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第二章 洞窟の聖地
第32話 スタンピード再び
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■上野 ホテル スメラギ スイートルーム
〔鐘丹生 燈子の摂取を確認しました。ユニークスキル〈超鑑定〉を獲得しました〕
端的にまとめれば、どうやら”食べる”には複数の意味で適応がなされ、潜在能力でさえ獲得できることが分かった。
そして、トーコ先生はとても可愛かったとだけ言っておく。
チュンチュンという雀の鳴き声と共に目が覚めるというシチュエーションを俺が味わうとは思わなかった。
「ど~したんだい?」
眼鏡越しでないトーコ先生の瞳が俺を見つめてくる。
ベッドの上でシーツを胸元までかぶっているが、もちろん裸だ。
「いや、昨日のことをちょっと思い出してた」
「う~、恥ずかしい~。ワタシは初めてだから~」
もぞもぞとシーツを被ってしまうトーコ先生……いや、トーコの頭を優しくなでる。
ダンジョンで織香を助けてから、俺の人生はだいぶ変わってしまった。
こんな未来があるとは、大学に入ったときの俺にいっても笑い飛ばされるだろう。
「さて、朝食をどうするかだが……先にシャワーか」
俺は頭をぼりぼりと掻きながら、今日のこれからのことを考えていたら部屋の電話が鳴った。
裸のままでその電話をとると、フロントではなく聞き覚えのある声が聞こえてくる。
『サグル様、おはようございます。急いでTVをつけてもらえますか?』
「ああ……あれ、リモコン」
リモコンを探していると、トーコがベッドの脇にあったリモコンを操作してTVを付けてくれた。
TVではレポーターが大声で叫んでいる場面が映っている。
場所はこれから行く予定だった洞窟の聖地こと沖永良部島(おきのえらぶじま)の周辺だ。
『沖永良部島に突如として生えた木から、飛行系モンスターが飛んでいっています。これもスタンピードでしょうか! 現在、航空自衛隊が迎撃のため出撃しています』
レポーターが叫んでいる様子が映っていて、チャンネルを変えても同じような光景ばかりである。
「スタンピードが急に起きるなんて、何が原因なんだ?」
『それはわかりませんわ。ですが、予定を繰り上げて動く必要がありますの。急いでロビーまで下りてきてくださいませ。織香さんとイカルさんにも連絡して集まってもらうように連絡済みですわ』
「わかった……ん? トーコ、先生は聞かないのか?」
『御冗談を、宿泊者でお二人一緒じゃありませんの』
そうだ、これは携帯でもDphoneでもなくホテルの備えつけの電話だった。
よくよく考えればスメラギって、迷宮令嬢の名字なんだから筒抜けなのだろう。
「そういうことだから、着替えてからすぐに出発みたいだ」
「わかったよ~、けど、シャワーぐらいは浴びようか~」
「そうだな……」
さすがにアレな匂いをさせていくわけにもいくまい。
それくらいの常識は俺にもあった。
■上野 ホテル スメラギ ロビー
30分後くらいに俺とトーコはロビーに降り立つとすでにメンバーはそろっていた。
迷宮令嬢のパーティは初めて見るが、厳つい男達だらけでなんというか、美女と野獣というのがしっくりくる。
「自衛隊らしいのはいないが……」
「そちらは後で合流する。藤堂長官もスタンピードのへの対応が急務だからな」
見たことのない銀髪で黒いロングコートを着ている男が俺の疑問に答えた。
静かなたたずまいをしているが、この中にいる全員の中で一番強いんじゃないかと俺の直感が訴えていた。
「銀髪の強そうな人……もしかして、うわさのチェストマンでしょうか?」
俺の隣にやってきた織香がこそこそと話しかけてくる。
ダサい通称なので、聞かせたくないのはわかる気がした。
「じゃあ、まずはこの2チームで事にあたるということですね? 九州の方へどうやって移動するの? 羽田までいって飛行機だとしても自衛隊の駐屯地から飛ぶとしても結構時間がかかると思いますが……」
外面の丁寧な口調のイカルが銀髪の男に質問を投げかける。
「大丈夫だ。現地に直送する」
「「「は?」」」
その場にいた全員が疑問の声を上げ、男に視線が集中した。
「ここでは何かあった時困る。外でやるぞ」
用件だけを端的に使えるところを見ると無駄が嫌いな奴なのかもしれない。
まぁ、仲良くしようとは思わないが、もう少しいろいろとあるんじゃないか?
俺らは銀髪の男の後ろについていき、ホテルの裏にある駐車場へ出た。
「物資は俺が届けるが回数や時間はまだ未定だ。現地で臨機応変に対応をしろ」
そういうと、銀髪の男は空中から野太刀を取り出し一刀のもとに空間を斬り裂いた。
斬り裂いた部分が広がり、その部分から覗いているのは駐車場ではない森が見える。
「〈次元門〉だ。ここを通ればすぐに沖永良部島(おきのえらぶじま)だ。疑問も、質問も聞かない。時間がないから、すぐに動け」
男の言葉に迷宮令嬢のチームが先に出発した。
この〈次元門〉を利用した経験があるのだろう。
「サグル~、キミも〈潜在能力:超鑑定〉があるから、相手を意識してみるといいよー」
トーコの言葉に思い出したかのように、意識して銀髪の男を見た。
男の名前は【島津カイト】、噂に聞くチェストマンその人である。
〔鐘丹生 燈子の摂取を確認しました。ユニークスキル〈超鑑定〉を獲得しました〕
端的にまとめれば、どうやら”食べる”には複数の意味で適応がなされ、潜在能力でさえ獲得できることが分かった。
そして、トーコ先生はとても可愛かったとだけ言っておく。
チュンチュンという雀の鳴き声と共に目が覚めるというシチュエーションを俺が味わうとは思わなかった。
「ど~したんだい?」
眼鏡越しでないトーコ先生の瞳が俺を見つめてくる。
ベッドの上でシーツを胸元までかぶっているが、もちろん裸だ。
「いや、昨日のことをちょっと思い出してた」
「う~、恥ずかしい~。ワタシは初めてだから~」
もぞもぞとシーツを被ってしまうトーコ先生……いや、トーコの頭を優しくなでる。
ダンジョンで織香を助けてから、俺の人生はだいぶ変わってしまった。
こんな未来があるとは、大学に入ったときの俺にいっても笑い飛ばされるだろう。
「さて、朝食をどうするかだが……先にシャワーか」
俺は頭をぼりぼりと掻きながら、今日のこれからのことを考えていたら部屋の電話が鳴った。
裸のままでその電話をとると、フロントではなく聞き覚えのある声が聞こえてくる。
『サグル様、おはようございます。急いでTVをつけてもらえますか?』
「ああ……あれ、リモコン」
リモコンを探していると、トーコがベッドの脇にあったリモコンを操作してTVを付けてくれた。
TVではレポーターが大声で叫んでいる場面が映っている。
場所はこれから行く予定だった洞窟の聖地こと沖永良部島(おきのえらぶじま)の周辺だ。
『沖永良部島に突如として生えた木から、飛行系モンスターが飛んでいっています。これもスタンピードでしょうか! 現在、航空自衛隊が迎撃のため出撃しています』
レポーターが叫んでいる様子が映っていて、チャンネルを変えても同じような光景ばかりである。
「スタンピードが急に起きるなんて、何が原因なんだ?」
『それはわかりませんわ。ですが、予定を繰り上げて動く必要がありますの。急いでロビーまで下りてきてくださいませ。織香さんとイカルさんにも連絡して集まってもらうように連絡済みですわ』
「わかった……ん? トーコ、先生は聞かないのか?」
『御冗談を、宿泊者でお二人一緒じゃありませんの』
そうだ、これは携帯でもDphoneでもなくホテルの備えつけの電話だった。
よくよく考えればスメラギって、迷宮令嬢の名字なんだから筒抜けなのだろう。
「そういうことだから、着替えてからすぐに出発みたいだ」
「わかったよ~、けど、シャワーぐらいは浴びようか~」
「そうだな……」
さすがにアレな匂いをさせていくわけにもいくまい。
それくらいの常識は俺にもあった。
■上野 ホテル スメラギ ロビー
30分後くらいに俺とトーコはロビーに降り立つとすでにメンバーはそろっていた。
迷宮令嬢のパーティは初めて見るが、厳つい男達だらけでなんというか、美女と野獣というのがしっくりくる。
「自衛隊らしいのはいないが……」
「そちらは後で合流する。藤堂長官もスタンピードのへの対応が急務だからな」
見たことのない銀髪で黒いロングコートを着ている男が俺の疑問に答えた。
静かなたたずまいをしているが、この中にいる全員の中で一番強いんじゃないかと俺の直感が訴えていた。
「銀髪の強そうな人……もしかして、うわさのチェストマンでしょうか?」
俺の隣にやってきた織香がこそこそと話しかけてくる。
ダサい通称なので、聞かせたくないのはわかる気がした。
「じゃあ、まずはこの2チームで事にあたるということですね? 九州の方へどうやって移動するの? 羽田までいって飛行機だとしても自衛隊の駐屯地から飛ぶとしても結構時間がかかると思いますが……」
外面の丁寧な口調のイカルが銀髪の男に質問を投げかける。
「大丈夫だ。現地に直送する」
「「「は?」」」
その場にいた全員が疑問の声を上げ、男に視線が集中した。
「ここでは何かあった時困る。外でやるぞ」
用件だけを端的に使えるところを見ると無駄が嫌いな奴なのかもしれない。
まぁ、仲良くしようとは思わないが、もう少しいろいろとあるんじゃないか?
俺らは銀髪の男の後ろについていき、ホテルの裏にある駐車場へ出た。
「物資は俺が届けるが回数や時間はまだ未定だ。現地で臨機応変に対応をしろ」
そういうと、銀髪の男は空中から野太刀を取り出し一刀のもとに空間を斬り裂いた。
斬り裂いた部分が広がり、その部分から覗いているのは駐車場ではない森が見える。
「〈次元門〉だ。ここを通ればすぐに沖永良部島(おきのえらぶじま)だ。疑問も、質問も聞かない。時間がないから、すぐに動け」
男の言葉に迷宮令嬢のチームが先に出発した。
この〈次元門〉を利用した経験があるのだろう。
「サグル~、キミも〈潜在能力:超鑑定〉があるから、相手を意識してみるといいよー」
トーコの言葉に思い出したかのように、意識して銀髪の男を見た。
男の名前は【島津カイト】、噂に聞くチェストマンその人である。
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