、色々あって、ほんのちょこっとだけ落ち込んでたアタシに、マコトが教えてくれたじゃない。『これを歌うと元気が出るんだよ』って」
「ボクが……?」
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