簡単ズボラ飯

はじめに

　私に料理を教えてくれた人達の言葉の中で、最も印象に残っているのは
『オリーブオイルと塩さえあれば、たいていの食材は焼くだけで美味しいごちそうになる』
　というものです。

　その人はイタリアンが専門だったので『オリーブオイル』と言っていましたが、ごま油でもバターでもいいのだと思います。

　それから、調理法も『焼く』としか言いませんでしたが、蒸すでも煮るでもいいのでしょう。

　とにかく『何かしらの油脂と何かしらの調味料があれば、たいていの食材は火を通すだけで美味しくなる』というようなことが言いたかったのだと思います。

　最初にその言葉を聞いた時は、『もっと手間暇かけて作る料理の方が、美味しいに決まってるじゃん』と思っていましたが、その人から料理を教わるうちに、『その通りだな』と感じるようになりました。

　手間暇をかけて作る料理だって、もちろん素晴らしいと思いますし、そのような料理でなければ通用しない場面というのもあります。

　けれども
「最低限の手順と最小限の味付けで、素材の旨みを最大限に引き出す」
　というやり方もあるのだということを、その人は私に教えてくれました。

　それから、調味料の量や加熱時間などについても、数値を明言しない人でした。

「どれくらい調味料を入れればいいですか？」
　と聞けば
「美味しく感じられる量を入れて」
　と言うし
「加熱時間はどれくらいですか？」
　と尋ねれば
「食材にほどよく火が通るまで」
　という答えが返ってくるのです。

　慣れるまでは「それってどれくらいなの？！」と悩みまくりましたが、今思えば、これ以上に的確な答えなどないような気さえします。

　料理本などのレシピに書かれている分量や加熱時間は、あくまで目安なのでしょう。

　味覚は個人によって異なりますし、体調にも左右されます。加熱時間だって、季節や食材の厚さ、使用する調理器具の性能、更には食べる人の好みによって、大きく変わります。

　だからきっと、その人は正確な分量や加熱時間を明言しないことによって、食べる人に合わせて調理することの大切さを、私に教えてくれたのだと思います。

　ここでご紹介するレシピ（というほどのものではありませんが）は、友人や家族、知人などに教えてもらったものや、自分で適当に作ったものばかりなので、人によっては好みに合わないかもしれませんし、調味料の分量や加熱時間などの数値も明示していません。

　ただ、私が「美味しいな」とか「手軽に作れていいな」と感じたものを、大雑把に書き記したものに過ぎません。

　手軽に作って食べられる『簡単ズボラ飯』の数々。
　もしよろしければ、ぜひお試しください。