上 下
10 / 13

第10話 織姫 VS 迷宮令嬢

しおりを挟む
■DAI Prark Dungeon Villege 屋内シミュレーター

 先に接敵したのは姫野だった。
 姫野はSTRとAGLを高めている、軽装戦士型のスタイルである。
 素早い動きはスメラギよりも得意なようだ。
 
「はぁぁぁっ! せいっ!」
 
 ガントレットで殴り、背後のゴブリンを蹴りでいなす。
 複数人の対戦はであるが、今は装備も万全で体調もいいからか姫野の動きは良かった。

「やるなぁ……あれでBランクか」
「冒険者のランクは直接的な実力もあるけど、素材を持ってきた貢献度もかかわってくるからねぇ、単純な力は冒険者ランクではわからないんだよねぇ」

:ほんそれ
:冒険者ごとのランキングとか作れないんかな?
:何を基準に作るかだよなぁ
:ステータスとか?
:どうやってそのデータを取るんだよw

 俺とイカルは姫野がゴブリンを倒していく様子をみながら、話をしているとギャラリーから大きな歓声があがる。
 視線をそちらに向ければスメラギがハルバードから雷撃を飛ばしたり、まとわせて払ったりしながら戦っていた。
 堅実な戦いをする姫野と対照的にド派手で見栄えがいい。

「ゴブリン程度では肩慣らしにもなりませんわね。せめて見栄えのいい戦いをしてギャラリーやサグル様にアピールしませんと」
「むむむぅ! 派手さだけじゃ、サグルさんは惹かれないですからね!」

 そういって姫野はダンスをするかのように動き回ってゴブリンを倒す。
 スパッツを履いてはいるものの、スカートが揺らぎ、健康的な尻が見えるのは派手さ以上のものがあった。

「サグルも男の子だねぇ」
「うるさい、余計なことを言うな……」

 ニヤニヤ笑って弄ってくるイカルを黙らせて、勝負を見守る。
 俺は冒険者として戦うことに主眼を置いてはいなかったが、生き延びるための泥臭さや効率化よりも配信していくならば、姫野やスメラギのような華があったほうがいいというのがよく分かった。

「どちらも凄いな。圧倒される」

:スコップ師匠の含蓄がんちくのある一言いただきました!
:さっきまで鼻の下伸ばしてたのに
:美女二人に気に入られるって、どんだけ前世で徳を積んだんだ?

 短い俺のコメントだったが、チャット欄は盛り上がってくれている。
 同時接続数は1万を超えている。
 1回目の配信だとしたら、かなり多いんじゃないか? 俺なんか今年の4月から初めても、同接1以上になった覚えがないくらいだ。

「残り1分ー」

 チャット欄をみたり、考え事をしていたらいつの間にか残り1分になっている。
 司会進行をしながらも、チャット欄のコメントを拾って対応するイカルは神がかっていた。

「必殺技いきますよ! 私も悔しい思いをしたので、頑張りました!」

 姫野が宣言すると息を整え、気合いを入れ直す。
 精神統一をしたあと、ゴブリンが大量にやってきた中で地面に手を突っ込むと〈潜在能力:超振動〉ユニークスキル:ハイブレイカーを発動させた。
 シミュレーターで変化している地面だけが大きく揺れて、ゴブリンとスメラギの動きが止まる。

「名付けて、〈地面噛〉アースバイト! 」

 さらに腕を地面に突っ込んで振動を流し込むと地面から牙のように尖ったものが生えてスメラギが戦っていたゴブリンたちもまとめて貫いた。
 スメラギもやられそうになったが、華麗に回避する。
 その時、終了のブザーが鳴り響いた。

「これは決まりまったね。織姫ちゃんの勝利ー!」
「仕方ありませんわね。十二分の強さを見せていただきましたわ」
「ありがとうございます」

 イカルが終了を宣言すると、洞窟のような場所も、ゴブリンも消えていった。
 姫野とスメラギはともに歩み寄って、握手を交わす。
 その決定的瞬間をギャラリーがスマホのカメラで撮影していった。

「今日の配信はここまで! またの配信を待っててなー。夏休みの間は毎日動画を更新していくから、チャンネル登録よろしくねー! ばいばーい、ほらサグルも」
「お、おう……じゃあな」

:スコップ師匠お疲れ!
:織姫ちゃんとのデートをちゃんと配信してね
:乙コップ!
:乙コップ!

 俺が挨拶をして配信を終えると、コメント欄では謎の挨拶が生まれていた。
 これが配信というものなのかと、楽しい思いで終えられる。
 イカルには感謝しかなかった。

「サグルさん、お疲れ様でした! 1日レンタルは、大岳ダンジョンを攻略したら使わせていただきますね!」
「姫野……すまないが、そういうのはフラグにしか聞こえないからやめてくれ……」
「ふらぐ? ふらぐってなんですか?」

 最後の最後で特大の地雷を受けた俺はダンジョン攻略が不安で仕方なくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...