上 下
71 / 198
第2章 水の都アクアエデンと氷の城

公式イベント前夜

しおりを挟む
ゲームマスターが現れてから1週間、公式サイトのイベントページでは参加人数や、チーム編成が乗っていた。
ゲーム参加の締切が切られ、運営側がチームを分けたのだ。

アカチーム、アオチーム、ミドリチーム、キイロチームと、幼稚園のチーム分けみたいなの名前ではあるが、かなりの参加者が集まっていた。

我らフェアリーロードはそのミドリチームでの参加となる。
そして現在、イベントを翌日に控えている。
フェアリーロードは全員クランハウスに集まり最終確認だ。

「とうとう明日だな、準備はどうだ?」

「できる範囲は準備したよ!装備も新しくしたし、レベルもついでに上げたしな」

「わたしもー!手軽に食べれるのたっくさん用意したわよ!!」

くねくね健在のクリスティーナが、期待してていいわよ♡と言い、全員が視線を外した。
期待はしてるがインパクトが大きすぎる。

「俺も、レベル上げてカガリさんに盾の動き教えてもらいました!」

ファーレンがにこやかに笑って言った。
今までにない柔らかな笑顔だ。
肩の力が抜けてやっと本来のファーレンらしさが出てきている。

「スイちゃんはどうですか?」

「あ、はい。2週間合ったので新しい音楽を作ったのと、あと………」

「あと?」

「内緒です」

リィンがスイを見て聞いてきたが、スイは楽しそうに口元に人差し指を当てて黙秘。
タクがスイにメロメロになり、クリスティーナがあぁぁん!ずーるーいー!とくねくね。
タクのあまりの崩れ様にナズナが素振りをはじめて、イズナが必死に止めるが………………

「天罰」

「oh……………………………!!!!!!」

ピクピクと震えてうずくまるタクが床に倒れ込み男性プレイヤーが震え上がった。
女性陣も顔を引きつらせるが、特にリィンは悲壮な顔をしている。

「…………ナズナちゃん、もう少し手加減してあげて………」

「リィン、手加減したら付け上がる」

ふるふると首を降るナズナ

悪    魔   だ………!!!!

まだ素振りをしているナズナに全員が恐怖する。


「と、取り敢えず、明日に向けての作戦しようぜ」

タクから視線を外して進めるカガリに、全員が頷いた。あわれ、タク。

「まずは、1番の要チームの総大将を誰にするかはわからないけど、俺たちは俺たちで動きを決めておこう」

「基本は固まって支援を貰いながら捌いていくのが1番ですけどー」

「だれでもするわよね」

「特にこっちにはスイちゃんがいるからね、狙われるのは必須」

セラニーチェがスイを見ながら言う。

「奏者っていうのと、もうスイちゃんっていうブランドみたいのが出来ちゃったからね」

「フェアリーロードに居るってのもあるな」

小さくすいません…と呟くと全員が笑った。

「何謝っているのですかー、むしろここはチャンスなのですよー」

「チャンス…?」

「はい!言い方が悪いですけど、奏者はまだまだ地雷職と思われ狙われます」

「でも、そこには私たちフェアリーロードがいるし、なによりスイちゃんはただの奏者じゃないからね」

「いくらでも、ひっくり返すことができるわよ」

ウィンクしてアレイスターが締めると、スイはふむふむと頷く。
そこでクリスティーナが手を挙げた。

「スイがただの奏者じゃないってなんですか?」

「あら、知らなかったのね。……………規格外よ。」

「そう、規格外だな」

「これが支援職かって思うのですねー」

口々に言う規格外の言葉にクリスティーナは首を傾げている。
どれくらい動けるのか後程クリスティーナを連れてフィールドに行ったスイの実力を少しだけ見たが、それだけでクリスティーナの口が開きっぱなしだったとだけ伝えておこう。

「私はいつもと同じく支援中心でいい……のかな?」

「いいとー思うぅぅぅ…」

タクがゾンビの様に起き上がり椅子まで這いずって行った。

「お…おぃ、大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えるか、グレン………」

「「…………………まぁ、大丈夫だな」」

グレンとカガリがタクを憐れみながら見つめた。

「スイを総大将にって掲示板有るんだけど、それはどうする?」

その意見でるかもよ?
イズナがほら。と掲示板を表示すると、スイたんを守ろう!とでかでかと書かれていた。

「……………すげぇな。」

じゃあさ。こうなったら………………




フェアリーロードの作戦会議は雑談を踏まえながらも楽しそうに続いていた。
公式イベントは明日に迫っている、上位入賞を狙って全員はやる気に満ちていた。


『がんばろーーー!!!』
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~

黄舞
SF
 無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。  貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。  攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。  他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。  見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。  これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!  そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。 「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」 一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました 毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています 具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています 皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m 吉日 運営チーム 大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

処理中です...