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第2章 水の都アクアエデンと氷の城

本格始動

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抱き抱えたもふもふはまったりとくっつき頭をスイに押し当てていた。
ヘレヘレと舌を上下せてたまにスイの顔をガン見している。
顔を近づけると鼻を噛んできた。

「噛まれた」

「可愛いですね!」

あむっ!と甘噛みしてまたヘレヘレするもふもふに、スイはまた顔を崩した。

「可愛い可愛い可愛い!」

グリグリと顔に頬擦りすると頭突きするように頭を押し当ててきた。
ゴン!
結構な衝撃である。




「これって噴水広場の掲示板でいいんですか?」

「はい!掲示板横にいる受付の方に声を掛けて発注頼むんです。それでバイトを頼みましょう!」

2人はフェアリーガーデンのバイトを募集する為に噴水広場へと向かっていた。
受付に発注を頼み、これを見たプレイヤーかNPCが受注。
ただし、他のクエストと違い雇い入れる為受けるには面接を必須条件に追加した。
これにより発注の為の金額が少し上がるが、より良いバイトを選ぶ為の出費である。


「すいません、お願いします」

「はい。あら、受注じゃないですね。…………………………はい、お受け致します。他に必須条件はございますか?…はい、かしこまりました。お預かりいたしますね」

受付のNPCにお金と依頼書を渡しお願いした時、聞いていたのかプレイヤーの人達がチラチラと見ていた。
掲示板に依頼書が貼られるのをじっと待つ姿をスイとリィンは苦笑して見てからその場を離れた。

その数分後、噴水広場は5枚の紙を巡って小さな乱闘が起こり運営が頭を抱えていた。
物を壊すくらいの乱闘で、全員にペナルティが課せられるのだが閑話休題。

「いいひと集まるといいですね」

「はい!…………動物好きな人がいいですねぇ」

もふもふを撫でながら言うと、視界に入る準備中の張り紙。
ペットショップで、かなり広いのが外装からもわかる。

「リィンさん!ペットショップです!」

「ペットが増えたから作るってサイトに載ってましたものね!」

「楽しみですね…」

現在ペットフードが無いため食事を必要とせず水のみ与えるようになっているが、ペットショップがオープンされたら食事が必須となるようだ。

「もふさん、もう少ししたらご飯が食べれるようになるよー!」

「ひゃん!」

「何時になったらワンって言えるんだろうねー」

尻尾をブンブンするもふもふにぎゅっと抱きしめて楽しみだね!
リードも買わないと、おやつでしょー
きゃんきゃん!!



「ただいまです!!」

フェアリーガーデンの扉を開けて中に入ると、オープンしたてだからかそんなに客はいなかった。
前から宿経営の噂は出ていたが、それでもいつからオープンとの話は出していなかった為たまたま看板を掲げた時にいた人が入ってきたという事だ。

テーブルは半分くらい埋まっていて全員が食事をとっていた。
安価で用意されている食事は好評でテーブルが料理で埋め尽くされ全員の表情は赤い。
酒でも飲んでいるのだろうか。

「お客様はいってますねー」

リィンが嬉しそうにいい、スイはもふもふを広場へと連れていった。

「あ、初めましてー」

中に入っていた見知らぬわんにゃんは初めて見る場所にキョロキョロしている。
もふもふを下ろすと、スイの腕に軽く爪をたてた。

「ん?」

「きゃん!きゃんきゃん!」

なんか必死。

「どおしたの?」

頭を撫でるとちょっと落ち着いた様子だがソワソワしているのがわかる。
知らないわんにゃんが居ることと、お客さんが増えてざわつきに増した環境の変化に戸惑っている様子が良くわかる。

「…うーん」

困ったようにしゃがみこみ、もふもふの頭を撫でると見知らぬわんにゃんも近づきスイの手にスリついて来て……………

「ううぅぅぅぅ………………」

「唸らない!」

軽く頭をポンッと叩くと尻尾がたれた。
シュンとしてうるうる目を向けてくる。

「仲良く出来るのかなぁ…」

茶太郎が休んでいる場所へとポテポテと元気なく歩き茶太郎の体の上にべローンと乗り上げた。
相変わらず尻尾は下がりお尻を向けているもふもふを茶太郎は舐めて慰めていた。

「……………だ、大丈夫かなぁ」

苦笑して様子を見ているスイの手にはお客さんのわんにゃんが撫でて撫でてと擦り寄って来ていた。

「スイちゃん、接客いいかな?」

顔を覗き込んできたセラニーチェに頷き軽く頭を撫でてから立ち上がった。

「あら、拗ねたのかしら?」

「かもしれないです。……もふー」

軽くパタパタと尻尾を振るがこちらを見なくすぐに尻尾はまたペタリと落ちた。

「……………だめですね」

「そうみたいねぇ」

拗ねてるもふもふは茶太郎に顔を埋めて尻尾を床にタシタシとあてる。
チラッとスイを見るがクラメンと話しているのに気づいて目を更に潤ませていた。



「人増えてきましたね!」

スイが来た時よりも増えだした客、埋まる席。
クリスティーナの料理を作る手が止まらない!
美味しそうな匂いが外にも出てるのか、扉を恐る恐る開けて中を見てくる人も増えてきた。

「いらっしゃいませ!フェアリーガーデンへようこそ!ここはお宿と食堂になってます!いかがですか?」
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