上 下
48 / 200
第1章 はじめまして幻想郷

変則クエスト13

しおりを挟む
討伐目標の五体を倒したスイたちは、依頼人である屋敷の主人の元へと向かった。
長い地下を歩き1階に繋がる階段をリズミカルに上がる。

「やっと地下から出れますね!」

「ちょっとジメジメしてたものねー」

女性プレイヤーの皆がほっとしたように口々に言い、1階へと向かった。


「やぁ、お疲れ様。…………………ペットへの食事は失敗したようだね、せっかくあそこまで育てたんだがなぁ」

1階の最初に集まった部屋で、同じように椅子に座るこの屋敷の主人カウダークは笑いながら言った。

「…………よく笑って言えますねぇ?」

「うん?食事に君たちを用意したことかい?別にいいじゃないか!君たちは私たちと違って死んでも生き返るじゃないか!」

しかし、可愛いペットがいなくなったから、新しいペットを作らないとなぁ……
そんな不穏な言葉を綴るカウダークに、全員が顔を顰めていた。

「いやいや、しかしこのクエストはクリアとなった。
さぁ、報酬だ!」

全員に渡された多額の資金に、それぞれの職種に合った高位の武器だった。
武器は重さの感じない箱に入れられている。
大きさは皆同じで、武器の大きさに関わらず箱に収納出来るようだ。
プレゼントBOXと表示されている。
それぞれの資金とプレゼントBOXをしまい、カウダークを見る。

「いやはや、今回は食事はむりだったが、またよろしく頼むよ」

『二度と受けねーよ!!!』

おとといきやがれー!!という勢いで全員屋敷から飛び出したのだった。










「…………はぁ、ひっどいクエストだったわねぇ…」

「まったくだな」

噴水広場に着いた。
セラニーチェがため息を吐きながらベンチに座る。
ちょっと噴水の水が跳ねて頬を濡らした。

「…まぁ、金は助かるがなぁ」

ジャラリとお金の入った袋を持つカガリはちょっとニヤニヤ笑っている。

全員に配られたそのお金と武器にホクホクと笑ってしまう。
渡されたお金で目標のクランハウスは手に入れれそうだし、リンドーたちは武器は手に入ったから、装備を新調すると喜んでいた。
特にグレン59やリンドーは武器破壊されているので嬉しさ倍増である。

「…うーん、武器かぁ」

「どうしたんですか?」

「武器嬉しくないー?」

箱をじっと見るスイに、リィンとクラーティアが首を傾げるとスイはいいえ、違うんですと答えた。

「嬉しいんですけど、買ったばかりのこのイルカさん気に入ってるし、この新しい武器接近攻撃出来るのかなぁ…と」

まだ箱を開けていないため中身はわからない。
プレゼントBOXは完全ランダムらしいが、今回は高位武器が出るのは確定しているようだから損は無いとカガリは言った。

「レベルが上がると、武器重複とか武器入れ替えスキルが取れるらしいから良い武器なら持っておくのがいいと思うのですよー」

ふわりと笑って言ったのは、ハンマーを持って無表情で戦っていた女性だった。
纏めていた髪を解いて腰までのゆるふわウエーブを背中に流す。

あまりにも戦闘の時との違いにスイとファーレン、そしてリンドーたちは目を見開かせた。

「あらあら、どうしたのかしらー?」

頬に手を当ててうふふ、と笑うその女性はニコニコと笑っている。
あの中性的な雰囲気は一切なかった。


「ギャップモエー………ってやつ?」

「ナズナ、ちょっと違う」

「………違う?」

ナズナが女性の腰にくっついて言うと、イズナが手を振った
女性はあらあらーと言いながらもナズナをぎゅーっと抱きしめる。

「あいかわらず、デオドールのおっぱいは最高」

女性、デオドールが抱きしめた事により押し付けられる胸に、ナズナが親指を立てた。
そして、キラリと光る目でスイを見る

「スイのおっぱいも………よさそう」

「お、おぉう、予想外の壊れキャラ…」

スイは苦笑しながらも、次はスイと言うナズナを見ていた。





こうして、変則クエストは終了した。
リンドー達とはフレンド登録をして強くなるからまた共闘したいとの希望にみんな笑って頷いていた。
次は足を引っ張らない、たたかってやる!と闘志を燃やして別れていった。

そしてスイたちはクランハウスを手に入れる為に次の街を目指す。
ボス戦を控えている今、少しの休憩と物資の補給が必要な為、1度ログアウトする事にきめた。





よっし、次はボス戦!
頑張るぞー!!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~

最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」 力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。 自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。 そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈ 身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。 そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる! ※この作品はカクヨムでも投稿中です。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

婚約破棄? ではここで本領発揮させていただきます!

昼から山猫
ファンタジー
王子との婚約を当然のように受け入れ、幼い頃から厳格な礼法や淑女教育を叩き込まれてきた公爵令嬢セリーナ。しかし、王子が他の令嬢に心を移し、「君とは合わない」と言い放ったその瞬間、すべてが崩れ去った。嘆き悲しむ間もなく、セリーナの周りでは「大人しすぎ」「派手さがない」と陰口が飛び交い、一夜にして王都での居場所を失ってしまう。 ところが、塞ぎ込んだセリーナはふと思い出す。長年の教育で身につけた「管理能力」や「記録魔法」が、周りには地味に見えても、実はとてつもない汎用性を秘めているのでは――。落胆している場合じゃない。彼女は深呼吸をして、こっそりと王宮の図書館にこもり始める。学問の記録や政治資料を整理し、さらに独自に新たな魔法式を編み出す作業をスタートしたのだ。 この行動はやがて、とんでもない成果を生む。王宮の混乱した政治体制や不正を資料から暴き、魔物対策や食糧不足対策までも「地味スキル」で立て直せると証明する。誰もが見向きもしなかった“婚約破棄令嬢”が、実は国の根幹を救う可能性を持つ人材だと知られたとき、王子は愕然として「戻ってきてほしい」と懇願するが、セリーナは果たして……。 ------------------------------------

処理中です...