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#4 ナイトメア・トラップ
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マカロがピンクの髪を掻き毟り、苦虫を嚙み潰したような顔で舌打ちする。
「俺がもらったプレゼントを横取りしたり、俺が好きになった子を寝取ったりさぁ。その癖に親父の前ではいいカッコばっかりして、親父もサバラばっかり褒めてたし……」
どんな意地悪をされていたのかと聞けば、実にくだらないことばかりで肩の力が抜けてしまった。マカロは俺の反応を見て頬を膨らませている。
「幼馴染みで同じように育てられたのに、片方だけ要領よくて贔屓されるっていうキツさが分かるか!」
「……分からないでもないけど、マカは王子なんだろ。職権乱用で、やられたらやり返せばいいじゃん」
「それが出来たら苦労しないってば!」
するといつの間にそこにいたのか、洗面所の外で壁にもたれていたサバラがくすくすと笑った。ワイシャツだけを身に着けた寝起きの美青年。伸びた生足がいちいちエロい。
「マカロ、こっちの世界でも相変わらず落ちこぼれだな。せっかく俺が鍛えてやっていたのに」
「何だよ、鍛えるって! 一応炎樽を守るのと種を集めるって任務があるから、今は一時休戦してるけど、……俺のチョコちゃん寝取った恨みは一生忘れねえからな!」
「なるほど、あの青年はチョコちゃんという名前だったのか。道理でチョコレートのように甘い種を持ってると思った」
「んああぁ! 悔しいいぃ!」
泣きついてきたマカロの頭を撫でながら、俺はサバラの性格の悪さに思わず顔を引き攣らせた。――いるいる、こういう嫌な奴。
「天和に言いつけてやる!」
「なっ……、やめろ! それだけはマジでやめろ!」
そうして彼らの食物連鎖の頂点に立っているのは、何故か知らないけど天和らしい。
確かに天和は鬼っぽいし怒らせたら怖いけど、「ただの人間に怯える夢魔」というのは――何だか途端にショボい存在に思えてくる。
「……どうでもいいから、仲良くやれよ。マカロ一人だって喧しいのに。ていうかサバラは一応大人って設定なんだから、ちゃんと自分で部屋借りて暮らせよ。学校から給料も出るんだろ」
「そんな冷たいことを言わないで欲しいな、炎樽くん」
「だってお前がこの家にいる限り、自動的に天和もここにいることになるんだぞ。お前にだって都合が悪いだろ」
ぐぬぬそうだったか、と整った顔を曇らせるサバラ。……やっぱり夢魔という生き物は、例外なくどこか抜けているのかもしれない。
家から学校。少しずつ俺の平凡でない日常がテリトリーを広げているような気もするけれど、これはこれで退屈しなくて済みそうだ。
「まあ……のんびり、適当にな」
溜息をつき洗面所を出た俺は四人分の朝飯を作るため、腕捲りをして気合を入れた。
「俺がもらったプレゼントを横取りしたり、俺が好きになった子を寝取ったりさぁ。その癖に親父の前ではいいカッコばっかりして、親父もサバラばっかり褒めてたし……」
どんな意地悪をされていたのかと聞けば、実にくだらないことばかりで肩の力が抜けてしまった。マカロは俺の反応を見て頬を膨らませている。
「幼馴染みで同じように育てられたのに、片方だけ要領よくて贔屓されるっていうキツさが分かるか!」
「……分からないでもないけど、マカは王子なんだろ。職権乱用で、やられたらやり返せばいいじゃん」
「それが出来たら苦労しないってば!」
するといつの間にそこにいたのか、洗面所の外で壁にもたれていたサバラがくすくすと笑った。ワイシャツだけを身に着けた寝起きの美青年。伸びた生足がいちいちエロい。
「マカロ、こっちの世界でも相変わらず落ちこぼれだな。せっかく俺が鍛えてやっていたのに」
「何だよ、鍛えるって! 一応炎樽を守るのと種を集めるって任務があるから、今は一時休戦してるけど、……俺のチョコちゃん寝取った恨みは一生忘れねえからな!」
「なるほど、あの青年はチョコちゃんという名前だったのか。道理でチョコレートのように甘い種を持ってると思った」
「んああぁ! 悔しいいぃ!」
泣きついてきたマカロの頭を撫でながら、俺はサバラの性格の悪さに思わず顔を引き攣らせた。――いるいる、こういう嫌な奴。
「天和に言いつけてやる!」
「なっ……、やめろ! それだけはマジでやめろ!」
そうして彼らの食物連鎖の頂点に立っているのは、何故か知らないけど天和らしい。
確かに天和は鬼っぽいし怒らせたら怖いけど、「ただの人間に怯える夢魔」というのは――何だか途端にショボい存在に思えてくる。
「……どうでもいいから、仲良くやれよ。マカロ一人だって喧しいのに。ていうかサバラは一応大人って設定なんだから、ちゃんと自分で部屋借りて暮らせよ。学校から給料も出るんだろ」
「そんな冷たいことを言わないで欲しいな、炎樽くん」
「だってお前がこの家にいる限り、自動的に天和もここにいることになるんだぞ。お前にだって都合が悪いだろ」
ぐぬぬそうだったか、と整った顔を曇らせるサバラ。……やっぱり夢魔という生き物は、例外なくどこか抜けているのかもしれない。
家から学校。少しずつ俺の平凡でない日常がテリトリーを広げているような気もするけれど、これはこれで退屈しなくて済みそうだ。
「まあ……のんびり、適当にな」
溜息をつき洗面所を出た俺は四人分の朝飯を作るため、腕捲りをして気合を入れた。
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