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#2 男子高校生のフラグ

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「うっ……」
 心の中で息を飲み、顔面を引きつらせる。鍵が閉められた個室の中では既に天和が自身のそれを抜き、片手で扱き始めていた。何というシロモノ……。本当に高校生か、こいつ。

「………」
 透明でも物に触れることはできる。俺は恐る恐る右手を伸ばし、なるべく見ないようにして天和のそれを握った。

「っ……、ん……?」

 すぐに違和感に気付いた天和が手の動きを止め、個室内を見回す。

「な、んだ……。誰か俺のチンコ触ってやがる」
 熱く屹立したソレは俺の片手じゃ収まらないほどの大きさだ。確かにこんなモノを持っていたら、ビッチな後輩も放っておかないだろう。

 さっさとイかせないと、透明化の終了時間が迫っている。

「う、おっ……! 何なんだ、一体……!」
 両手で握って前後に扱く度、天和が腰を引いて声を上げる。その反応が面白くてつい手に力を込めてしまい、更に天和が体をビクつかせた。

「てめぇ、誰だか知らねえが勝手に人のモン扱いてんじゃねえぞ……!」

 野性的というか鬼のような勘で見えない何者かの存在を嗅ぎつけたのか、天和が握った拳で宙を殴った。その攻撃が俺のこめかみ僅か数ミリ横をかすめ、一瞬の放心の後、俺の全身からどっと汗が噴き出す。

「………」
「そこか。いま拳に熱が触れたぞ」

 ──何つう奴だ。拳に感じた気配だけで見えない敵の居場所を突き止めるとは。何より「見えない」ってところに疑問を持たない時点で色々おかしい。

「ぶっ殺す!」
「うわっ、わ、ちょっと待って天和! 俺だよ、炎樽……!」
「あ、……?」

 振り被った腕をピタリと止めて、天和が目を瞬かせる。

「炎樽……? どこにいんだお前、どういうことだ」
「マカの薬で透明になってるだけだ。三年の校舎入るのにこの姿なら安全だからって……そしたらお前がいきなりトイレで……だから手伝ってやれってマカに言われて……」

 一から丁寧に説明すると、天和が視線を動かして俺がどこにいるのか探り始めた。獲物を探す鬼の目だ。……ここは大人しく去っておいた方が身のためかもしれない。

「………」

 天和に視線を合わせたまま一歩ずつ横に移動し、トイレのドアに手をかける。ダッシュで廊下に逃げてしまえば幾ら天和といえど、姿の見えない俺を追っては来られないだろう。

 ──今だ!

「逃がすかぁっ!」
 俺がそうすることを読んでいたとしか思えないタイミングで、天和が的確に俺の手を掴んだ。
「い、痛い! 痛いって!」
 そのままの勢いで体ごと個室の中へと引き戻され、バランスを崩して尻もちをついてしまう──すなわち蓋の閉まった便座の上に腰を下ろす形となり、目の前には屹立したソレを露出したままの天和(怒りバージョン)がいて……。

「………」

 詰んだ。


「──うわっ!」
 頬に天和のソレが押し付けられて顔を背けると、天和の手に髪を掴まれ無理矢理にその先端で唇をこじ開けられてしまった。
「ん、んぐっ、……んん」
「当たり」

 不敵に笑って俺を見降ろす天和。これはもう見えてるとか見えていないとかの問題ではなくて、「慣れてるか慣れていないか」だ。長年の経験を経て覚えた間合いや力加減を駆使し見事に俺の口を狙うという神業、まさにプロの仕事。

 ──って、感心してる場合じゃない!

「は。お前の口に入れた途端、俺のチンコが消えたんだけど? コレも透明になってるってことか」
「ん、んあっ……やだ、っ……」
「責任持って手伝えよ、炎樽。お前が先に仕掛けてきたんだからなァ……」

 マカロはどこにいるか分からない。絶対同じ空間にはいるはずだけど、自分に火の粉が降るのを恐れて存在をバラさないつもりなのだろう。クソ。薬の効果が切れたら文句言ってやる。

「オラ、しっかりしゃぶれよ炎樽」
「んっ、ん……んゃ、あ……」
 苦しくて涙目になってしまうが、その涙もまた透明で天和には認識してもらえない。舌の上に擦り付けられて苦い味が広がり、あろうことか溜まってきた唾液と一緒にそれを飲んでしまった。

「うえぇ……変な味」
「っは、……覚悟しろよ炎樽」

 俺の口からそれを抜いた天和が自分の手で扱き始める。凶悪なカタチをした天和のそれはしっかりと俺の方を向いていて、今まさに、俺の顔めがけて──

「うわっ……!」
 ぶちまけられた体液が容赦なく俺の顔に引っかかる。青臭い匂いが個室に溢れ、姿は見えないけれどマカロは目を回していることだろう。

「……変な感じだわ。俺のザーメンが空中で飛んだまま止まってる」
「と、止まってない! 全部俺の顔にかかってるから! ちょっと拭いて拭いて! 制服に垂れる!」
「垂れても見えねえよ。それよりお前、これで終わりとか思ってねえだろうな」
「……へ?」

 茫然とする俺の方へ延ばされた天和の手が、俺の腕を取って立ち上がらせた。何だってこうも的確に掴んでくるんだ、こいつは。

「わっ、ちょっとやめ……」
「大人しくしてろよ。イタズラの仕置きとしては、ちっと気持ち良過ぎるかもしれねえけどな」
 後ろから学ランごと中のシャツを強引に捲られ、透明な俺の肌の上を天和の手が深く滑って行く。

「熱くなってるぜ。お前が乳首で感じるってのは今朝実証済みだし、秒で勃起させてやるよ」
 耳元に響くローテンションボイス。その声で卑猥なことを言われると何故だか体がぞくぞくして、せっかくの透明化なのに不意打ちの抵抗もできない……。

「──やっ、ぁ……。たかとも、やめて……!」
 指先で左右の乳首を捏ねられ、思わず背中を反らした。軽く摘ままれて指で転がされ、また軽く引っ張られて、弾かれて、圧し潰されてまた転がされる。天和のそれはただめちゃくちゃに弄っている訳ではなく、相手を翻弄するための熟練された指使いだった。

「舐め回してぇけど、流石にそれは見えねえと無理だな」
「うう、あ……あ、もう、許し、て……」
「もう勃ってんだろ。このままだとパンツの中でイくんじゃねえの」

 そんな訳あるか。言い返したいのに、喘ぎ以外の言葉が出てこない。

「やぁっ、あ……、乳首、やだ、ってば……!」
「すっげぇモロ感。あいつらがお前のこと放っておかねえの、何か分かった気がするわ。無自覚ビッチだろ、お前。だから常にエロい匂いさせてんじゃねえのか」
「ひ、どい……あぁっ!」
「ますます気に入ったぜ、炎樽。こちとら後輩の誘い断ってんだ、その分お前が相手してくれるんだろ」

 そんなの自分の都合だけで、俺は関係ないのに。

「も、もう弄るなってば……! あっ、あ……やあぁっ……」
「イくまで触っててやるから、自分で出して扱けよ。どうせ見えねえんだし恥ずかしくねえだろ」
「あ、う……」

 嫌なのに手がファスナーを下ろしてしまうのは、このまま本当に乳首だけで達しそうになってしまったからだ。天和が言うように俺はビッチなんだろうか。……だってこんなの、妄想以外で全然経験したことないのに、……気持ち良いのが、止まらない。
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