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第二章 洞窟の聖地

第49話 対トルネードゴーレム

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■沖永良部島 大樹ダンジョン 風の渓谷 ボスの間

 〈ブーストダッシュ〉で加速した大振りの一撃が風のバリアで塞がれる。
 普通のスコップだったら、これで壊れそうだが、アダマンタイトスコップは傷一つなかった。

「丈夫なのはいいが、バリアとかには意味がないのは困るな」
「サグル様、下がってくださいませ!」

 俺の後ろから大声が聞こえ、ストームゴーレムとの間合いを取ると背後から雷撃が飛んでトルネードゴーレムの表面に当たった。
 バリバリという電撃の音が響き、風のバリアが弱まる。
 電撃が効果的なようだ。

「スメラギの攻撃が効いているな、俺は援護に回る。メインでスメラギが戦ってみてくれ」
『わかりましたわ』
 
 俺が通信で伝えると、高速移動してきたスメラギが横を通り過ぎてトルネードゴーレムに迫る。
 帯電させたエストックでもって、トルネードゴーレムの風でできたボディの隙間から赤い球体のコアを突いていった。
 叫び声などは聞こえないが、もがくような動きをしているので弱っているように思える。
 華麗な立ち回りは迷宮令嬢の名前に負けていなかった。

「何か動きがおかしくありません?」
「動き? 敵がか?」
「いえ、キャサリンさんです。どこか焦りの様なものが動きに見えます」

 いつの間にか近くに来ていた織香がキャサリンの動きの異常さを訴えてきる。
 格闘家としての目線だろうか、俺にとっては華麗な動きでも細かい違和感に気づいたようだ。
 トルネードゴーレムが腕の様なものを振り上げて、スメラギを狙っているが、彼女は上手に回避しコアを突く。
 ゴーレムの動きが止まり、勝負が決まるかと思ったとコアが強く輝いた。
 
「スメラギ! 何か来るぞ!」
「いえ、ここで先に決めますわ!」

 織香の言っていたことが、俺にもわかった。
 彼女は何か焦っている。
 だが、それに気づくのが遅かった。
 コアから竜巻が飛び出したのである。

「きゃあぁぁぁぁ!」

 煽られて、竜巻で全身を刻まれたスメラギが吹き飛ぶ。
 俺は飛んで行ったスメラギを〈粘着糸〉で絡めとって引き寄せた。

「織香、ゴーレムの方を頼む!」
「わ、わかりました!」

 竜巻を放って落ち着いたゴーレムのコアが風のボディで包まれる前に織香が拳を叩き込む。
 コアが砕けて、トルネ―ドゴーレムが消えると共に俺はスメラギを背負ってセーフエリアに向かって駆け出した。

「無茶する奴じゃないはずなのに……一体どうしたんだ?」

 俺の問いかけに返事はない。
 大岳ダンジョンで、トーコが重傷を受けていたことを嫌でも思い出してしまうのだった。
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