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新種 ググネヴァ
しおりを挟むある日のこと、今日は朝早くから大雪が降っていた。
30cm程雪が降り積もり、庭は1面雪景色。
本当に豪雪の年なのだろう、去年はここまでじゃなかったな、と窓から外を眺める。
夜中から降っていたらしい雪は、冬の鋭い寒さを運んでくるようだが、芽依がいる室内は温められていて心地好い温度を保っていた。
暖かいなぁ……と思いたがら椅子に戻ろうとした時、何かが目の端に捉えた。
「……え、なにあれ」
「どうした? 」
窓に近づき外を見る芽依の斜め後ろにシュミットが立ち同じ方向を見る。
今日の豪雪にどの幻獣も室内に入れているのだが、ガガディの小屋の扉付近にまるで豚のような姿の幻獣がいるのだ。
白と黒のまだら模様で、鼻ぺちゃなその幻獣は見たことがない。
あれはなに? とシュミットを見上げると、眉をひそめて見ていた。
「……メディトーク」
『あ? 』
「あれ、なんだ? 」
『あれってなんだよ』
ノシノシと近付き芽依とシュミットの上まで来る。
見上げると黒光りする腹部が見えて、思わず手を伸ばし撫でると、沢山ある足でそっと避けられた。
よくよく考えたら、人型のメディトークのお腹を撫で回している事になる。
「いかん、痴女になる」
「……今更そんな心配してるのか? 」
散々芽依に襲いかかられているシュミットは呆れているが、芽依はあくまで淑女です、を通すらしく、おすまししている。
『…………なんだありゃ、新種か? 』
「メディトークも知らないならそうかもしれないな」
新種の言葉におすましは消えた。
身を乗り出し窓を開けようとする芽依をメディトークがすぐに抑えてとめる。
『さみぃから、やめろ。風邪ひく』
「気になるよぉ」
『箱庭見ろ、箱庭を』
芽依はなるほど……と頷き箱庭を出すと、ヒョイとメディトークに抱えられて窓際から離された。
「えーと、ガガディからの派生、新種ググネヴァ…………」
「……ググネヴァ……」
初めて聞く……とフェンネルも箱庭を見る。
説明
豪雪が続いた日にガガディから派生して生まれた新種のググネヴァ。
牛と豚の中間のような味で、部位によりとろける口溶けや弾力のある場所がある。
味は少し淡白ではあるが、胸焼けや胃痛を防ぐ効果がある。
高齢であればある程旨味を感じる。
庭の持ち主 メイ の庭で豪雪の日に生まれる希少種。
「……………………メイ」
シュミットがゆっくりと芽依を見る。
説明文から目を離さなかったが、呼ばれてやっと箱庭から目を離した。
「……お前は、いくつ変な生き物を作る気だ」
「私じゃないです」
「メイちゃんの庭だからだよ」
「私じゃないよ、フェンネルさん」
ジッと芽依を見る2人に首を横に振る。
違うと言っても納得しない2人だが、メディトークが窓の外を見るハストゥーレの青ざめた顔に嫌な予感をして立ち上がった。
膝に座っていた芽依はフェンネルの隣に下ろされ、歩くメディトークの巨大な背中を見る。
『どうした』
「……あれ、ググネヴァが……」
『……さすがメイだな』
ハストゥーレの青ざめた理由は、ググネヴァがガガディの子供を食べようとしていた所だった。
母のガガディに後ろ足で蹴られて吹き飛ばされたググネヴァ。
子を守るための戦いが始まった。
熱い戦いを始めたすぐ近くで、ガガディが苦しみ出し、少しずつググネヴァに変わっていく。
箱庭には、ガガディの上にRevolution! と虹色で出ているのだが、確かに新種に変わるのは革命なのだろう。
「……新種の生まれ方がクセつよ」
「流石メイちゃんだよね」
「絶対褒められてない……あれ、肉質upって出る」
沢山飼っているガガディがググネヴァに革命が起きて新種になる。
そして、何故か戦いだし肉質upしているようだ。
しかも、ガガディもググネヴァもである。
名前の横にLv1と書かれているのがすごい勢いで上がっていく。肉質を示しているのが表示されているのだろう。
レベルが上がっていき、Lv50になるとハイレアと変わった。
存在自体がレアだから、ハイレアにかわったのだろうか。
更にレベルを上げてプレミアになるガガディやググネヴァもいる。
「……もう、なんかごめん」
「鳥だって変な進化してるし、今更かな」
あはは、と笑って言うフェンネルだが、室外から聞こえるバキィ! ドゴォ! というまるで格闘をしているような音に遠い目をする。
「……ディメンティールさん、あなたの力ってこんな感じなんですか……」
「いやぁ、こんなおかしな成長するのはメイちゃんだからでしょ」
「ディメンティールにこんな力はないぞ」
「………………」
箱庭の中では、メディトークがプレミアの2体を吹き飛ばして仲裁していた。
他にも喧嘩中がそこかしこにいて、これからメディトークは走り回るのだろう。
芽依は走り回るメディトークを見てから、もう一度箱庭を見た。
ググネヴァの注意書きには、こう書かれてある
肉質が上がる度に、味は絶品に。
無意識に涎が出そうになるのは、きっと仕方ない。
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