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体調管理もご主人様のお仕事です
しおりを挟むパール公国が落ち着きドラムストに帰ってきたのは、7日後だった。
手助けできる範囲を終わらせた芽依達は、セルジオやミカ、アウローラを残して先に帰ってきたのである。
「はぁぁぁぁ、帰ってきたぁ! 」
「メイさまぁ!! お帰りなさいませぇぇ」
「あ、パピナスさん、ただいまぁぁぁ?! ごふっ!」
体当たりして熱烈歓迎するパピナスの爆発的なお胸に顔が埋まる。
そんな芽依に気付かずグリグリと頭を擦り付けるパピナスは喜びを爆発させていた。
「お待ちしておりました! このパピナス、先に帰れと言われ、悲しみに暮れながら帰宅し、毎晩枕を濡らしておりました! えぇ、メイ様の言いつけをしっかりと守りメンフィスの庭の散歩もさせました! お庭のお手入れもしました! どうか! ご褒美を下さい! メイ様ぁぁぁぁぁ!! 」
『……ご褒美の前に死ぬぞ』
「はっ?! 」
完全に埋まっている芽依を見下ろしパピナスは慌てて離す。
そして、しゃがみこみ下から芽依を見上げた。
「申し訳ありません……是非処罰を……メイ様のお胸で窒息させてください……」
「ちょーっと! それはただのご褒美! それなら僕もしたいよ! 」
「まあ!! いつも一緒のフェンネル様は譲るべきよ! 」
「もう本当に遠慮がなくなったなぁ……」
「遠慮してたらメイ様との触れ合いが得られないもの!! 」
両手を動かして文句を言うパピナスの胸がぶるん! と暴れ、それを見た芽依は自分のを見る。
無言になる芽依の後ろから現れたのは茶色いスリーピース姿のメディトーク。
上から覗き込むように芽依の胸元を見てから、くしゃりと頭を撫でてきた。
「……え、なに」
「ん? いや。前も言ったが別に小さくねぇよ」
「………………くっそ。言ってることセクハラなのに見た目が良いと注意しずらいじゃないか」
ボスッとメディトークの腕を軽く殴るが、小さく笑い、また頭を撫でて離れていくメディトークに、くぅ……と声を漏らす。
そして、すぐ近くにいるハストゥーレに抱きついて胸に頭をグリグリと押し当てた。
「…………はぁ。ハス君、ちょっと食べようかぁ」
「えっ」
「あの時から食べてないからそろそろ定着用に食べた方がいいんじゃないかなぁ」
「…………はい」
芽依が言うのは、定着の為に芽依を食べる事だ。
1度移民の民の血肉を知ると、中毒のようにそれを求める。
それはハストゥーレも同じで、パール公国にいる時に何度も衝動的に芽依を食べたくて仕方なくなり、泣きそうになりながら芽依に縋り付くハストゥーレを家族たちが抑える場面か何度もあった。
食べるのは定着の為だから、それ以外は駄目だと何度も言われたが、それでも求めて泣くハストゥーレに芽依も泣きそうになっていたのだ。
求めてくれるのに、それにこたえれない。
こたえてはいけない。
だから、7日に1度と決めた定着の日はたっぷりハストゥーレを甘やかすと決めたのだ。
「ハス君」
「ご主人様……」
部屋を移動してハストゥーレのソファの上に2人で座る。
横に並んで座ったハストゥーレは、芽依を求めて熱い息を吐き出し目をトロンとさせている。
赤らめた顔で芽依を見るハストゥーレに、にっこりと笑った。
「…………食べていいよ」
両手を広げて言う芽依に飛び掛るように抱き着き、肩が出るように強引に服を引っ張り下ろして肩に唇を当てた。
震える手で芽依をきつく抱きしめ、うぅ……と唸り声を上げる。
「ハス君? 」
「ご主人様を……傷付けたくは、ありません」
「傷付かないよ」
「いいえ! ご主人様を食べるなんて……したくはないのに……喉が渇いて……食べたくて仕方なくて……ご主人様の全てが欲しくなるのです」
「いいよ」
芽依が躊躇せず返事を返すと、さらに抱き締め首を横に振る。
そんなハストゥーレの頭を撫でて、髪をハストゥーレがいない方に流し首や肩を顕にした。
匂い立つ程に魅力的に見えてハストゥーレは喉を鳴らす。
「……ご主人様……食べたい」
「食べて」
ぐっ……と体をおさえつけて覆い被さるようにして肩に歯を立てた。
「ん……」
ぶつ……ぶちっ……と皮膚に歯が入り肉を千切る音や衝撃が体に響く。
なのに、何故か痛みは全くなく、少し擽ったいくらいだ。
身をよじるが、ハストゥーレの両腕はしっかりと芽依を抱え込んで離さない。
「は……はぁ……おいし…………」
ごくん……と喉を鳴らして飲み込む。
芽依の血肉は口に入ると蕩ける甘いスイーツのようで、滑らかで舌で簡単に押し潰せた。
生臭さは一切なく、美味さしかない。
肩から流れる血液を舐めとると、唇が真っ赤に染まる。
はぁ……と息を吐き出し、握りしめていた手を引っ張り指先を口に含む。
肩の肉のように食い尽くすのだろうかと思っていたが、とても丁寧に舐めてくる。
「……ハス……君 擽ったいよ」
「ご主人様……まだ……もっと……」
「うん……噛んでもいいよ」
泣きながら縋り付くハストゥーレ。
食べたい、傷付けたくないと葛藤している。
震える手で、芽依の手首が赤くなるほど掴み、これ以上噛みつかないように耐えている。
そんなハストゥーレを甘やかに促し噛むように言う芽依を見て、泣きながら肩に顔を寄せた。
「ふ……うぅ……ご主人様ぁ……」
「うん……うん」
「ごめんなさ……」
「泣かなくていいんだよ、謝らなくていいんだよ」
しがみつくハストゥーレの綺麗な緑色の髪が芽依の肌を擽る。
露出した肌に顔をくっつけ擦り付くハストゥーレを抱き締める。
どんなに嫌がっても、泣いても、芽依はハストゥーレが食べる事を強制する。
中毒に苦しむとわかっていても、ハストゥーレがハストゥーレとして生きる為に。離さない為に。
「…………ふっ」
顔を上げて見てくるハストゥーレ。
血液でテラテラと光る唇に視線が向くと、強く押されてソファに倒れ込んだ。
熱にうかされたハストゥーレは芽依の唇をじっと見ていて、その間も流れる涙が芽依に滴り落ちる。
「……ハス君? 」
「触れたい……です」
指先で芽依の唇をなぞる。
だが、ギリギリ残っている理性が必死にハストゥーレの行動を抑制した。
「…………ごめんなさい」
「なんで謝るの? 」
「私は……」
「ふ……ふふ……あのハス君が可愛くキスをお強請り……可愛い……本当に可愛い」
芽依は笑いだし、見上げてハストゥーレの首に腕を回した。
「ほら、おいで」
目を細めて穏やかに笑う芽依からの誘惑に従うように、ハストゥーレは芽依に覆いかぶさり蕩けるように甘い唇に自分のを重ねた。
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